「どういう事ですか!」
私は怒っていた
「さっき言った通りだよ、お前達は信用出来ないから手を引く……もう来ないよ」
一緒に如月先輩を探すと言っていた探偵が逃げ出したから
「信用出来ないって、私達だって一生懸命探してるわよ!」
私の罵倒を背中に受けても探偵は振り返りもしないで、83分署を出ていった
「おい、ゆうこ後でビデオルームに来るようにな」
入れ代わりで帰ってきた先輩に呼び出された、これから如月先輩の情報を集めに行こうと思っていたのに……
どうしてくれよう!
「ゆうこ、怒ってても何も出来ないわよ」
たかちゃんの言うことはいつでも正しい
「わかってるわよ……あの探偵の奴ぅ」
腹が立って仕方が無い、こっちのヤル気を疑っていたのに……自分が先に投げ出したんだから
「先輩呼んでるんじゃないのかな?」
だからたかちゃんはいつも正しい……
ビデオルームに入って最初に目に飛び込んで来たのは肌色の塊だった
『んあ! 産まれる! 産まれるぅ!』
聞き覚えのある声だ……
「まさか……」
その顔を確認する
『あああああああああああああああああああああああああああ!』
如月先輩だった
「ああ……そんな……」
如月先輩が産み落としたものはなにか四つの足がついている異形の存在だった
『どうぞ……』
すぐに先輩が産み落としたものは動かなくなる、まだ出産に耐えられるほどの成長はしていなかったらしい……頭のどこかで冷静にそれを見ていた
「ようやく見つけた資料だ……律子君の……慣れの果てとでも言うのかな」
先輩は落ち付いて酷い事を言っている
「そんな……助けに行かないと」
悔しさで涙が出て来た……
『どうぞ……気に入って頂けますか?』
画面なのかで如月先輩は……豚を相手に股を広げていた
「助けに行きたいか?」
画面から目を離さずに先輩は聞いて来た
「当たり前です!」
私は叫んでいました。
そして豚との性交で画面は終る
「早く、行きましょう!」
私は焦っていた
「まて……最後まで見て判断したほうがいい、これは危険な捜査になるからね」
今終ったばかりの画面に……私の顔が大写しになった。
私が見習いで捜査している姿はすぐに終わり、画面は弁天寮内での生活に映る
「嘘……」
脱衣所だけでも驚いたのに、ジャングル風呂の中までもカメラが追って来ていた
「いやぁ!」
私はいつの間にこんなにも撮られていたのか
「どういうこと……」
この画像が嘘なら、さっきの如月先輩の画像も……
「これは、ここのトイレだな」
83分署の中で撮影されていた
「音も入ってるな……」
信じられない事に先輩達は冷静にそれを見ていた
「もう見ないで下さい!」
私はひとまず自分の身体でモニターを隠した
「つまり、律子君をさらった奴等は次には君を狙っていると言う事だよ」
恐怖がある、しかしそれ以上に怒りがあった
「危険だ、今回は女生徒は連れていかない方向で考えていた」
沈痛な表情で先輩は言う
「でも」
私が何かを言う前に
「それに気がついただろう、この中にも内通者がいると考えねばならない」
たしかに……ここのトイレの中で撮影を許すなんて
「だから、今回のミッションは秘密厳守で行くことにするつもりだ」
先輩は私の顔をみつめて返事を待っているようだった
「それでも……連れていて下さい! 狙われているなら逃げないで捕まえたいです」
その返答を嬉しそうに先輩は頷いてくれた
「いいだろう……いつもの相棒にも相談出来ないぞ、それでもいいか?」
ちょっとたかちゃんの怒る顔が目に浮かんだ
『怒っていても何も出来ないよ……たかちゃん』
心の中で謝ってから、私は元気よく敬礼していた
「お供します!」
「揃ったな行くぞ!」
思ったよりも捜査に参加した人数は少なかった、きっと先輩が信用出来る人間を集めた結果だろう
「はい」
そして悪徳大路に足を踏み入れて行く
『ここは迷路みたいなものだから……はぐれるなよ』
先輩はそう言っていたのに……
「はぐれた……」
ここはなんて雑多に人がいるのだろう……博打にはじまり、快楽を求めた生徒たちが落ちゆくところ……
「ルートは聞いてるのだから……急ごう」
視界の端に肌色の塊が見えた
「ん? 見覚えがあるぞ……」
だから少し戻ってその路地に入ってみる
「あっ!」
悲鳴が上がりそうになったので私は自分の口を塞いだ
「…………」
落ち着かなければいけなかった……
「如月先輩……」
その人は大きなお腹をしてこちらを振り向いた
「ゆ……ゆうこ……何でここに……」
如月先輩の表情が揺らぐ
「助けにきたんです、さあ!」
先輩は泣きそうな顔をしながら私をみつめている、良かった、偶然にも迷ったおかげで先輩を見つける事が出来た
「にげてぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
「え?」
私の意識は突然ブラックアウトした。