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「んん……」
 私の意識は望んだ状況で帰って来たわけじゃないみたいだった
「遊子!」
 如月先輩の声が聞える……そうだった、悪徳大路の中で見掛けて
「先輩!」
 見上げた目の前に何か肌色の壁があった
「遊子……ゴメンね……私のせいで……」
 肌色の中に赤い亀裂が、大きくなっていた

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 徐々に大きくなった
「ダメェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
 ああ……何かが出て来たのがわかる……
「ひぃ」
 それが如月先輩の女淫から出て来た子供だと……
「え?」
 それは豚の形をしていた

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 そう……DVDで見た……そうだ……如月先輩はそういう事をされているのだった
「次はお前の番だよ」
 そして、男の声……聞き覚えのある
「先輩?……」
 捜索隊の指揮をとっていたはずの
「はやく!ここに如月先輩が!」
 振り向いた向こうには邪悪な顔があった
「そんな、あなたが……」
 私にも内通者がわかったのだ。
「お前の処女は俺がもらう事になったから……鷹匠遊子」
 そう言いながら先輩は私を犯す為の準備をしている

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 身体が裂けて行く様た
「ぎゃああああああああああああああ」
 口が何を言っているのかわからない
「五月!見えるか? お前のせいでこいつは処女を散らしたんだ」
 痛さのなかで私は耳だけが働いていた、考えられる思考は無かったけど
「約束したのに! 彼女達には手を出さないって」
「しかたないだろう? 気がついちまったんだから」
「卑怯者! それでも公安を目指した者ですか!」
「所詮は二流なのでな、二級じゃないだけマシだ!」
 私のせいで如月先輩が泣かされている事だけはわかった……悔しかった……

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 いつまでたっても終らない……レイプというモノが全てをこわす物だと理解していく
「アナルもな……俺がもらう事になってるのさ」
 勝手に……私はあげた覚えはない
「こいつは今日から波戸遊羽子って二級生徒だ」
 どうやらもらったのは私のじゃないらしい……

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 なにをやってるのだろう……

「遊子なら辞めたぞ、辞表をもらった」
 そういう事があるだろうとは思うが、私に一言も無いってのはあり得ない話だった
「数日前から寮にも戻ってないんです! 事件に巻き込まれた可能性も」
 遊子の事だから無謀に突っ込んだのだろうし
「辞めた者のことまではね……如月君もいなくなったばかりだと言うのに……

 先輩はそうため息をついていた
「ため息つきたいのはこっちよ、人のことを公安に巻き込んでおいてさっさと辞める? あり得ないわ」
 独り言が多いのは寂しいからだとか週刊誌に書いてあったなどと思い出してる場合では無かった。
 ジリリリリリリリ……
「こちら83分署」

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「目撃した? 如月律子と鷹匠遊子をですか? どこで」
 私は電話の内容を頭に叩き込む、そしてこの電話の声を必死に思い出していた
「数奇屋橋、何があった?」
 そうしていると先輩がやって来ていた
「タレコミです、この前先輩達が調査したあたりみたいなんですが……二人を目撃したって」
 そう……あのあと遊子はいなくなってる
「私、行って来ます」
 探してやらないと、あのバカは泣いてるに決まっているのだ。
「まて!数奇屋橋! あそこにはいなかった、私達がチームで行って確認したんだぞ」
「捜査情報が洩れてたのかもしれません、いいですよ私一人で行ってきますから」
 今さら書類がどうのとは言われたくなかったから

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「このあたりか」
 そうしながら電話の声に多いあたる人物を一人考えていた
「遊子が相手してたからなぁ……」
 罠かもしれない……その証拠に背後に
「あ!」
 痛撃がある……意識が朦朧とする
「まったく……こんなに頻繁に人がいなくなるのは困るのだがなぁ」
 何を……手放すな……私を……このままじゃ……
「最近の若い者はってやつにしておきましょう? 敬愛する先輩と入学前からの親友の元に行かせてやるのが我々の情けですよ」
 バカな事を……あ……
「脱がそう、ここで……痕跡を断つんだ」
 身が軽くなる……脱がされる……ダメだ……負けない……

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「そこまでです!」
 油断してる相手には技をかけるのは一瞬だ
「油断は無かったわけだ?」
 先輩が目の前で笑っている
「悪事が露見したのに余裕ですね」
 場所が場所だけに、というところだろう
「わかっているのだろう? そいつを無力化するのに隙が出来るぜ、それにすぐに人が集まる」
 まったく、呼び出し電話も……
「深追いしなければ……君にはここに来てもらう予定は無かったのに」
「同じ部所で三人もいなくなれば怪しまれますからね?」
 そして……ここで私を消してしまえば証拠もないから
「さて痛い思いをしないで連れていってあげようか、その方が君の為でもあるだろう?」
 私のためのわけが無いじゃないか
「今までも……こんな事をしていたの?」
 悔しいが……
「あはは……俺に歯向かう女は何人でもここで行方不明にして来たよ、公安の中だけじゃなく……気に入らない奴は方端からな!」
 歪んでる……
「あなたは歪んでるわ!」
「だが、お前のその犠牲者だ」
 悔しいが……もう最後の抵抗してみるしかない
「そうかな?」
 電話での声がすぐ側で聞えた

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「証拠は押さえたぜ」
 探偵さんにのされた先輩は足元に転がっていた
「やっぱり捜査続けてたんですね」
 照れ臭そうにしている
「あんたを囮にして奴に自供させた酷い奴だぜ」
 先輩の自信満々の語りは探偵さんが録音していた
「探偵さんの格好を見てればだいたいわかりますよ……松田優作とか好きでしょ」
 ますます探偵さんは照れている
「バカ言え」
「ロマンチストなんだから……」
 この人は信用していい人だと確信した、そして私がここで探偵さんに助けられている時……如月先輩と遊子も戦っていたの

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「どうも……ご満足行きましたか?」
 お腹が大きくなって来る前に事を運ぶ必要があった
「上手すぎだぜ五月ちゃん」
 ここでは言うことを聞いていれば自由に店のなかを動けるのだ
「ありがとうございます……」
 公安にいる時には信じられないほど、男の人について学んだ気がする
「もう少し舐めてくれる?」
 嫌な顔をしたら駄目なのだ
「はい……」

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 急いだのには理由がある遊子のショーの時間と会わせる為だった
「いいぞ!遊羽子ちゃぁーーーん!」
 ステージのラストで照明が落ちる、その時に配電盤を操作して灯を落とせば……ここにいる二級生徒全員で脱出が出来るだろう
「いいぞぉ!」
 喝采の中で照明が落ち、そして私達の脱出が始まった

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 照明の落ちた
「みんな逃げるよ!」
 準備は間違っていなかった、しかし
「私達は行かない……」
 彼女達はここに残ると言い出したのだ

54

 みんなを解放しなければ
「何いってるの!」
 どう説得するべきか、言葉を選ばねばいけない
「あなたはよくやってた、逃げて光の世界へ行くべきだわ」
 ここで、接客を教えてくれていた彼女は微笑みすら浮かべていた
「なんで?」
「ここでないと生きられない人もいるのよ……あなたのように上手くいけば学籍を取り戻せるかもしれない人だけじゃないの」
 何を言ってるのだろう
「もとからこの島に売られて来たのも多いのよ……」
 そういって彼女は私達を外へと押し出したのだ

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 何を見ていたのだろう、私は
「今は逃げましょう……五月先輩」
「そうね……そうね……」
 本当の二級生徒だったのだ……それを助けられないとは……私の涙は後から後から溢れるように流れていた。