「ただいまぁ!」
 ブブブブブブブブブブブブブーーーーーーーーッ
 入って来た律子に探偵は口に入っていたカップめんを吹き出した。
「まさか……その格好で……公安に行ってたのか?」
「当たり前でしょ」
 当然と言う顔で律子は答えた。



「外に出る時は……さあ」
 困り顔の探偵に
「可愛くない?」
 ポーズをとりながらパンツを見せる律子は
「ワザとかよ……」
 誘っているように思うのだ。



「自分で着せたくせに……」
 趣味の悪さを押付けながら
「他の男には見せたくないじゃないか」
 どうやら、本音が出たようだった
「ありがと……情報は仕入れて来たよ」
 公安よりも今はこの探偵事務所がメインの律子だから



 そして今二人が気にしてるのは
「行方不明者……情報は」
「洩れてないよ……」やっぱりここだよ」
 最近行方がわからなくなってる連中は、性愛研からチェックを受けていて改善させなければいけないようなもぐりの連中だった。
「あの情報は遊子と多香子が性愛研の研修で聞いて来るのを教えてもらってるだけで……」
 つまりは
「ここから洩れたって事か?」
「そ、公安はあそこまで正確に情報を入れてないからね」
 お互いが見つめあい
「やってないぞ」
「やってないわよ」
 言葉が被った
「あの二人のわけはないしな」



「わたし、自信ないよ……たかちゃん」
 遊子は性愛研の研修でSMの女王をしていた……まあ途中からマゾ奴隷に変貌する事になっているのだが
「でも……前よりは笑えるようになったでしょ」
 多香子も肉体が変貌していて……不感症気味なのだった
「それでも……男の人は……」
 かつて元気が売りだった女性公安委員は今はまだ長いトンネルの中にいるらしかった
「たかちゃんパンツ穿いて来た?」
 不感症になってしまった彼女は露出の趣味が残った
「性愛研でも、重宝されてるよ……案外悪いクラブじゃなかったのね」
 多香子は今の生活も楽しんでいるようだった、遊子は羨ましいと思うと同時に……親友が遠くへ行ってしまった気がしていた。
「あれ何?」



 悪徳大路の裏路地の一本だった
「来ない方がいいですよ」
 如月美緒がそこに立っていた
「何してるの?」
 多香子の言葉にも微笑むだけで
 パキュ……パチャ……
 異様な音が聞えていた
「ひぃ!」
 遊子はその何かの思い当たるものがあったのだ……



「それ……」
 怪しい雰囲気に多香子は身体が昂ぶるのを感じた。
「言わないわ! 誰にも!」
 遊子は速攻でまず否定した、しかし見てしまったのだ美緒の足元に蠢くものを
「遊子さんは見たんでしたっけ?」
 先程から優しい微笑みは変わっていない
「その先に用事があったのだけど……」
 その先には非合法な売春宿を経営してる店があったから、調子がいいようなら下調べに行って欲しいと律子に頼まれていたのだ。
「もうないと思いますよ……」



 美緒は悠然と二人の間を割って歩く
「お姉さんには言わないで下さいね」
 それだけを耳打ちしていくのだ
「言いません! 言いません!」
 脅える遊子とは裏腹に
「言わなければいいのでしょ……律子先輩に……」
 多香子には失われた快楽への答えがあるように思えて仕方なかった
「たかちゃん」
 二人の行く道はあとどれだけ同じなのだろう



 むにゅ……
「あの二人にはまだ無理よ、調査をしてみてって言ったのだけど……まだ脅えているようだったし」
 遊子の表情を思い出して律子はすまない事をしたと考えていた
「当たってるぞ……胸……」
 あたっていて当然なのだが
「わざとよ……」
 背後から抱き絞めながら
「我慢出来なくなるんだぞ」
 男だから好きなあいてにそんな事されたらと
「我慢しないでよ……」
 誘っているのだから……



「こんにちわ!」
 何度目かと言いたくなるほどのタイミングで扉は開けられた。
「いらっしゃい!」
 そしてわかりやすく二人は離れると、突然の来訪者である美緒を受入れた。
「あ……」
 そして何をしていたかはわかりやすいのだ。



「おねえちゃんってば……」
 美緒はわかりやすい視線で二人を見る
「違うのよ、美緒ちゃんが考えてるような事は何も無いのよ」
 必死に否定している律子の頬はしっかりと白粉彫りが浮き出ていた
「ずるいわ……二人で……」
 すねる振りをしてる美緒をを二人を奥へと招き入れ、そしていつもの日常がやってくるのだった。

 だから……美緒がここで資料を見ているなどと……想像出来ないのかもしれなかった……



                       終