「ふぅ……」
 何の変哲もない普通の日。
 いつもより空が青く晴れ渡った、天気のいい朝だった。

「――今日の稽古はここまで」
 緑色に覆い茂った芝生の自然公園。
 周囲には、黒い胴着を纏った少年少女たちが体育座りしていた。真剣な視線で見詰める先にいるのは、艶やかな黒髪が麗しい、赤い太極拳の胴衣のモモコ先生だ。
 誰もが利用できる公園のため、見物客もいる。
(なんだか、ギャラリーが多いわね……)
 モモコは軽く溜め息を吐いた。
 整った美貌やスレンダーな肢体をじろじろ見られる視線を感じ、モモコは少し気恥ずかしさがあった。赤い太極拳胴衣越しというのに、まるで全身の隅々までを見透かされているかのような違和感。
 思わず胸が高鳴ってしまう。
(あたし、なんか集中できてないわね)
 ゆっくりと瞼を開く。
 太極拳の愛弟子たちに囲まれていると、心が穏やかになる。
「見ていなさい」