「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……」
 絶頂の余韻がようやく収まった頃、モモコの視界が戻る。
 赤いズボンを巻き込んで産み落とした卵は割れていた。
 卵の破片と絶頂汁に塗れて赤黒い蟲が蠢いている。それはブルブルッと痙攣を引き起こしたかと思うと、急激な成長を遂げる。
 あっという間に身長二メートルを超える、一匹の大柄な獣がいた。
 太古の肉食獣を人型にしたような体躯。三個の青い瞳が爛々と輝き、口には鰐に似た牙がビッチリと並ぶ。大きく肥大した頭の顎からは、触手のような腕が四本も蠢く。明らかに地上には存在しない異形生物――。
「ま、まさか……地帝獣イグアドグラー!?」
 それはモモコがピンクマスクに変身して初めて戦った地帝獣である。信頼すべき仲間たちと肩を並べて撃破した敵なのだ。
(な、なんで……?)
 産卵のショックでぐったりとする身体に力は入らない。
 自分の身が危険に晒されることは構わない。
 それで大切な愛弟子たちが助かるのならば――。
「みんな! 早く逃げてちょうだい!」
 いつも強気な眉根は八の字に折れ曲がり、弱々しくも一生懸命に叫ぶ。
 モモコ先生の教えに従った子供たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っていた。
「クパァァァ」
 イグアドグラーは獲物を品定めするような視線で自分を産み落とした相手――モモコを見下すと、赤い口腔を大きく開き、長い舌をスルスルと伸ばす。
 ヌチャリ……ベロンベロン……。
「ひん! あぁぁ……きゃぅぅぅ!」
 首に粘着質の肉舌が絡みついた。
「ひゃ! ぁぁぁんん!」
 イグアドグラーの長く伸びた肉舌は、モモコの首筋から鎖骨をなぞるように蠢き、胸の谷間をグチョグチョと舐め回される。
「……っ……んっくぅぅぅぅ……」
 途端に首が絞まり、呼吸が苦しくなったモモコは、何とかして首に巻きついている舌を外そうと試みるが、ヌルヌルと粘着質の唾液を両手にこびりつかせるだけだった。
「き、気持ち悪いのよ!」
 まるでモモコの動きを予想しているように、抵抗する両腕は、四本の腕に掴まれ、強引な膂力で回されてしまう。
「ん、こ、このぉ……あぁ!」
 まだ自由だと思っていた両脚は、すでに使えなかった。イグアドグラーの進行する足踏みのままに膝関節の内側を押しやられ、両手両足を地面についた四つん這い姿勢を強要されてしまう。
「ちょ、ちょっとぉっ! 脱がさないでよ!」
 イグアドグラーは四本の腕を器用に使い、モモコの身体から赤い太極拳胴衣を剥ぎ取ってゆく。ブラジャーから解放された両の乳房がぷるんっと弾んだ。
(なんとかしないと……っ!)