「モモコ先生! ねぇ起きてよ!」
 誰かの声が聞こえる。
「ん……」
 目覚めたモモコの瞳に澄み渡った青空が映る。
(あれ、あたし……どうしたんだろ? ここ、どこなの?)
 心地良い気だるさの中、ボーッと考える。
「やっと起きてくれた」
 耳元で聞こえる声は聞き覚えがある。
 野球帽を反対向きに被った小学生ぐらいの少年は、モモコが教える太極拳の弟子の一人だった。
「このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思ったよ」
「あなたたちは……?」
 だが、全裸のモモコを取り囲む数人の少年たちには見覚えがなかった。全員が野球帽の少年と同じくらいの年齢だろうか。
「怪物に襲われたモモコ先生を助けるためにね、僕の友達を掻き集めてきたんだよ」
 野球帽の少年が誇ろしげに語ってくれる。
「えっと……」
 少年たちの注目を浴びながら、モモコは切なげな表情を浮かべて見回す。いつもの勝ち気な様子が影を潜め、その代わりに女の色香を漂っていた。
「んんん」
 モジモジと身じろぎするモモコの全身に、欲望を含んだ視線が絡み付いてくる。
(みんなが……見ている……恥ずかしいのに、身体が……)
 次第に熱を増して、高熱にうかされた時のように頭の芯がぼーっとしてきた。現実感が薄れ、ドロドロとした海に溺れているような気分になる。
「あ、ありがとうね……、おかげで助かったようだわ……」
 モモコは艶めいた笑顔を浮かべてお礼の言葉を述べた。