すると、相手は数美の心の内を読んだのか、かぶりを振りながら言い放った。
「そうじゃない! 基礎教科のことを言ってるんだ。」
「えっ?」
「算数や国語といった基礎教科の学力が大幅に落ちているだよ! 貴様は元々算数が専門なんだろ? その責任を取ってもらうぞ!」
「せ、責任って……」
 それら算数や国語といった本来教えるべき教科の授業時間が削られて、「特別授業」の時間に割り振られたのである。授業時間が大きく減ったのだから、こどもたちの学力が下がるのも当然のことだ。それを「責任を取れ」とは、とんだ言いがかりである。
 そのことに数美が言い及ぼうとすると、ゴーミンがクギを刺す。
「貴様、普段生徒に『言い訳するな』と指導してるだろう? その先生があれこれ言えないよなあ?」
 ゴーミンは何らかの狙いがあって学校に現れたのは間違いなく、数美は覚悟を決めた。
 数美のその表情を見て満足したゴーミンが言葉を続けた。
「こどもたちのテストの点が上がるよう頑張ってもらうぞ。まずは計算力をどうにかしないとな。しかも計算は何度も反復しないと力がつかん。何度もな。そこで――、フッフッフ…」
 そこまで言うとゴーミンはもったいぶって言葉を切った。
 数美は「さっさと言って」とばかり、目を三角にして相手をにらむ。