「はぁ……」
「どうした?」
「何でもないのよあなた、今日もオフだから家の事は任せてね」
 アイランドキッチンの向こう側に収まってやっと緊張が解ける。
「もっと収入を増やして、七海が仕事しないで良いようにしたいんだけどね……」
「あなた、それは違うわ、私は好きだから仕事を続けているんだから、収入が増えるなら海璃の為に使いましょ」
「本人の前で言うか?」
「ご安心を、未来の事は確定じゃ無いので……」
「お前子供っぽさが無いぞ」
「お父さん、僕は最善を生きるつもりですので」
 七海を舐め回す視線を向けながら海璃は笑って答えるのだ。
 七海を嬲る最善の人生……
「おお、柚子胡椒を頂けないかな」
「お義父さま」
「自分でとるよ、気にせずに」
 義父が立ち上がる意味が七海には怖かった……