時間が空いてしまったのはルカの所為じゃない。
『申し訳ございません、どうしても外せない用事が出来てしまいまして……』
 一緒に買い物に行こうと言っていたアイムに振られたからだ。
「大体用事って何があるのよ……ん?」
 一人で行くのもなんだと思っていたのに暇に飽かして出かけてしまった所、目撃したのだ。
「何してるわけ?……」
 アイムを……アイムは見知らぬ男と寄り添いながら街中を公然と歩いていた。いや、おかしな上京なのが直にわかった。
「それで、ザンギャックの手先ですか?」
「アイムだってザンギャックの牝奴隷だろ」
 会話が聞こえるように、遠巻きにしながらも風下へ移動する。
「私には……事情が……」
「事情と言うのは、身分卑しい者の犠牲になったと言う事か?」
「ルカさんの事を悪く言うのは、いくら兄さまでも許しません!」
「ほほう……別に俺はルカとか言う海賊の名は出さなかったがな?
 そうか、アイムもあの女海賊を身分卑しい者だとは思っているらしい」
「!」
 アイムを犠牲にしてしまったのは確かに、ルカだ……
まさかアイムに追跡けられているとも知らずに、ザンギャックのギガントホースへ赴いてしまったのだから。