「さて、ジョッキに出してもらいましょう」
「え?」
 想像もしていなかった言葉だった。
「ちゃんとジョッキに注げなければ無駄も出ますし、お客様に失礼ですよ」
 こんな事をさせておいて、何を言われているのか理解できない。
「洸くんだってまだまだ、お金かかるでしょう?」
 そうだ、このお店を開くときに無理もした、軌道に乗っていたはずなのに。
「分かったわ……」
 マスターはサーバーからチューブを外し、その先を彩香に持たせたてテーブルの上にジョッキを並べていく。
「ちゃんと、腹筋を使って一杯づつ止めるように、テーブルを汚してはいけないから」
 また無茶を言われた。
 以前は水を適量とサクランボを一つ、それで水割りが出来るように散々訓練されたのだ。
 でもテーブルを汚さないのは五回に一回ほどだった。
「行くわ……」