「うああああんっ!」
 孕み腹で悶絶する妊婦モモコは、肩と両膝を抱え上げられたお姫様抱っこの体勢でインダベーに抱き起された。
「ダ、ダメっ……やめて。お願い、連れていかないで……」
 じたばたと暴れるモモコの身体は牢屋から離れてゆく。
「あたしは、ここに……いないと……」
 束の間、弱気な涙を潤ませるモモコの瞳と、インダベーの真っ赤なゴーグル越しの双眸と目が合った。モモコがフルフルと首を横に振るが、意志を理解してくれないインダベーは力強く頷いてくる。
「すぐにここから出してあげるから!」
 三匹のインダベーに囲われる形でハミィが追走し、モモコの方に声をかけてくれる。
「違う……違うの……」
 モモコの真意の願いは、誰にも聞き届けられることはなかった。



『囚人が脱走――モモコが脱走――モモコが脱走――モモコが脱走――』
 ジャークマター基地の中で警報アラームだけがけたたましく鳴り響いた。