「そう言えば、君の彼氏。カズマだっけ?」
 借金返済の為に働き始めてから1ヶ月が経った頃、客からカズマの話を聞かされる。
「店の金に手を出したとかで、追い出されたよ。」
『え?』
「何でも、本命の彼女と店をやるんだ。って言って、何処かのキャバ嬢とそれぞれの店の金を盗んで逃げようとして、失敗したらしい。」
『そんな……』
 文字通り、身を削って尽くしてきたあかねを置いて、カズマは別の女性と逃げようとした。
「まぁ、君がカズマとその彼女が手を出した金の立て替えをするからって事で無事ではあるみたいだけどね。」
 客が店員を呼ぶと、あかねに追加の借金が出来た事を伝える。
「さすがに、この店だけだと返せない額になっちゃったみたいだよ。」
『うそ……』
 目の前に置かれている借用書の金額は、普通に働いていては絶対に返済できない金額が書かれていた。
「風呂に沈めても、大差無いから……アブノーマル動画かな?」
 客は、AVなら売上に応じて返済額が増えると説明している。
「まぁ、考えといてよ。」
 呆然としているあかねの肩を抱いて、男はニヤニヤと笑っていた。