「あ、あそこに……」
 服を探すと、マンションの前に投げ捨てられたように散乱している。
「裸で歩けるものじゃないものね……」
 そう、徐々に麻痺して来ている感覚を通常に戻す行為、『服を着る』という当たり前のステップを踏む事だった。
「ふふ……」
 自虐の笑いが出てしまう、そうそのステップは自宅で行うものだ、小夜はいつもマンションの玄関ホールでそれを行い、今はそのホール出たすぐ先で行おうとしているのだから。