「仲いいじゃないか、やはり犬同士か」
「ああ……師範代、お願いです、コテツを……」
 藁にもすがる思いだったが、返答は予期されたものだった。
「夫婦の営みに邪魔なんかしないよ」
 檻を取り囲むように、見学されているのだ。
「いい子を産んであげるんだよ」
 ドキンッ……
「牝の顔をしてるじゃないか、本当に望んでいたのは何だったんだ?」
 コテツに会いたかった、師匠にも会いたかった、鍛え直してもらいたかった。
 淫靡な生活から抜け出すきっかけが欲しかった。
「新しい生活だな」
 ドキンッ……
 他人まかせではキラキラ出来ない事は分かっていたのに、縋ってしまおうとしていた。