ジル・バレンタイン
バイオ・ハザードシリーズ
「悪夢」の名に相応しい生き地獄……の図
それは、まさに「悪夢」の名に相応しい生き地獄だった。 頬や手のひらに擦り付けられ、あろう事か口中や女の最奥にまで突き込まれる腐敗した肉棒。 流し込まれた途端に胃が拒絶反応を起こし、たちまちのうちに吐きもどしてしまう腐汁にも似た冷たく重い精液。とりわけ、その精液を膣内射精されるおぞましさは筆舌に尽くしがたかった。 ゾンビたちの肉体同様生命の感触を全く感じさせない冷たい精液が、子宮口を越え子宮の中にどろりと流れ込んでくる感触は妊娠の恐怖以前にそれだけで気が狂いそうにおぞましかった。 もう、何度犯されただろう。 飲まされてはその度に嘔吐を繰り返し、とっくに空っぽになった胃はそれでも絶え間なくこみ上げる吐き気に痙攣し、キリキリと激しく痛む。 何本もの肉棒をしごかされた指にはこそげ落ちた腐肉すらこびり付いていた。 そして子宮は、胃と違って注がれたものを自らの意志で排出できないために、ゾンビどもにたっぷり流し込まれた精液で満たされ溢れかえっていた。 それでも、ゾンビ達は執拗にジルにまとわりつき、まるでその生ある肢体を憎悪しているかのように凌辱の手を少しも緩めない。 恐怖、汚辱、絶望……いつしか、一向に終わりの見えない地獄絵図の中でジルはその瑞々しい肢体だけでなく、その精神までもを徐々に地獄の亡者たちに貪られていった…… ………………………………………………………… ………………………………………… …………………… 「おーい、ジル! そろそろこっちも片づきそうだぜ」 「OK、わかったわ。それじゃあもうちょっとしたら本部に戻りましょう」 あの悪夢から数ヶ月後、ジルは奇跡的に社会復帰を果たしていた。 余りの精神的ショックで一時は廃人同様になりかけたジルだが、救出後の徹底的な集中治療、そしてなによりチームメイト達による献身的な介護により、生来の強靱さもあったのか順調というよりもむしろ驚異的な回復を見せていた。 現在では、若干精神的に不安定な部分が残るものの、簡単な任務ならさほど支障無く以前と同じように出動できるほどにまでなっていた。 「ふー、今日は割と簡単にカタが付いたわね。どうジル、今夜ちょっと飲みに行かない?お洒落なバーを見つけたのよ」 「フフフ……貴女ったら本当にお酒が好きなんだから。いいけどまた酔っぱらって私に全部払わせたりしないでよ?」 「やーねえ、あれはあの時だけだったんだから。ってその顔は全然信用してないわね」 軽口を叩くジルを、同僚の女性が暖かい視線で見つめる。 館で発見された時の状態からジルがここまで立ち直れたことは、神に感謝してもし足りないほどだった。 だが…… 「いいわよ、今夜はどうせ暇だしね………………んんっ!?」 突如、ジルが口を手で覆った。 辺りを見回し、幸いなことに近くにあった公衆トイレに飛び込むと、洗面所で激しく嘔吐する。 (これは………………ま、まさか!?) 直前まで、気分が悪くなるような予兆は全くなかった。 とすれば……突然襲ってきた吐き気に女性として思いつくことは一つしかない。 そしてここ数ヶ月、そういった心当たりは全くなかった。 そう、たった一つ、悪夢のようだったあの交わりを除いて。 二度と思い出したくもないあの時の記憶が、生々しい感触を伴って脳裏に強烈にフラッシュバックする。 「あ、ああああああ………………」 ジルは今気がついた。 ずっと生理がなかったことを。 いや違う……気づいていたけれど考えたくなかったのだ。 自分の体に奴らの子を宿しているということを。 「ジル、貴女まさか…………」 壁に寄り掛かったまま、ズルズルと崩れ落ちる。 心配して後を追いかけてきた女性スタッフの驚愕の声も今のジルには聞こえなかった。 「いや…………いやあああああぁぁぁぁぁっっ!!!!」 悪夢は、終わらない…… ROGUEさんに頂きましたありがとうございました。 |