ミリア・レイジ
ギルティギアX

お前にはもうこの髪の毛を操れないだろう?……の図



お前に普通なんて言葉は似合わないんだよ、これでもくらいな



「ようこそミリア=レイジ。古巣に戻った気分はどうかね」
「悪くないわね・・・でも、こうして二人きりで話したのはいつだったか・・・憶えていないわ」

ここにつれてこられるまで部下に散々な目に合わせられたにも関わらず、ミリアはいつもと同じ瞳の色を携えていた。
視界の無いはずのザトーはそんな屈託のない瞳を、自ら封印せしめた光を呪うかのように呟く・・・
「お前は俺の光だった・・・」
「何?」
意外な言葉がザトーの口から紡ぎ出されるやいなや身動きの取れないミリアの顔を鷲掴みにする。
「あれだけの屈辱を味わったのは、後にも先にも一つだけだ」
「は・・離せ・・」
「その体で償ってもらおうか!」
ミリアの体を漆黒の闇が覆い尽くしていく。
今まで組織に散々弄ばれたが、感慨など何一つしてない。
だが、ザトーに対しては違った。
「くっ・・・ザトー、殺さない事を後悔するよ?」
「ククククク・・・後悔?何故俺が後悔しなければならんのだ?これが楽しいショーの幕開けというのに!」
(動け・・・私の・・・髪・・・)
「無駄だ。アングラは私が御さえた・・・私の言う事しか聞かぬよ?」
「ば、ばかな・・・どうして?」
「お前の卑・泥獄対法第6法アングラのアフターリスクが開放されようとしている」
「ふ、ふざけるな!・・・ぐっ、そんなはずは、無い・・・」
「感情・・・か?無理に抑えている可能性も否定できないが」
「そんな事・・・知った事か」
「フン!ならば俺が取り戻させてやる。お前の光を俺が取り込んでやる」
ザトーの影が一瞬でミリアごと包む。闇に飲まれるように二人はその場所から忽然と姿を消した・・・

「ザトー様、例の女の件ですが・・・」
深いまどろみの中から引きずり出されるような感覚・・・悪くはない。
ザトーは無機質な椅子の上で眠っていたようだ。
「またか、ヴェノム・・・俺の好きにやらせろと言った筈だ」
「・・・」
「何か言う事があるんじゃないのか?そんな事で俺を起こしたりしないだろう」
ヴェノムは少々間を置いて口を開く
「胎児の様子に変化が見受けられます。このままだと母体が持ちそうにありません」
「呪われた子か、フン。相応しいではないか」
少々展開に退屈していたところだ。余計な反応を楽しむ事すら最近は無に等しい。
ミリアを捕らえて半月がたった。
描いたシナリオ通りミリアはザトーの子を孕む。
ザトーとミリアの禁呪の力が反発しあうのか、徐々に徐々にミリアの体を子が蝕んでいる。
「良くもった方だな」
ザトーがポツリと呟いた。
「どうします?とても子が成熟するまでは・・・」
「ククク・・・そろそろ禁呪の後遺症から解き放ってやるか!ついてこい!」
ザトーはヴェノムをつれミリアの元へ向かった・・・

「お姫様、お迎えに上がりましたよ?」
「ザ・・ザトー・・・」
「おやおや、白馬の王子が現れたのに随分と薄い反応で」
「こ、殺せ・・・」
(自分の髪で身動きが取れない女というのも中々お目にかかれないものだ・・・フッ)
ヴェノムは下らない考えを一笑に臥した。
「フゥ」
ザトーが溜息をつく
「まだ分からんか、俺はまだ手に入れていないのだよ」
ミリアの腹に掌を当てる。
「・・・」
初めはザトーに体を触れられる事が非常に苦痛に見えた。だが最近はそういう反応も見せてはくれない。
「分かる・・・分かるぞ、呪われた子の胎動が」
満足に養分も与えられない母体を極限まで削り、餌を欲している。
その光景を見ながら、ヴェノムは舌打ちをした。
(ザトー様は一体何を考えている?私に話してくれたのは、朽ちていく体を補う為に強い生命力が必要だという事だ)
ザトー様のお体も影に蝕まれている。本当は一刻も早く体の崩壊を止める為に素体になる物が必要だ。
それが、この女の胎内の魔物だというのか・・・?
この行為自体私は望むべき事ではないが、ザトー様は本当に今から生を受ける自分の子供を媒体にする気なのか?
ヴェノムの表情からは読み取れないが、この哀れな女を解放してやりたいと思っていた。
(ザトー様、もういいでしょう)
口に出せ
口に出せ
そう反芻している
そんな迷いを打ち破るかのようにミリアの悲鳴に近い声があがる。
「な、何をする気・・・!」
「一端に震えているのか、ミリア?知れた事、お前を助けてやる。感情を開放してやる」
自慢の影をドリル状に掌から放出させるその行為、幾ばくか、ミリアの凍りついた感情を解凍する。
「俺はこの時を待っていた・・・待ち望んでいた・・・色々な物が俺の中で紡ぎ出された答えを教えてくれる!」
〜狂気に駆られている〜
そんな印象をヴェノムは受けた。しかしここまで、ミリアに対する想いがあるとは・・・!!
ヴェノムは嫉妬した
そしてザトーが、全てを開放する。
「いギャあああああああああああああああああああああッッッッッ!!」
耳を劈くようなミリアの悲鳴が木霊した。
「やめ・・・ギィィィィィィィィィッッッ!!」
「もっと怯えてくれ!」
ザトーは力任せにミリアの胎内に影ごと腕を突っ込む。
ビシャ ビシャ・・・
辺りに鮮血が飛びちる。
「綺麗な色だな・・・まるで俺の過去の異物を洗い流してくれるようだ」
「ひ!ぐぁ・・・ッッッッ!!」
ヴェノムの手が震えている。
(傍観していていいのか、私は・・・!!)
「た・・・助け・・・」
(命乞い!!?)
ヴェノムがミリアの視線に気づく
「ハッハー!そうだ、そのお前の悲鳴が聞きたいんだッッ!!」
リズミカルに挿入を繰り返すとかそういったものは無い。ただ目的にひたすら突き進む魔の手。
「くあっ!・・・あぐっ」
ズシリと鈍い音が響く・・それは微かな音だ。だが、そこに居合わせる3人にははっきりと聞こえた。
「掴んだぞ・・・お前の隠していたモノを・・・」
「ぐェッ」
ミリアの口から鮮血が落ちた。
「ザトー様!もうお止め下さい!!」
「黙レ、そこで見てイろ。私が長年取り戻そうトシたモノを手に入レる瞬間をナ」
(様子がおかしい・・・まさか!)
ヴェノムが空間に瞬時に弾を生成する
「レッド・ヘイルッ!」
ヴェノムから打ち出された高速の弾がザトーめがけて弾道の軌跡を描く。
その刹那、ザトーがミリアの胎内に巣くう何かを引き摺り出そうとした。
「飼い犬二手ヲ噛まレルとはこの事カ」
目前に迫るヴェノムの一撃をまるで意に介さない。
「貴様、何者だ!」
「――――――――――――――――ッッッッ!!!」
禁呪の束縛から開放された光にヴェノムの声とミリアの断末魔が飲み込まれた・・・

ほんの一瞬の事だった。
気が付けば、地面に臥している自分の姿に気づく。
そして目前に陽炎のように立っている姿にも気づく。
「ザトー様・・・」
ヴェノムは見上げている。
影の魔物と化したザトーの姿を。
片手を掲げ、その掌には異形の姿をした形ある物を。
声にならない音を口から紡ぎ出し、完全に生気の失われたミリアの顔を。
これからどうするべきかと一瞬躊躇したが、思い直す。
ヴェノムはキューを杖代わりに立ち上がると、陽炎を正面から見据えた。
「ザトー様の体・・・返してもらうぞ」




逆襲のシ〇ア専用さんに頂きました、ありがとうございました。



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