来栖川 芹香
To Heart
ちっ しゃべりゃしねぇじゃねえかの図
フッ、フッ、フッ、フッ…… 男の荒い呼吸の音だけがやけに大きく響く。 だが、その部屋の中には、確かに二人の人間が存在していた。 生白い少女の裸体を染めようとするかのように、黒い巨体が覆いかぶさっている。 死体のように力なく横たわっている少女の股間に、黒人はまるでやけくそのように腰をぶつけているのだった。 「!」 開かれるドアの音に、深く突き入れたまま男の身体がビクッと大きく緊張する。 その向こうに見慣れた相棒の姿を認めて一気に脱力する姿は、どこか滑稽な感すらするほどだった。 「なんだ、またやってんのか。まったく飽きねえ奴だな」 「うるせえ、他にやることでもあんのかよ。それにどうせお前だってやるんだろ」 「当たりめえだ。今じゃあそいつもそれくらいしか使い途無いしよ」 男達の会話は一見軽口でも叩いているように聞こえるが、実際にはそれは苛立ちと憔悴を押し隠したものだった。 現に男は早々に不毛な会話を切り上げ、再び少女を犯すのに没頭する。 「…………」 少女はそんな男達の会話にも、体内に押し入って暴れまわるモノにすら興味がないように、相変わらずぼんやりとした目を宙に向けたままだった。なまじ目鼻立ちが整っているために、そうやっていると本当に人形のようにすら見える。 それでも時折耐え難げに眉をひそめたり唇を噛んだり、そして何より新たな生命を宿した孕み腹が、彼女が人形ではなく生身の女性であることを物語っていた。 異国の地で食い詰めた彼らが行き着いた結論は「犯罪」という実に簡単かつ短絡的なものだった。 そして不運にも彼らのターゲットになってしまったのが少女、日本でも有数の財閥の令嬢・来栖川芹香だった。 首尾よく芹香を拉致した二人は、その成果に狂喜した。時期をおかず懐に入ってくるはずの多額の身代金を想像しながら、本来なら手の届くはずもない日本の上流階級の令嬢の身体を思う存分に蹂躙したものだった。 だが、そんな「人生で最も幸福な時間」は長くは続かなかった。 彼らの目論見に反して、芹香の生家である来栖川財閥は、頑として身代金の要求に応じなかったのである。 完全に当てが外れた二人は確たる勝算もなく、芹香を連れて潜伏生活に入らざるを得なかった。 その生活の月日の長さは、彼女の臨月腹を見れば一目瞭然であろう。 そして二人は芹香が身重になった今もなお、狂ったように暇さえあれば芹香に挑んでは欲望をぶちまけることで不安や恐怖感から逃避しているのだった。 それでも、たとえ金は手に入らなくても、この何処か神秘的な美少女を自分達のものにできていたら、彼らの心は幾分か満たされてはいただろう。 だが、芹香の反応は、そんな淡い期待感を打ち砕くようなものだった。 およそ来栖川芹香は、拉致された当初から非常に従順な少女だった。 犬のように首輪でつながれ、ありとあらゆる恥辱を強要され、ついには凌辱者たちの子を身ごもることになっても、芹香は悲しげな顔をするだけで、抗いらしい抗いを一度も見せたことが無い。いや、そもそも男達はこの少女の発する声をほとんどまともに聞いたことすらない。監禁する上でこれほど手間のかからない少女もいないだろう。 だが、その従順さはまるで意思の無い人形のようなそれであり、どんなに男達がムキになろうが彼女の心は彼らをとらえることはなく、まるでなびく気配は無かったのである。 それがますます男達の苛立ちと焦燥をあおり、何とか彼女の心を揺り動かそうとよりその凌辱が激しくする結果となっていても、その反応は一貫として変わらなかった。 「最初から全然かわらねぇな、この女! もっといやがらなけりゃ犯る価値も無いなぁ」 部屋に入ってきた男が、無造作に芹香の胸を踏みにじった。 「…………ッ」 誘拐当時からめっきり量感を増し、なにより妊娠で張り詰めた乳房が無残にひしゃげ、その先端からは母乳が漏れ出る。 それでも男は止めるどころか、さらにグリグリと足に力を入れて噴き出させる。 しかし、その激痛にも少女は眉根を寄せるだけで、噛みしめた口から悲鳴が漏れることはなかった。 「ちっ、身体ばっかり具合が良くたってよお」 苦痛で締めつけを増した媚肉に一方的に射精を終えた男が、自慰にも似たセックスを終えて身体を離す。 芹香はやはり無反応で、犯されたままの姿勢そのままに大きく開かれた足を閉じようともせず横たわっている。 その両手が、ノロノロと膨らんだ腹部にそえられた。 「また始めやがった。まったく薄気味悪いガキだぜ」 「やっぱりこいつ、初めからどこかおかしかったんじゃねえか?」 いつからか始まったか、長い監禁生活の中、芹香が唯一自分の意思で行うと言っておかしくない行為。 初めてこの行為を見た時、二人は本気で芹香が発狂したかと思ったものだった。 男達に犯された後に必ず、少女は虚空を見つめたまま声ならぬ声で何かをつぶやいているのだった。 それは、何かの儀式のようでもあった。 「けっ、おおかた神様にでもお祈りしてるんだろうよ。それとも立派な赤ちゃんが生まれてくるように願ってるかも知れねえぜ。何しろ大事な大事な俺達の子供だからよ! ハハハ!」 確かに、人を恨んだり憎んだりできなかった少女は狂ってしまったのかもしれない。 それは、呪いの呪文。 オカルトを研究していた芹香が知りえる限りの、最も忌まわしい復讐とそれを代行する者の召還の魔術。 母の呪詛を胎教に、産まれる子が果たして人か魔か…… その答えは、まもなく男達が身を持って知ることになるだろう。 ROGUEさんに頂きましたありがとうございました。 |