朽木 ルキア
ブリーチ
そのものは女を襲う、そして心残りは……の図
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目の前には、勝ち誇るように触手が揺れている。 「くっこんなやつにまで……負けるのか」 膝をついたルキアは悔しげに唇を噛み、そして次の瞬間には自嘲気味に歪めた。 (一護にえらそうに言っておいて、本当のたわけは私だな……) 自分の弱体ぶりも測れずに、一人でも十分と虚(ホロウ)に挑んだ。その結果がこれだった。 そんな愚かな死神には、この程度の虚との戦死がせいぜいお似合いだろう。 そんなルキアの観念が伝わったのか、揺らめいていた触手が矛先をルキアに向ける。 槍のように自分に伸びてくる触手にも動じず、ルキアは静かに目を閉じた。 次の瞬間には無数の触手に串刺しにされて、朽木ルキアはその生を終えるはずだった。 (一護……) たった一つ、図らずも巻き込んでしまった少年の行く末を案じながら。 「……?」 だが、その瞬間はいつまで経っても来なかった。 触手達は身体を貫くかわりに四肢に巻きつき、ルキアを虚の近くまで引き寄せたのである。 「お前……本当に死神? お前みたいに弱いやつ、はじめて」 「ぐうっ……」 「すぐ殺しちゃもったいない。お前で少し遊ぶ」 その言葉と同時に、髑髏を模した口の部分から、胴体の部分から、ずるりと触手の群れが這い出る。 それは身体を絡め取っているものとは違って不気味に粘液にぬめひかり、先端部は大きく膨らんでいた。 「!? こっ、殺すなら、ひと思いに殺せぇ!!」 反射的にルキアは叫んでいた。それが何に使うものか、本能的に悟ったのだ。 「お前弱いから、いつでも殺せる。それよりまず遊ぶ」 触手は皮を剥くように簡単にルキアの衣服を引き裂いていった。たちまちルキアの小柄な義骸が露わになる。 「や、やめろ! 離せぇ!」 ルキアは不自由な身体で必死にもがくが、それは申し訳程度の抵抗にしかならない。 「お前、少しうるさい。おとなしくしろ」 それでも、ルキアの暴れぶりに、虚は少し辟易したようだった。 両膝に巻きついた触手が大きく左右に広がるのと同時に、別の触手が一気に中心に突き刺さる。 「ひぎぃぃッ!? うああああぁぁぁぁッ!!」 自分の体内でミチミチと肉が裂ける音を、ルキアははっきりと聞いた。深々と進入したそれは、さらに坑道を広げようとするかのように激しくその身をくねらす。 「あがあぁッ! あおッ、ひぎゃあぁッ!!」 白目を剥き、身体を突っ張らせるルキアに、虚は満足そうに頷く。 「うん、おとなしくなった。じゃあ、ゆっくりと遊ばせてもらうよ」 激痛に霞みゆく視界の中、鎌口をもたげた触手は、一斉にルキアへと襲いかかった…… 「ルキア……」 遅れて駆けつけた一護は、そこに信じられないものを見た。 時間にして数十分程度、だがルキアにとっては永遠とも思える時間であっただろう。 「ん? なに、お前こいつの仲間?」 一護に気づいた虚は、触手で持ち上げられたルキアの身体を正面に向ける。 「すまねぇ……俺が、俺が遅れたせいで……」 そのルキアの姿に、たまらず一護は顔を背ける。 ドロドロに粘液で汚れた小さな身体には、触手が毒蛇のように巻きついている。特に股間には木の根のように大小無数の触手が群がり、そこからどれだけがルキアの体内に潜り込んでいるか計り知れなかった。 そして、最も無残なのはそのポッコリ膨らんだ腹部だった。 しかもその膨らみ方は妊婦のそれではない。蛇を詰め込んで封をした袋の如く、その表面は不気味にボコボコと波打っている。それは、ルキアが子宮だけでは飽き足らず、内臓のすみずみまで犯し抜かれている証拠だった。信じがたいことに、一本の触手はルキアの身体を通り抜け、その口から先端を覗かせてすらいる。 大きく見開かれたままの両眼から溢れる涙が、一護の胸をしめつける。人間の女ならとうに死んでいる苦悶に意識が霞んでいるのか、一護が駆けつけたことにも気づいていない様子だった。 「こいつ最高のおもちゃ。すごく弱いけど、なかなか壊れない。ほらほら」 「…………ッ! …………ッッ!!」 これみよがしに虚はルキアの口から出た触手を上下させてみせる。その度にルキアの喉から声にならぬ絶叫が漏れ、身体がビクンッ、ビクンッと大きく反り返る。それはまさに悶絶という言葉がピッタリだった。 「て、てめぇ……!!」 斬魄刀を握りしめる一護の手に、血が滲む。だが、一護は一旦地面を向くと、大きく息を吐いた。あまりの怒りは神経が灼き切れるような熱を通り過ぎ、かえって冷静さを取り戻させた。 「そうかよ……死ぬ覚悟はいつでも出来てるってことだな」 ルキアを助けるための最良で最速の手順を頭に思い浮かべる。 それが完了すると同時に、一護は斬魄刀を振りかぶって駆け出した。 ROGUEさんに頂きましたありがとうございました。 |