メイ
ギルティギアシリーズ
潜り込んだもの、それは……の図
冷たく輝く大理石の床は、日の光も受け付けず、生命の息吹でさえ拒んでいるようだ 音も無し 感情もなし 足音も立てず真っ直ぐ目的の場所へ向かう男一人 一見紳士風のいでたちではあるが、長い前髪からその表情を読む事は出来ない その男はとある扉の前に立つと一呼吸おいてドアを2回ノックした 「入れ」 と短くその言葉にすらただ機械的にまるで何かの合言葉のような響き しかし男には安著するその旋律が耳を掠めない 「入ります、ザトー様」 ドアを開けて崇拝する男の目の前に立ったつもり・・・ 夜風が薄いカーテンを靡かせていた 窓の方を一瞥する 「また・・・か」 大きく開かれた窓から大きな紅い月が見えた 強い風で男の前髪が靡く 覗いた男の表情は険しい 「いつまでザトー様の体を弄ぶ気だ・・・」 男の感情が床を伝わり音響となる 何かを追うように男は部屋を飛び出した 「おい、エイプリル。メイはどこだ?」 コートを羽織った長身の男が、クルーの少女に声をかけた 「さっきまでここにいたんだけどね。寒くなったんじゃないの? どこに行くかは言ってないけど多分部屋じゃない?」 男はやれやれといった表情でかぶりを振った 満天の星空の海を自慢のシップで泳ぐ もちろん朝昼晩とここから眺める景色は良いモノがある それをメイに教えてやったらアイツは事あるごとにここに来ては感慨にふけってるというのだ 明日は大きなアサシン組織の塒に忍び込む手筈である 空から渇望できる場所にそんな世から憚れる様な組織のアジトがあるのは疑問だがエイプリルの情報に疑問の余地は無い まったく大したクルーだ いくら大空から見下ろしているとはいえ・・・相手は裏の世界では有名な組織 俺は風が体に障るという理由でメイに声をかけにきたんだが・・・ 「まーったく、俺の為とか言って前線で張り切るのはイイがな・・・アイツにももう少し自覚を持って欲しいもんだ」 「それはジョニー、お互い様なんじゃないのぉ?」 ジョニーと呼ばれた男は痛い所を付かれたのか声のトーンが小さくなる 「いや、オマエ。俺がメイの心配をするのは当然・・・だろ?」 男は小さなクルーに同意して欲しかったのだろう チラとそちらに目線を促した・・・が 「どうせ成り行きになったとかまだどこかで思ってるんじゃないの。発覚したときのジョニーの慌て様ったら酷かったからね!」 「それを言うなよ・・・」 やっぱりか コイツ、エイプリルは我がジェリーフィッシュでも変り種だ もちろん、メイやディズィーも個性抜群だろうがコイツもコイツで俺様を手玉に取るあたりメイよりも手強い女である にしても・・・あのときの事は今思い出してみても身震いしやがる 俺様が一人の女に縛られてしまうなんて! 考え込んで表情が変わったジョニーを見て、エイプリルは言った 「なんだかジョニーの顔、青くなってきてるよ・・・」 「釈明するぞ。俺は間違っても最後まで手を出した女なんて一人もいやしないからな!」 「それを聞いたらメイ悲しむじゃない」 ヌヌゥ、返す言葉が無い 早い話、メイにしてやられたのだ、俺とした事が 責任取ってよね!なんて言葉、どこかの使い回した台詞、アイツの口から出た訳じゃないが・・・ 正直、抱いただけで済めばこんな足枷を食らう必要もなかったろうに 「と、ところで、メイはどこにいったんだっけ・・・?」 「部屋でお風呂に入るとか言ってたよ」 「フ、風呂か・・・」 「胎教の為だとか言ってそのままお風呂でHしちゃえば?」 「ば、馬鹿言うな!」 ますます顔が青くなるジョニー 今度はエイプリルが被りを振って呟いた 「祝福されない子供なんて悲しいよね」 「オマエくらいだぞ、露骨にメイと俺の仲を取り持つような発言してるのは・・・」 「ううん、今はまだ時間が足りないだけ。いずれシップの仲間達が皆諸手を上げて祝ってくれる」 何て奴だ 俺の考えを理解しながらそういう事を平気で言いやがる 「そうなるといいがな・・・エイプリル、メイに明日は外に出るなって言っとけ それと、暫くお気に入りの場所で風に当たるのも止めとけってな」 「自分で言えばいーじゃなぃ」 「まったく・・・オマエは本当に大したクルーだ」 「?」 「いや、頼むから」 そう言い残すとジョニーはフラフラと自室へと消えた 「あんな調子で明日大丈夫かな・・・」 とは言うものの、ジョニーを振り回したのはエイプリル本人なのだが・・・ 「クケケ・・・獲物ノ匂イガスル・・・」 闇夜に紛れるという類ではない 月の光がその異様な容姿を照らし出している・・・が 誰一人としてシップのクルー達は気付かない 影の力を使えば人を欺くなど容易い事 大空に停泊しているという安心感を打ち破るように漆黒の翼は船の中へと潜り込んだ エイプリルの情報は確かだ メイは暢気に鼻歌交じりでシャワーを浴びていた ジョニーの苦悩も露知らず 風呂から上がり、熱を冷まそうとまたお気に入りの場所にいくつもりである ベットの上で普段着に着替えようと大きな帽子をかぶる 「あ・・・」 よくよく考えてみれば、風に当たりに行くのに帽子を被るのは不自然 「私のトレードマークだよね」 そんな事を言ってボケを誤魔化すメイ 普段着より先にかぶってしまった帽子、鏡を見ながら自分を見つめる 「あ、アレ・・?おっぱい、大きくなった・・・?」 今迄体の変化に気付かなかったメイだが、こうして鏡で自分を見てみると、子を宿した女という実感が沸いてくる 腹部の下の方が微妙に膨らんでいる 「ジョニー・・・」 さっきの鼻歌気分も少しばかりテンションが落ちてきた クヨクヨ悩む性格はしてないがこればっかりは色々と考えてしまう これからの事 「アレっ?」 窓が密かに開いていた 微妙な隙間だが、風は差し込んでいる 「・・・・」 さほど気にも留めず、鏡に映った自分の体を見ながら胸を揉み始めた 「お腹、大きくなるよねぇ・・・ジョニーはお腹の大きな女の子、嫌いかな?」 得意の妄想劇がメイをトリップさせる 頭の中ではすでに赤子が生まれそうな程に大きく腹部を膨らませたメイがジョニーの上で盛んに腰を振っていた 「ああ!ジョニー、いいよぉ!もっとジョニーの赤ちゃん産みたいッ!」 無意識に腹部を摩るメイ その顔は完全に現実と妄想の境界線を越えている ジョニーと結ばれ、子供を作る事・・・メイの念願が叶った そう裏付ける証と今迄ずっと追いかけてきたジョニーが両手を広げてメイを抱きしめている メイの妄想は最高潮だ 興奮したメイの乳首から母乳がベットを濡らしても本人は気付いていない そしてベットの下に潜り込んだ影にも気付いていない 「ジョニー、イっちゃうよぉ!」 ミチ・・・ミチ・・・ 「エッ・・・?」 メイは不意に違和感を覚えた 突然妄想から現実へと引き戻される 頭がボーっとして顔が熱い・・・メイは違和感の感じる場所が良く分からなかった 鏡に映った自分を見てみる 「あ、あ、アレっ??」 驚愕した ほのかな膨らみだった腹部が臨月に至るまで膨張している事に気付く 「な、なななな、なんで?なんで??」 まさかジョニーに対する想いが赤子を成長させた? 否、そんな事ある筈が無い 流石に現実に起こっている事のおかしさに気付くメイ すると、脳裏に誰かの言葉が響いた 「感ジルゾ・・・強イ生命力ヲ持ッタ息吹ヲ・・・」 「だ、誰!?」 「アノ男トオ前ノ赤子カ・・・相応シイデハナイカ」 グググググッ・・・ お腹が更に膨らんでくる 「いやぁ!止めて!止めてェ!!」 メイの悲痛な叫び 違和感の原因は、陰部から胎内へと侵入している黒い影 もう既にその影の半分はメイの中へと潜り込んでいた 「うわあああああ!」 慌てて掴み引っ張り出そうとするが手応えが無い 「無駄ナ事ハ止メテオケ。オ前ハ我ガ母体トナルニ相応シイ」 パニくったメイが自分の体よりも大切な物を護ろうと叫ぶ 「ジョニーの赤ちゃんが!赤ちゃんが!」 お腹を必死で押さえるが膨張、影の侵入が止まらない ミチミチミチ・・・ 「ひグゥッ!」 「体躯ガ小サイナ・・・全テ受ケ入レルマデモタヌカモ知レヌ。ダガ漸ク見ツケタ我ガ魂ノ器・・・手ハ引カヌ 破壊サレルニセヨ我ヲ満足サセル結果ヲ残セ!」 ブシッ! 「いやああああああああああッッ!!」 メイの腹から鮮血が走った 急激な膨張に体が耐え切れず決壊を起こしはじめた 「メイッ!! メイッ!!」 ドンドンドンドン 激しい扉の叩く音 「チッ・・・アノ男ガ来タカ。要ラヌ口ヲ塞グノヲ忘レテイタ」 ブシュッ・・・ (こ、こんな状況でも母乳って出るんだ・・・私が、ジョニーの赤ちゃんを望んで・・・いるせい・・?) 「あ・・・おおお・・・・」 胃の内容物がメイの口から滴り落ちた 「ミスト・ファイナーッ!!」 超高速で繰り出される抜刀の剣がメイの部屋の扉を弾き飛ばす 部屋になだれ込んだジョニーが見たものは異様な影の魔物がメイを弄ぶ光景 「フン・・・何時モ余計ナ邪魔ガ入ルモノダナ。漸ク王子様ノ御到着カネ?」 既にメイの胎内から躍り出たザトーが、否、エディがジョニーを一瞥する 「貴様・・・メイに何をしたあッ!」 飛び掛ろうとするジョニーをメイの体を使って抑止する 「切リ札ハコチラニアル。動クナ」 「ザトー様!」 いつの間にか大空にあるメイ・シップ内に侵入していたヴェノムがメイの部屋に現れていた 「ホォ、飼イ犬マデ御登場トハ・・・」 「黙れ!今すぐザトー様の体から追い出してやる!」 「止めろ!メイが!」 ジョニーの抑止に反応するヴェノム 「アサシン組織ノ幹部トモアロウオ前ガ私ヲ貫クノニ何ノ関係モ無イ人質ノ盾ニ何ノ躊躇イガアルノダ?」 「五月蠅い・・・」 「私ガコ奴ノ胎内ニ寄生シテナケレバ躊躇無ク刺シ貫イタノカモ知レンガ、ククク」 (この状況だと行動できるのは奴だけだ、しかしメイには時間が無い!) ジョニーは剣の切っ先に力を込めた 信用できるのは自分の剣の腕 後から進入してきた男は姑息でも残忍でも無いが、あくまでアサシン組織の者なのだ (クッ!ザトー様の体を使ってこのような本人の望むべき事ではない所業・・・確かに私には関係無いがあの女、このまま 殺す訳にはいかん!ザトー様に身の知らぬ罪状を押し付けはさせん・・・) ヴェノムにもメイの生命力がどんどん落ちているのがわかるようだ キューを持つ手に自然と力が入っている 「共闘カ?見下ゲ果テタ物ダ」 「その子を開放しろ・・・そしてザトー様の体から出て行け」 「メイを離せ・・・」 三人の思惑が交錯する中この三つ巴 邂逅を破るのは果たして・・ 逆襲のシ○ア専用さんに頂きました!ありがとうございました |