ベール=ゼファー
ナイトウィザード

魔王と呼ばれている意味を思い出させてやろう……の図



「我等蝿王は拡大の」「あああああ……集めたプラーナが……ああ……」




 ――失敗した、と気付いたときには既に遅すぎた。

「ぁ…………ぅあ…………」

 先日のウィザードとの戦いで大幅に失われてしまったプラーナ。それを取り戻す為に、ベル―― ベール=ゼファー ――は眷属を増やし、
 それを各地に散らばせてプラーナをかき集めるつもりだった。
 が、

   ブチュリ ベチュッ ビチュチュッ
「――あぁぁぁぁぁぁ……」
 歪に膨らんだおのれの腹。その出口たる膣口を大きく広げ、半透明の奇妙な物体が幾つも転がり落ちてくる。
 それは数時間もすれば殻を食い破って白い蛆へと変わり、そして成虫となる。
 ――そう、蠅の女王たる魔王ベール=ゼファーの眷属として――

 ベルがその腹を歪ませ、自ら産み落としているモノ。
 それは、“卵”。
 ベルが最初に作った数匹の眷属たる蠅。彼女はその眷属たちに、大きく3つの指令を与えた。
 1つ目は、なるべく多くのプラーナを集めて、本体たる自分に持ちかえること。
 2つ目は、ウィザード達に見つからないように、殺さない程度にプラーナを奪うこと。
 3つ目は、可能な限り数を増やして、効率的にプラーナを集めること。
 増殖方法として、ベルは眷属に繁殖能力を与え、いざというときの為に魔力の発現を妨げる薬物を体内で精製する機能も付加した。

  ――コレがまずかった。
 負けてムシャクシャしていたのと、プラーナが減衰していたベルは、眷属のうちの一体を作り損ねていた。

 幾匹もの蠅が飛んでいく中、一匹の蠅が突然ベルに襲い掛かった。通常、自身の作り出した眷属に魔王が襲われることはまずありえない。
 だがそのときのベルは疲弊しており、かつ眷属を放って気を抜いていた為、自らの首に刺さる針に直前まで気が付かなかったのだ。



 ――あれからどれくらいの時間が経っただろう。ベルはいまだ、自分の産みだした蠅に犯されていた。
 蠅達は膣に生殖器を入れず、きめ細やかなベルの腹に針状の生殖器を刺しいれると、そこから直接子宮や卵巣に精液を流しこむ。
 蠅達の精液には、卵子の成熟を早め、幾つもの卵子を強制的に排卵させる効果を持ち、犯した相手のプラーナから卵子を合成する能力があった。
 卵を産み落とす穴を塞がず、延々と生殖を行う為にベルが眷属に与えた能力で、他ならぬベル自身が犯され続けている。
 薬で魔力も使えず、産卵に伴う体力の疲弊。そして何より――

   ビチャッ  ベチョッ  ボチャッ 
「あああぁぁ……プラーナが……集めた、プラーナがぁ……あぁぁ……」
 次々と産み落とされていく卵。その卵が成熟する為の栄養は、母体となったベルのプラーナ。
 外に散った眷属たちが集めてくるプラーナは、ベルに与えられると同時に新たな眷属を産み落とす糧となっていく。
 そして産まれた眷属たちは、ベルを犯す輪の中に加わっていく。

   プチュッ   ビュクッビュクッビュクッ
「――――はあぁぁぁああっ!?」
 不意に一匹の蠅が、いまだ卵の残る子宮に、新たな精液が注ぎ込んでいく。それを見た他の蠅達も、我先にとベルの腹に群がり、その小さな腹に
 針状の生殖器を突き刺し、子宮に、卵巣に、遠慮なく汚液を流し込む。

「や……だ、も……やめ……」
 いびつに歪んだ腹が、僅かに大きくなる。針の刺さった隙間から、緑色の人ならざる精液が溢れ、それがベルの子宮の中で、彼女の卵子と混ざり、
 プラーナを吸って卵を成して成長していく。

「あ……あああぁぁ……ぁぁぁぁぁ……」

 魔王は、簡単には死なない。そして、プラーナは補充される傍から使われていく。
 この宴は、終わらない。ベルが狂ったとしても、決して…………



宵芳右近さんに頂きました、ありがとうございます。



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