※注※
このSSではゲーム『同級生』の主人公の名前を、便宜上小説版『同級生』で使われていた『詠』とさせていただきました。
が、設定等はPC版『同級生』(特にPC98版)を元にしています。
矢吹町北東に位置する矢吹町公園。
広大な敷地を持つこの公園は若者たちのデートスポットであり、昼は池の上を漂うボートで、夜は一定の間隔で設置されたベンチで多くの恋人たちが愛を語らう場所である。そして今夜も、一組のカップルが身を寄せ合っていた。
「ん……はあっ……んん、ちゅっ……うむ……」
チュッ……チュムッ……
最初はついばむようなぎこちないキス。しかし次第にお互いの高まりをぶつけ合うように、貪るようなディープキスへと移行する。Tシャツにジーパンというラフな格好の一目で高校生とわかる男子と緑色のスーツに身を包んだ大人の女性。白昼に大通りで腕でも組んで歩いたら好奇な視線を集めそうなカップルだが、今は薄暗い公園の中で他のカップルが同じように人目を気にも止めずお互いの気持ちをぶつけ合っている。
「んんん……」
亜子の身体が一瞬ピクンと跳ねる。詠が肩を抱いていた片手を移動させ、スーツの上から乳房に覆い被せるように胸に手を当てたのだ。だがそれは抵抗ではなく、すぐにその手の動きに身を委ねる。
「うふ……ん……」
服の上から乳房の量感を楽しむように揉みしだかれ、固くなりだした乳首を探り出すような指先の動きに、塞がれた口の端から鼻にかかるような甘い吐息が漏れた。
「あ!……そんな……」
胸を弄んでいた腕がスルスルと下に降りていき、スカートの中に潜り込むと、流石に羞恥に耳まで真っ赤に染めてビクッと身体を震わせた。侵入してきた手を挟み込むように内腿をすり寄せるが、だがそれは決して頑なな抵抗ではない。それどころかパンティの上から強引にクレヴァスをなぞり上げられると、電流に打たれたように身体の力が抜け、緩んだ膝は手の侵入をますます許してしまう。
「あ……いや……だめよ……」
いつしか亜子は、力を抜いて身も心も詠の愛撫に委ねきっていた。抵抗無しと見るや、詠の腕はスカートの中でますます大胆に動く。今やパンティ越しでもはっきりわかるほど火照っている秘裂を何度もなぞり上げる指が敏感な肉芽を刺激する度に、微弱な電流は連続して亜子の身体中を駆けめぐり、亜子はピクンピクンと身を震わせながらくぐもった喘ぎ声を漏らした。体内から湧き上がる情感に、いつしか脳裏にはピンク色の霞がかかり、一心不乱に流し込まれる唾液を喉を鳴らして嚥下し、口腔内に差し入れられた詠の舌に夢中になって舌を絡ませる。
「はあ……」
息も止まるかと思うほどお互いの舌を貪り合った後、ようやく唇が離れた。二人の唇の間には濃厚な口づけを物語るかのように透明な橋ができた。頬を鮮やかなピンク色に紅潮させ、タレ目がちな瞳をさらにトロンと蕩ろけさせている亜子は、普段とてもそういった姿を想像させないだけに、ふるいつきたくなるほど悩ましかった。ここでこのまま亜子を押し倒したい衝動を詠は必死に押さえ付ける。
「さあ……亜子さん……家まで送っていくよ……」
軽く口を拭うと、立ち上がって亜子に向かって手を伸ばす。昂ぶりにどこか上の空だった亜子も、一度まるで体内の熱気を吐き出すように大きく息を吐くと、差し出された手に掴まってベンチから立ち上がった。
「じゃあ、行こうか」
上気した身体を夜風にさらしながら、いつものように2人肩を並べて帰路に着こうかという時に、ポケットに入れていた詠の携帯電話が鳴り出した。
「もしもし……うん、俺だけど……えっ、マジかよ!?……うんうん、それで……えっ、い、今から?今はちょっと……うーん、わかったよ、しょうがねえなあ……」
なにやら困ったように相手と話していた詠だが、電話を切ると亜子の方に申し訳なさそうな顔を向ける。
「ごめん、亜子さん。友達が何かトラブっちゃったみたいで、すぐ来て欲しいって言ってるんだ」
「あら、そうなの? それじゃあしょうがないわね……急いで行ってあげて」
すまなさそうに事情を告げる詠に、ほんの一瞬残念そうな表情を浮かべたものの快く了解を返す亜子。その様子にホッとしながら、詠が急いでこの場を立ち去ろうとする。
「ごめんね、亜子さん。今度埋め合わせはするから。じゃあ、気を付けて帰るんだよ」
「もうっ、子供扱いしないでよ。私の方が詠君よりお姉さんなんだからね!」
年下の、しかもまだ高校生の詠に子供のような心配をされて、亜子が頬を膨らませる。が、直後一転して真面目な顔になり、今にも背を向けて走り出そうとしている詠を呼び止めた。
「あ……え、詠君……」
「なに?亜子さん」
「あ、あのね……す、好きよ……」
亜子はモジモジと思い切って言ってしまってから、恥ずかしさに真っ赤になって俯いてしまう。そんな年上らしからぬ可愛らしい仕草に、詠は一瞬きょとんとするが微笑みながら返事を返した。
「俺も!俺も亜子さんのことが大好き!」
カァーッ
真っ直ぐに見つめられたままはっきりと言われて、ますます亜子が俯いてしまう。恥ずかしさのあまり消え入らんばかりに身を縮める様は、先程まで年上なんだから、と言っていたわりにいったいどちらが年上なのかわからない。そんな姿にクスッと笑みを漏らすと、詠がもう一度亜子を抱き寄せた。
「あっ!? ん、んんー」
亜子が反応するより早く唇を重ねると、今度は短く、しかし強烈に舌を吸い上げる。
「んんんっ!」
いきなり舌を痺れるほど吸われ、目の前が爆ぜるような強烈なキスに身体中の力が抜け落ちる。そのままへなへなとへたり込みそうになるが、すんでの所で詠が唇を離した。
「じゃあね、また連絡するから!」
「んもう! 詠君ったらぁ!」
そう告げると、後ろも振り返らず勢い良く走り去っていく。その背中を見つめながら、亜子は今にも砕けてしまいそうな膝にキュッと力を込めながら、やるせなく大きく息を付いた。
「ふう……」
詠が立ち去ってから数分後、亜子はまだ公園内にいた。未だに身体のあちこちの火照りが収まらず、歩いてもフワフワと雲を踏んでいるようで、まるで現実感がなかったのだ。落ち着こうとすればするほど、先程の詠の愛撫をかえってますます鮮明に思い出してしまい、身体の火照りは止むどころかますます熱くなっていく。ましてや、いつもなら家までの帰路は詠と肩を並べて雑談しながら過ごすのだが、今日は1人なのでどうしても思案に耽ってしまい、詠の名残を頭から振り払えずにいた。
「それにしてもまさか詠君と本当に恋人になるなんて……」
詠と亜子が正式に付き合いだして1ヶ月ほどになる。ガチガチの身持ちのカタさと姉へのコンプレックスのせいで、20才になってもキスどころか男性の手すらろくに握ったことのない亜子にただ1人毎日のように積極的に会いに来たのが詠だった。最初の頃は悪名高い学園の問題児が自分をからかいに来ているものだと思い、全く気にも止めていなかった亜子だが、夏休み中マメに会いに来る詠をいつしか心待ちにしている自分がいることに気づいた時、詠に恋していることを悟った。その後「自分の好きになった人が年下、しかも高校生なんて……」とか、いろいろと耳に入る詠の女に関する噂に心を悩ませることもあったが、とにもかくにも2人は付き合いだした。それから何度もデートを重ねているわけが、今では亜子はその「年下の彼」にどうしようもなくのめり込んでいた。
しかし、それでいて2人の進展はなかなかに進んでいない。なにせ亜子はソノ手のことにとことん奥手で、かつて詠がファーストキスを奪った時にもそのショックで自室に閉じこもってしまったほどだった。詠はその教訓から、根気よく段階を踏んでいくことにした。そして最近では、雰囲気にさえ注意すれば先程のようにペッティングぐらいまでならいけるようになっている。だが、どんなに雰囲気に流されようと、詠は亜子が自分から言い出さない限り、決して最後の一線は越えないようにしていた。
それが、亜子には嬉しかった。先程のように気分が出てしまった状態で詠がもし迫ってきたら、亜子にはとても拒むことはできないだろう。また、亜子自身にも詠に奪って欲しいという思いがない、といったら嘘になる。だが、それ以上に、詠が我慢することで自分をいかに大事に扱ってくれているかが実感できて、それが嬉しかった。もちろん、いつかは詠に全てを捧げるつもりだ。だが、それはこれ以上ないという時、舞台で一生思い出に残るような素敵なものにしたい。初めてを失うのは簡単なことだが、焦ることはない。恋愛経験の未熟さゆえのロマンティックか、そう思う亜子だった。
「あっ……」
詠に抱かれる自分を想像したせいか、また下腹部が熱くジーンと痺れた。とろけだしたものが下着を汚してしまったのが自分でもわかる。そんな自分のはしたなさに赤くなりながら、それでも自分にもそんなことを考える男性ができたんだ、という思いが、さらに亜子を幸福感に酔いしれさせていた。
その浮つきようは、出口とは別方面の公園の奥地に足を踏み入れていることも、薄暗いレンガ道の左右の木陰からこちらを伺っている男たちがいることも気づかないほどだった。
「キャッ…………!」
いきなり暗闇から飛びかかってきた2人に、たちまち亜子はとらえられた。反射的に悲鳴を上げようとした口も、素早く手で塞がれて声を出せなかった。そのまま、ズルズルと道から外れた茂みの中へ引きずられていく。
「へへへ、こんな暗いとこを1人で歩いて、男を誘ってんのか?」
「んんっ!? むうう、むんんん〜〜!」
芝生の上に亜子を押し倒すと、1人が亜子の両手を押さえつけ、もう1人が仰向けの身体にのし掛かった。その下品まるだしの声に、亜子の体温が急激に下がった。
(レイプされる…………!)
狂ったように身体を振って逃れようとする亜子だが、がっしりと押さえつけられているので結果として頭を激しく振りたくることしかできなかった。
「いああっ!」
スーツの胸元を強引に開こうとする行為に、ボタンがはじけ飛んだ。その下のブラも引き裂かれるようにむしり取られる。ブルン、と現れた双乳を、男は乳でも搾らんばかりの勢いで握りつぶした。そしてしばらく亜子からくぐもった悲鳴を絞り出させると、今度はその手を下へ移動させていく。胸の方は、いつの間にか亜子の両手を足で固定しなおした男が自由になった両手を使って引き継いでいた。亜子の瞳から、ドッと涙が溢れた。この身体に触れてもいいのは、詠だけのはずだ。それが、今は顔も知らない2人の男にいいようにまさぐられている。
「おっ、こいつ気分出してやがる」
「んんっ!?」
亜子の秘所をパンティごしになぞり上げた男が、下着の湿り気を感じて声を上げた。その指摘に、亜子の頬がカアッと染まる。それは先程の詠の愛撫の名残だ、決して男達に反応などしていない……そう否定したくても、相変わらずもう一方の手で口を塞がれているので言葉にならない。
「わかってるって。おおかた彼氏としっぽり楽しんだあとなんだろう? よしよし、その余韻が残ってるうちに楽しませてやるよ」
その言葉通り、男は行為を急ぐためにタイトスカートもそのままにパンティを脱がし始めた。激しく抗ってバタバタする足から、器用にスルッと抜き取ってしまう。
「んむむ……」
外気が直接肌に触れ、剥き出しになったことを実感させる。その感覚に、たまらず亜子はギュッと固く目を閉じた。だが、そのせいで男が素早くズボンを降ろし膝を割って身体を入れてくるのに、瞬間的に反応が遅れた。ハッと亜子が恐怖に再び目を見開いた時には、肉棒の先端は処女孔と目と鼻の先であった。
「へへへ、とりあえずまずは一発抜かしてもらうぜ」
「んんぅ!? んああああぁぁぁっ〜〜!!」
男がぐっと腰を突き出すと同時に、身体に激痛が走った。その引き裂かれるような激痛の中に一瞬詠の姿が浮かんだ後、亜子の意識は真っ白になった。
それから、どれくらい経ったか。
気づいた時には、とうに男達の姿はどこかに消えていた。亜子の白い身体だけが、月の光の中に浮かび上がっている。服を全て剥ぎ取られた全裸のあちこちには白濁がこびりつき、凌辱の凄惨さを生々しく物語っていた。特に閉じることも忘れて大きく開かれたままの足の中心は、べったりと精にまみれていた。はじけた柘榴のようにこじ開けられた肉の合わせ目が、いまだ時折その奥から破瓜の血混じりのピンク色の白濁をトロリ、と吐き出すのが哀れだった。
「あ……」
意識を取り戻した亜子が、放心した目で空に浮かぶ月を眺める。レイプという亜子の現実認識力を超えた行為は、思考を停止させてしまったのである。そのまま、起きあがるでもなくぼんやりと身体を横たえる。だが、耳に入ってきた声が、亜子を現実に引き戻した。
「亜子さん、亜子さーん」
「え、詠君……?」
この場所に、いるはずもない人間の声。だが、自分を呼ぶその声は確かに聞き慣れた詠のものだった。
(え、詠君にこんな姿を見られたら……)
亜子の身体が、恐怖にガタガタと震えた。こんな姿を、他の男に身体を汚された姿を見られたら、詠に嫌われてしまう。そうしたら詠に見放される、捨てられる……亜子の思考はそこにしかなかった。レイプされたということ自体よりも、そちらの方がずっと恐ろしかった。亜子は身体を隠すように身を丸めると、じっと息を殺した。
「亜子さん、亜子さんいないの? おかしいなあ、まだ家には帰ってないみたいだし……」
(ああ……お願い、詠君、来ないで……)
だが、亜子の願いとは裏腹に、詠の声は確実に近づいてくる。もう、かなり近くにきていた。少し身動きしただけの物音でも見つかってしまうだろう。そこで、亜子はハッと気づいた。少し離れた芝生の上に、脱がされた自分の服が散らばっている。それをレンガ道から詠が気づいたら、当然手に取ろうとするだろう。そして、その位置から自分は丸見えなのだ……
そして……
「……亜子さん?」
「いやぁぁぁぁ! 見ないで、お願いッ、見ないでぇぇぇ!!!」
「亜子さん、出るよ! 飲んでくれる?」
「んんっ」
頷くのとほぼ同時にどっと口内に放たれた精液を、亜子はいっぱいまで肉棒を含んで喉で受け止めた。ドクッ、ドクッと脈動する動きに合わせて吸引し、大量に注がれるそれを一滴残らず嚥下していく。そして一通り放出が終わると、今度は先端だけ残してあとは口外に吐き出し、茎の中に残った精液まで丁寧に吸い出してやる。
「ふふふ……」
ベッドの上に足を投げ出して座った詠が、股間にかがみ込んで奉仕している亜子を見下ろす。淫猥なテクニックを駆使して自分の精液を飲み干していく亜子に、優越感がくすぐられた。
「はあ……」
肉棒をチュウチュウ吸い上げていた亜子が、ようやく口を離した。それでも、まだ名残惜しそうに舌でペロペロと舐め回す。その亜子の、さらさらのボブヘアーを撫でてやりながら、詠は意地悪い口調で声をかけた。
「亜子さん、夢中になっちゃって。そんなに俺の、おいしい?」
「ああん、意地悪なこと言わないで……詠君のだから、私……」
亜子の頬にサアッと朱が差した。そのくせ、ちらりちらりと詠を見上げる視線には、ねっとりと媚びが込められている。年下の恋人に甘く媚びることに、亜子はすっかり陶酔しきっていた。
あの日、レイプ直後の姿を見られた亜子は、もう詠とは別れるしかないと思っていた。だが、状況から全てを悟った詠は何も聞かず、半狂乱になって泣き叫ぶ亜子に服を着せるとひとまず落ち着かせるために1人暮らしのマンションに連れ帰った。そして、そこで亜子を抱いた。
それは、忌まわしい記憶を消し去り、傷ついた心と体を癒そうとするような、優しいセックスだった。最初は抵抗した亜子も、その壊れ物を扱うかのような繊細な指や舌に詠の想いを感じ、いつしか心も身体も開いて詠に身を委ねていた。そしてことが終わった後、恥ずかしそうに胸の中に抱かれる亜子に詠は改めて変わらぬ自分の気持ちを伝えたのだった。
もちろん、そんな詠の態度に亜子が心の底から感激したのは言うまでもない。もともと盲目的だった詠への愛情は、絶対的なものにまで昇華された。それは、今までなかなか「大人の交際」ができなかった原因でもある亜子の貞操感や羞恥心といったものも、軽く吹っ飛ばしてしまったほどのものだった。
それ以来2人の交際はがらりと容貌を変え、今では亜子は店番をしている薬局が閉店するのももどかしく詠のマンションに飛び込み、それから朝詠が学校に登校するまで2人で過ごすのが毎日当たり前、というほどの熱愛ぶりだった。亜子はまるで本来自宅であるはずの薬局に詠のマンションから通勤するような状況だったが、亜子の姉の真子はそういったことに寛大な性格であり、何より亜子自身が幸せそうな様子なので2人の仲を黙認し、詠と亜子の半同棲生活は何の障害もなく続いていた。
もちろん、急激な進歩は肉体関係においても同様である。亜子はかつての身持ちのカタさが嘘のように、詠が求めれば積極的なほどに応じるようになった。そんな感じだったからすぐに女の悦びも覚え、急速に性感が開発された身体は、今では詠の方が驚くほどの反応を見せるようになっている。そんな亜子を犯りたい盛りの詠が放っておくわけもなく、毎日2人は何度となく激しく愛し合っていた。
「嬉しいこと言ってくれるね、亜子さん。大好きだよ」
「はああっ……」
亜子の上体を起こさせた詠が、抱き寄せて首筋に口づける。それだけで亜子はブルッと身体を震わせて、悩ましい声を上げた。
「ああっ」
詠が亜子の媚肉に手を這わせると、熱く火照ったそこはもうトロリとした蜜を吐き出していた。まだ指一本触れられていなかったのに、詠に奉仕しているだけで感じてしまっていたのだ。少し前の亜子からは、とても想像できない姿だった。
「亜子さんのそんな声聞いてると、俺また勃ってきちゃうよ」
「ああ、凄い……もうこんなにカタく……」
放出したばかりだというのに、もう詠のものは勢いを取り戻しはじめていた。手をとって握らせると、うっとりとした声を上げて指を絡ませる。言われなくともゆっくり手を動かしながら、もう呼吸を乱しはじめるのが愛らしい。が、詠はその手を引き剥がしてしまう。
「さ、亜子さん。そろそろお風呂に入ろうか?」
「え、ええ、わかったわ。じゃあ準備してくるね」
続きはそこで……詠の目が語っていた。『一緒に風呂に入る』。その言葉の意味を知っている亜子は、身体がジーンと熱くうずくのをとめられなかった。陶然とした笑みで詠に返事をするとベッドから降りた。
「フフフ……」
バスルームへ消えていく亜子の形のよいヒップを見ながら、詠が忍び笑いを漏らした。
それは、『恋人の』亜子も見たことがない、邪悪な微笑みだった。
(それにしても、こんなにうまくいくとはね……)
あのレイプ劇は、全て詠が仕組んだものだったのだ。
亜子を何とか口説き落とすことには成功した詠だったが、その予想以上の身持ちのカタさにはほとほと手を焼いていたのだ。口では純愛を説きながら、その実、欲望の目でしか亜子を見ていない詠にとっては、まさに毎日が極上の料理を目にしながらおあずけをくらっている状態だった。
そこで詠が強攻策として企てたのがあのレイプである。レイプされれば貞操感の強い亜子のこと、身を汚された、という思いは人一倍強いだろう。その亜子を、詠が優しく受け入れてやる。そうすれば思いこみの強い亜子がこれまで以上に詠に入れ込み、何でも言うことを聞くようになる可能性は大いにあった。また、そこまでうまくいかなくても、他の男には身体を許してしまったという負い目から、レイプ後の亜子のセックスへの拒絶がグッと弱くなる可能性もある。ここまでおあずけをくらっておいて亜子のバージンを味わえないのが残念だが、焦れている詠にとっては十分やってみる価値はあった。
結果は、詠の予想以上にうまくいった。
今では亜子は詠のどんな要求にも喜んで応じるような女になっている。完全に詠を信頼しきっている亜子にはかつてのようなセックスへの抵抗感は微塵もなく、「詠が自分を求めてくれる」ということに対する深い幸福感と、そこから生まれる「詠に自分の身体で気持ちよくなってもらいたい」という献身的な気持ちがその心を支配していた。
特に詠を喜ばせたのは、その献身さから生まれる熱烈なまでの亜子の奉仕だった。もともと「一度惚れたらとことん男に尽くす」ところがある亜子の性格は、セックスにおいても例外ではなかったようだ。まだ日も浅いうちから求められるままに舐めろと言えば舐め、飲めと言えば飲むようになった亜子に気をよくした詠は、次々に自分好みな淫技を教えていった。すっかり奉仕することの悦びを覚えてしまった亜子も積極的にそれに応え、スボンジが水を吸い込むようにそれらのテクニックを身につけていった。亜子の奉仕は思いがこもっているだけに絶品で、すでに詠を喜ばせることに関してなら風俗嬢─例えば成瀬かおりなど─も顔負けの域にまで達していた。最近では詠からの要求、という受け身だけでなく、自分で雑誌やインターネットなどで「男を悦ばすテクニック」といった情報を仕入れてきてはそれを詠に披露する、ということも珍しくない。「徹底的に尽くし抜く」というのはまさにこういった事を言うのだろう。
「さて、じゃあ風呂に行くか……」
先日ソープランド系の雑誌やビデオを見せたところ、詠の目論み通り亜子は独学を始め、詠の浴室で再現可能な限りのプレイをしてくれるようになった。必要な備品も全て自費で揃える、という献身ぶりである。今も、敷いたマットの横で三つ指をついて詠の入室を待っているはずであった。
そんないじらしい『恋人』に股間を一層固くして、詠はバスルームへ向かった。