亡霊の住む家 8

『次女・雪乃 E』


 昼休み、親友の陽子が教室に飛び込んできた。
「ねぇ雪乃っ! アキラ君振ったって本当!?」
「え……? うん」
 息せき切って尋ねる陽子に、雪乃はきょとんとした表情で頷く。
「ど……どうしてっ!? 本気なの!?」
「どうしてって……付き合いたくなかったから」
 陽子は驚愕の表情を浮かべながら、いきなり雪乃の両肩を掴んで揺さぶった。
「どうしたのよ!? 昨日はラブレターを貰って、あんなに喜んでたじゃないの!!」
(そうか……陽子は知ってたんだっけ……)
 雪乃は頭の中で、無感動にそう考えていた。もうアキラ君に興味はない。恋愛感情など、持つはずがなかった。私はもう、ご主人さまの物になれたのだから……。
(ごまかさなきゃ、ね……)
「私、アキラ君よりもっと好きな人がいたの……」
「……っ!!」
 陽子の両目が見開かれた。まるで信じられない物でも見るように。
「その人に相談したらね、私と……付き合ってくれるって、言ってくれたの……」
「……雪乃……」
「だから……アキラ君とは、付き合えないの」
 沈黙が、二人の間を支配する。
「雪乃……それでいいのね!?」
「うん。なんで?」

「いいえ……もういいわ。分かった。それなら、私は何も言わない」
 一片の不安も、逡巡も見当たらない雪乃の表情を見て、陽子は雪乃に背を向けた。
「でも、アキラ君と雪乃と、共通の友人の私としては、あなたを……許せない……」
 微かに震える陽子の肩に、雪乃はそっと手を乗せる。
「ごめんね……でも、もうどうしようもないの……」
「どうして……昨日まで、あんなに……」
「そうね……今度、陽子もあの人に会わせてあげる……そうすれば、分かると思うよ……」
 陽子の背後で雪乃は、いままで浮かべた事のない妖艶な微笑を浮かべていた。



 ──とにかく、誰にも気付かれるな。

 それが、御主人様の最初の命令だった。
『いいか雪乃、私達の関係を、誰にも知られてはいけない。だからできうる限り、今まで通りの生活を送るのだ──家族にも、教師にも、友人にもな』
『成績を下げるな。親や教師が勘繰るからな。体力も維持しろ。食事はしっかり摂れ──そして……』

『あのアキラという少年とはなるべく話すな。話しても、よそよそしく追い払え。いいな……』
『そうすれば、お前はいつまでも私の所有物でいられる──しっかりやれよ』
 昨晩の彼の言葉が、雪乃の脳裏に浮かんでは消えていく。

(はい……ご主人さま……)
 雪乃は膝の上の左手をぎゅっと握り締め、股間から湧き上がる欲望に耐えていた。
(ですから、私を……昨晩のように、可愛がってください……)
 無意識に下半身に向かおうとする左手を、必死に押し止める。
 スカートの中に隠された下着は、既にその中心に大きな染みを浮かべていた。
『それと、私のいない所での自慰行為は禁止だ。欲しくなったら我慢しろ、私に許されるまでな……』
(はい、我慢します……ですから……すぐ……帰ったら、すぐに……)
 圧倒的な欲求と疼きと──そして、彼の言葉がせめぎ合う。
 雪乃は気の遠くなるような思いでノートを取りながら、切なそうに顔を伏せていた。



 私たしはぼんやりと、クラスメートと談笑している雪乃を眺めながら、考えていた。
 雪乃は、いつもの雪乃だ。話をしていても、全然いつもと変わらない。
 ただ一つ、アキラ君と話す時を除けば……。
 アキラ君と雪乃と私、三人の付き合いはもう十年以上になる。いつもいつも、一緒に遊んでいた。

 いつしか、私と雪乃はお互いが、同じ人を――アキラ君のことを、好きになっているのに気付き始めていた。
 幼馴染、小さい頃からの親友、そして、恋敵……。

 時には喧嘩もしたし、雪乃を憎らしいと思った時もあった。でも、それでも雪乃は、かけがえのない親友だった。
 複雑に絡み合う思いの中、アキラ君はやがて、雪乃に思いを寄せていく……。


 諦めた時は、泣いた。一晩中、こんなに涙が出るのかと驚くくらい泣いた。
 それでも、雪乃なら、と――私は、アキラ君のことを、諦めたのだ。

 それなのに……。
 雪乃は今、まるでアキラ君が他の、只のクラスメートであるかのように、他人用の微笑みで話している。
 付き合わないにしても、明らかにこの態度は変だと思う。
 よそよそしくするのなら、分かる。気まずそうに避けるというのも理解できる。でも、雪乃の態度は違う。
 雪乃は、あの告白も、それどころかアキラ君が幼なじみだって事まで忘れてしまったように話すのだ。
「……変だよ、雪乃……」
 私の微かな呟きは、雪乃には届かなかった……。



 あともう少し……あと数歩……
 雪乃は歯を食いしばって、自宅の階段を上っていた。
 快感を欲して疼く肉体は悲鳴を上げて、雪乃の脳に狂おしいまでの欲求を訴えている。
(ご主人……さまぁ……)
 雪乃は気の遠くなるような思いで一歩一歩を刻みながら、身体に抱える欲求をどんどん膨らませてしまっていた。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
 破瓜の痛みも消え、彼の『おとこ』に愛される悦びを知ってしまった身体は、本人の意思とは関係なく、その秘められていた淫らな才能を一気に開花させていた。
 彼にもっともっと愛されたいという欲求はどんどんその強さを増し、今や雪乃の思考の大半を支配してしまっている。
 とても勉強が手につく状態ではなかったのだが、彼に「成績を落とすな」と命令されていた為、雪乃は死に物狂いで勉強していた。
 ──彼といる時以外の、全ての時間を費やして。
「あ、ぁ……」
 震える手でドアノブを掴み、一気に部屋に飛び込む。後ろ手でドアを閉じるのももどかしく、雪乃は欲求を一気に爆発させていた。

「あぁ、あ、来て、来て下さい、ご主人さまぁっ!!!!」
 身をよじり、両手で自分の身体を抱き締め、雪乃は力の限りに叫ぶ。 
『……雪乃、お前はいつからそんなに偉くなった?』
「あ……!!」
 声の応えに、雪乃は一瞬安堵の笑みを見せた──だが、その顔はみるみるうちに恐怖へと変わっていく。
『答えろ。いつからお前は、私に命令できる立場になったのだ?』
 がく、がくがく、と震えながら、雪乃はようやく声を絞り出した。
「ご……ごめんなさい……申し訳ありません……私が、間違っていました……」
『間違いを許すのは一度までだ。私は愚かな女など必要ない』
「お……お許し下さい。どうか……どうか……」
 頭を垂れ、身もじりしながら、雪乃は必死に許しを請う。その様子に、声も満足げな響きを帯びていく。
『では、言え。私は、お前の何だ?』
「ご、ご主人さまです……雪乃の、ご主人さまです……」
『そうだな……では、その証を見せろ……』
「……はい……」
 雪乃は震えながら、両手でパンティを下ろし、スカートをたくし上げた。
 急速に性に目覚めた、咲き乱れた花弁が姿を現わしてくる。

『よしよし……そのまま脚を広げろ……んん?』
 こぽ、という音がし、雪乃の太腿を一筋の愛液が伝った。
「あ……」
 羞恥に顔を赤らめる雪乃に、声は優しく囁きかけた。
『そうかそうか、そんなに欲しかったのか……どれ、愛してやろう……たっぷりと、な』
「あぁっ……お、お願いしますぅ、ご主人さまぁ……」
 鼻に掛かった甘い声で、雪乃はおねだりをする。それは学校で見せていた彼女とは、信じられないほどにかけ離れた姿だった。
 そしてついに、待ちに待った快感が雪乃の泉を突き進んだ。濡れた唇の中に、実体化した彼の指が突き入れられたのだ。
「あぁーーーーっ!!!!」
 既にびしょびしょに濡れぼそっていた女は、簡単に彼の指を受け入れていく。
『くっくっく……相変わらず、良い締まりだな……』
「あぁっ、あぁっ、ああぁぁあぁぁあああああっ!!!!」
 指に掻き回される度に、雪乃の脳裡が快感で真っ白になっていく。

 腰が勝手に、男を誘うように、ゆらゆらと揺れ始めていた。



『くくく……お前が私の所有物である事を教えてやるぞ……何度も、何度でもな……くくく』
「はっ……はいぃ、ご……主人……さまぁ……」
『それ、行くぞっ!!!』
 ずんっ!!!
「はぁぁぁっ!!!」
 指を引き抜くのと同時に 熱く滾る怒張を雪乃の中に割け入らせた。
 たちまち、溶鉱炉のような熱さが私を包み込む。
 先日、雪乃の処女を散らした時に、最初に感じたのは――その、物凄いきつさだった。
 硬いのではない、ただ、その成熟しきっていない性器の小ささと、処女特有の締め付けるような反応が、まるで万力のような膣圧を私に感じさせたのだ。

 だが、今は――。
『くっくっく……随分と慣れてきた様だな、いい感触だぞ……すぐに出してしまいそうだ……』
 その若々しい締め付けと、少女の持つとろけるような秘肉の柔らかさが、絶妙な快感を味わわせてくれている。
 しかも、雪乃の膣はもう充分すぎるほどに、濡れていた。
 溢れんばかりの潤滑油が、驚くほど簡単に私の怒張を受け入れさせる――それでいて、絡みつくようなその膣圧は保たれたままなのだ。
『ふ、ふふふ、まるで握り締められているようだ――早くイかせてくれ、出してくれ、とな。くく、くくく』
 そのまま、一気に奥まで貫いていく。
 ずぬ、ずぬずぬずぬ……
「ああ、ああぁ、あ…………ぅ……」

 かくん、と雪乃の首が力を失う。突き入れられた快感だけで、雪乃は失神してしまったのだ。
『起きろ、雪乃……まだまだ、これからなのだぞ……』
「か……はぁ、はぁ、はぁぁぁ……ご、ごしゅじん、さまぁ……っ」
 強制的に目を覚まされ、雪乃は息も絶え絶えに、私に向かって呼びかけた。
『何だ? 言ってみろ、雪乃』
「きもち……きもち、いいですぅ……も、もう、もう、イッちゃいそうですぅ」
 自然に、満足げな笑いが零(こぼ)れ出る。
『そうかそうか。それでは、そうなる前に私も十分楽しまないとな』
 ずん!!
「かはぁ……っ!!」
 力強く腰を押し込むと、雪乃の全身はがくがくと震えてその快感を訴えた。
 ずんっ、ずんっ、ずんっ……
「はぁぁっ、あぁ、あぁ、あぁ、あぁぁ……」
 いきなり勢いを増した肉棒のピストン運動に、雪乃はあられもない声をあげていく。
 ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ……
「あぁ、あぁ、あぁ、あぁぁ、あぁぁ、あぁぁ、あぁぁぁ、あぁぁぁ、あぁぁぁぁぁ……」
 一突き、一突きされるたびに、雪乃の瞳からは光が消え、その視線はただ快感の海をたゆたうのみとなっていった。


 美しい。
 ここまでの美少女を、私は今、犯しているのだ――。

 そして、その快感曲線の終着点はあっけなく訪れる。
「うぁっ、うぁぁぁぁっ、もっ、もうっ、もう……」
 ぶるっ、ぶるぶるっ、と雪乃の身体が震える。絶頂の予兆だ。
『そうか、そうか……さぁっ、イけっ、イけぇっ!!!』
 ずん!!!!
 私は懇親の力をこめて、雪乃の内奥に突き入れた──その、瞬間。

「あぁ、ああぁぁあぁああああぁぁああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 雪乃は全身を硬直させ、めくるめく瞬間を迎えていた。全身にかぁっと汗を纏わせ、ペニスを飲み込むように膣壁を蠕動させていく。
『ぐ……ぅぅっ!!! ふぅ、凄い締め付けだな……油断していると、こちらまでイッてしまいそうだ……』
「は……ぁぁ……っ!!!」
 びく、びくびく、と絶頂に震える雪乃を、快感は更に容赦なく舞い上げていった。
 私は休む事なく、雪乃の子宮を突き上げ続ける。一突き、また一突き──数度もしないうちに、新たな絶頂が雪乃の全身を襲っていた。

「あ……あぁ、ああぁ、あああっ、あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

『くっくっく……ははははは!!! まだだ、まだまだだぞ、雪乃……壊れるまでイき続けろ!!』
 絶頂の痙攣の間にも突き上げを続ける。雪乃はその快感に、もがき、苦しみ、絶頂の叫びも終らぬうちに次の絶頂を迎えていた。

「うあああああああっ!!!!! ああああああああああああっ!!!!! ああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

 目をカッと見開き、まるで拷問を受けているような苦痛に似た表情を浮かべたまま、雪乃は少女のものとは思えない絶叫を放っている。
『くくく、ははははは!!! それ、行くぞぉっ、おおおおおおおおおおおおっ!!!』
 私はそれを満足そうに眺めながら、彼女の子宮の入口に力の限りにぶちまけていた。
 どくん、どく、どく、ごぽ、ごぽぽ、びゅる、びゅるん……
 雪乃の小さな膣と子宮は私の精を受けとめきれず、膣口からは勢い良く精液が漏れ出していく。
 びゅる、びゅる、びゅるん……びゅるん……

 膣の中に満たされた精液は次第に染み込むように雪乃の膣壁に──魂に、溶け出していった。
「は……いって、はいってくるぅ……ごしゅじんさまが、ごしゅじんさまがぁぁ……あぁぁ……」
 自らの魂が侵蝕されていくのを、雪乃は陶然として受け入れていた。
「あぁ、あ……あぁぁぁ……ご、ごしゅじ……ん、さまぁ……ぁ…………」
『ははははは、ははははははははは!!!!!』
 イき狂いの果てに訪れた、天国にいるような満足感と脱力感に、雪乃は恍惚の思いと共に堕ちていった。



 ついに……ついに1階に降りる事ができた。
 私の積年の望み……女たちの赤裸々な姿が……とうとう、私の物となったのだ。
 まだ家の外に出る事は叶わなかったが、この分なら外で他の女を物色する事も可能かもしれない。私の心は躍っていた。

 雪乃が発したエナジーは大量だった。それを何度も何度も、思うが侭に飲み込んだ私は、霊体として更なる力をつけたらしい。
 だが、それを試すのも良いが──。

 扉を開き、浴室に続く脱衣室に現われた鈴穂を、私は食い入るように見つめていた。
 鈴穂は私に気付く事もなく、上着に手を掛けて服を脱いでいく。
 一枚、また一枚、生まれたままの姿を晒していく鈴穂……。
 最後の一枚に手を掛け、そのまま躊躇なく引き下ろし、薄いピンク色のワレメが私の前に現われた。
 縦線状のスリットがあるだけの、しかし少女特有のふっくらとした曲線を持ったクレヴァス……。

 ──まずは、こんな光景を堪能するのも悪くはない。
 私は忍び笑いを洩らしながら、浴室に入る鈴穂の後を追っていった。



 亡霊の住む家 9 に続く


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