作/石榴 舞
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二年ほど前、受験生の時にいくつかの神社へ合格祈願をしたのがきっかけで、磯崎千加子はあちこちの神社に参拝することをささやかな趣味にしていた。普段あまり目立つ事のない、どちらかといえばもの静かな性格の彼女ではあったが、その「ささやかな趣味」が高じて、日曜朝に放映される一時間枠の紀行番組に出演したことがあった。
たった一度きりのデビューであったが、テレビのブラウン管に現れた千加子にリスナーの目は釘付けになった。
ほっそりとした背の中程まで、手入れの行き届いたストレートヘアを伸ばした彼女の顔は、特に日の光に当たると肌の白さが一層際立ち、目鼻立ちが綺麗に研ぎすまされる。どきつくなるのではなく、むしろ控えめな彼女の性格が一層表情に浮き出て、とてもおちついた雰囲気をかもしだす。
だがそれとはうらはらに、千加子は挑発的なスレンダーボディの持ち主でもあった。ロケ用の衣裳として白いセーターを着せられた彼女の姿は、はからずも男性のリスナーの何人かをとりこにしてしまった。先端を斜前につんと尖らせた円錐型の、大きすぎず小さすぎない美乳の輪郭がくっきりと浮き上がっていたのである。
さらに線のきれいな細い脚を上品に動かして歩くさまや、工芸品を持つ手の細やかさなど、リスナーたちは彼女の美貌にすっかり魅せられていた。
おかげで千加子は神社に参拝する時によく声をかけられるようになった。彼女は信心深い美女として周りの人から目されるようになっていったのである。
そんな千加子が最近気になる神社があった。
話は去年の大晦日の夜に遡る。千加子は、山あいの片田舎にある神社へ初詣のためにスクーターで夜道を走っていた。その時、冬風に煽られて首に巻いていたマフラーが飛ばされてしまった。
マフラーは高く飛ばされて、道脇の雑木林の中に入ってしまった。夜の闇もあいまって非常に無気味な佇まいであった。だが幸いにも、さほど深く入らないところにマフラーが引っ掛かっていたので千加子は臆する事なく取りに入る事が出来た。
その時に彼女は林の奥に大きな社を見つけた。おどろおどろしい林の中で、見るからに建てたばかりのその社は不自然に荘厳なオーラを放っていた。
その社の正面で、巫女装束の女の人が提灯を片手に立っていた。千加子の目には巫女が何をしているのかよくわからなかったが、少なくともここが神社であるという確信だけは持てた。巫女はそのまま社の中に入ってしまったので、千加子もマフラーを巻き直してそのままその場を去り、初詣に向かった。
後日、千加子はその神社の名前を地図で調べたが、スクーターを止めた地点の近くに鳥居のマークはなかった。図書館に当たって低縮尺の地形図などをあたってみたが、やはりそこに神社の地図記号はなかった。しかし日の昇っている時にもう一度現地に行ってみると、確かに神社はある。あたりを散策すると、おざなりな造りではあったが参道に石畳が敷かれており、小振りな上にすっかり苔むしてはいるがしっかりした石造りの鳥居も見つける事が出来た。さらに、最近新しく設置したのか、花崗岩の白さが眩しい阿吽の狛犬が一対あり、境内には見るからに真新しい砂利が一面に敷き詰められている。これほどまでに存在感がありながら、地図に載っていないのが千加子には不思議でならなかった。
さらに不思議なことがある。神社の名前が分からない。普通本殿なり鳥居なりに名前の書かれた大きな表札がかかっているはずなのだが、そういったものが全くない。神社の人に聞けばいいのだろうが、この神社には社務所はなく、それ以前に人の気配は全くなかった。最初ここに来た時にいた巫女の姿すら、いつ行っても見つける事が出来ない。
近くの集落の人に聞いてみた。だが、帰ってきた答えは意外なものだった。
「へぇえ、そんな神社があるの?」
なんと、地元の人すら存在を知らないというのだ。
結局どれだけ千加子が頑張っても、神社の名前やあらましを知ることは出来なかった。
こうなったら最後の手段は一つだけであった。
――今度の初詣は、あの神社に行こう。
大晦日の夜、千加子は参道の入り口にスクーターを止めて神社に向かう。
参道は昼でさえ周りに鬱蒼と生えた雑木林のせいで、石畳に足を引っ掛けそうになるくらい薄暗いところである。だがこの日、鳥居にいたるところまでの間に明かり提灯が連なっていた。やはり初詣客のためなのだろうか?
しかし千加子以外に参拝客は一人もいなかった。参道を歩いて鳥居をくぐって境内に入り、社の前に来るまでの間、人影は全く見ていない。
それにも関わらず、社には紋入りの明かり提灯が両側に下げられ、青みを帯びた藁でできたしめ縄が飾り立てられている。御丁寧にも、漆塗のさい銭箱の横にはおみくじの箱が置かれている。貼られた短冊に筆文字で「お代はお心次第」と書かれていた。
平年より少しばかり暖かいとはいえ、冬である以上やはり寒い。千加子は白いセーターの上にコートを着込み、手には毛糸の手袋をはめ、枯木色のズボンを履いていた。だがたくさん着込んでいるのに、スレンダーな身体の線は全く損なわれることはなかった。挑発的な形をおびたバストに、自然な曲線の流れできれいにくびれたウエスト、きゅっとしまったヒップライン。服の上からでも裸体を想像できてしまいそうなコーディネーションは、いやらしいというよりは今風なデザインでもある。
ケータイの時計をみれば、まだ正午まで数十分ある。随分と早く着てしまった。千加子はただ寒さに身震いしながら待つほかない。
と、その時だ。
「あら、人がいらしてたのね」
ハスキーな声が不意に聞こえて、千加子は反射的に声のした方を向く。
あの時の巫女であった。拝殿のところから彼女は直接、千加子のいる場所に姿を見せた。
自分より一回り背の高い巫女に、千加子は多少なり威圧感を覚える。神職ならではの厳粛な雰囲気が彼女にはあった。
巫女は千加子を一瞥すると、切れ長の目を少しばかり見開いて驚きの表情を作った。
「あなた、磯崎千加子さん?」
「ええ、そうですが……」反射的に千加子は答えた。
と、巫女は途端に表情をほころばせた。
「あは、これはこれは、こんな名もない神社にあなたのような方が来るだなんて、夢にも思わなかったわ」
「……はくしっ!」
冷え込む空気に、千加子はくしゃみをしていっそう肩をすくませる。
すると巫女は思いもかけないことを勧めてきた。
「まぁ初詣にはまだ時間もあるし、中に入る? 大したおもてなしはできないけど、暖まっていって」
「そんな、いいんですか?」
「遠慮なんかしなくていいわよ。どうせ毎年この神社に人なんて来ないし」
「人なんて来ないし」という巫女の言葉に千加子は引っ掛かるものを感じたが、だからといっておもてなしを拒む気にはならなかった。何しろ外は寒すぎる。社の中を覗けば、畳の上に置かれた火鉢の中で炭が赤い光をともしているのが見える。この冷え込みの中、採暖の誘惑はあまりに強かった。
ブーツを脱ぎ、巫女にいざなわれるままに千加子は社の中へと案内される。火鉢の近くに正座すると、たちまち冷たい身体がじわじわ暖められていく。
火鉢の中でじわじわと燃える炭の上にかじかんだ手をかざす千加子のもとに、巫女が湯のみを運んできた。中には香ばしい匂いの湯気を放った甘酒が入っている。
「さあ、召し上がれ。米とこうじだけでつくった上等の甘酒よ」
「あ、ありがとうございます。ぜひぜひ……」
もともと甘い物好きな千加子は、遠慮一つせずに甘酒をすする。一口飲んだだけでも、身体の内からぽかぽかと暖まってくる。
「本当にありがとうございます、とても助かりました。ここまでスクーターで来たんで、身体すごく冷えきってたんです」
「いいのよ、ゆっくりくつろいでいって。正座なんかしなくても、少しくらい足をくずしてもバチなんか当たんないわ。甘酒もまだおかわりがあるから、遠慮なくどうぞ」
そう言って巫女はにこりと笑う。神職特有の威圧感が少しほぐれたような気がした。
巫女の言葉に甘えて女座りをすると、千加子は質問をぶつけてみた。
「そういえば、私この神社の名前しらないんです。境内のどこを探しても名前は書いてないし、図書館に行ったりして調べてもなしのつぶてで……」
「そうなのよね……昔からあるんだけど、いろいろ事情があって名前を公表していないのよ」
巫女は自分の湯のみに入った甘酒に口をつけて、一息おく。
「ここは石榴神社というの。変な名前でしょ? だって石榴ってもともと日本古来の植物じゃないんだから。それにこの境内周辺探しても石榴の木なんてないし」
千加子の湯飲みが空になっているのを見て、巫女は甘酒をもう一杯注ぐ。
「史料も散逸しちゃって、由来もわからずじまいなの。伝わっているのは御神体だけ」
「どんな神様が祭られているんですか?」
その質問をする時、千加子は無意識に身を乗り出していた。実際それは神社巡りをする上での関心事でもある。温泉好きが泉質や効能を気にしたり、酒飲みが産地や種類を気にするのと似たようなものである。
だが巫女は少しばかり口籠る。
「……うーん、一応縁結びと子宝と安産の神様なんだけど」
「そうなんですかぁ。じゃあやっぱりそういうお守りとか売ってるんですか?」
「ううん、そういうのはうちはやってないの。そういうことをするところじゃないから、ここは」
またも巫女はひっかかるような事を言う。だが千加子は突っ込むことはせずにそのまま聞き流した。何しろこの神社には、他にも気になることが沢山あり過ぎるのだ。
「ここに来るまで全く人に会わなかったんですが、毎年こんなふうなんですか?」
「そうなのよねぇ……、他の神社は小さいところでも多少は人が来るものなんだけど。でも今回は恐らくたくさん人が来ると思うわ」
「え、どういうことですか、それ?」
「今度の初詣、特別なものになりそうだから」
そう言ったあと、巫女はまじまじと千加子の顔を見つめた。
「え、え? どうしたんですか?」
巫女の視線に普通でないものを感じて千加子は戸惑いを見せる。だが巫女は何かを思い出したかのようにすっと立ち上がった。
「そうだ、せっかくだからお餅でもどう? いくらなんでも、甘酒だけだと寂しいでしょうし」
「いや、もういいですよ」
「そんな遠慮しなくていいの」
すたすたと巫女は社の奥へ行ってしまった。
と、千加子の耳に除夜の鐘の音が聞こえた。
(……あれ?)
ケータイの時計を見てみると、なんと日付けが変わっていた。
ひょっとして、巫女は気付いていないのだろうか? そんなわけはないだろう、除夜の鐘の音はそんなに遠くの物でもないし、仮に聞こえなかったとしても、初詣を迎える以上はちゃんと時間を把握しているはずだ。
だが巫女は一向にもどってくる気配を見せない。
境内はさっきのまま、どっと人が押し寄せてくるどころか、しんと静まりかえっている。
奇妙な光景であった。それは千加子の知っている初詣の様相とは随分とかけ離れていた。あたりはしんと静まり返り、巫女は正午を過ぎてさえひどく悠長である。それが、年を越した実感をすっかり皆無にさせていた。
(やっぱり教えたほうがいいのかな?)
むしろこのまま黙っていては、ただただ時間が無駄に流れていってしまうのではないだろうかという不安が強かった。声が奥に届くように、千加子は一旦大きく息を吸う。そしてそのまま大声で巫女を呼ぼうとした。
が、声を出す前に千加子は軽いめまいを覚えた。
(あ……れ?)
そのまま崩れるように畳の上に上半身を横たえてしまう。
甘酒で身体の内側から暖まっていく感覚がそのまま行き過ぎて、ひどく熱っぽく感じられた。助けを呼ぼうにも、何だか舌が重く、喉がかすれるような感じがあった。泥酔した感じに似てなくもないが、不思議と吐き気はなかった。
焦点がうまく定まらない千加子の視界に、巫女が映る。
あきらかに普通の状況ではない千加子の姿を見て、巫女は心配するどころか、どういうわけか満足そうな笑みを浮かべて千加子を見つめていた。
「今回の初詣は特別」と言っていた時と同じ視線であった。
(そんな……、こんな……)
はめられた!――それは理解できた。飲んだ甘酒に、痺れ薬か何かを仕込まれていたのだ。だがそれ以上の事を理解しようにも、奇妙な熱にのぼせた頭はうまいこと回転しない。
「服を脱いで楽な格好になれば、気分が楽になるわ」
曰くありげな笑みを浮かべながらの巫女の言葉には、それ以上の含蓄があるように思えた。
巫女の手が、上着を脱がし、セーターを脱がしていく。下に着ていた長袖のブラウスのボタンを全て外すと、うす緑のブラジャーとほんのり赤く上気した身体の肌がはだける。さらにベルトをゆるめてズボンのボタンを外すと、真ん中に小さなリボンを配した、これもうす緑のパンティが顔を見せた。
「あら、かわいい下着はいているじゃない。もっとよく見せてくれないかしら?」
だが千加子の許しを聞くわけでもなく、巫女はそのままズボンを脱がしてしまった。
「あ……ぁ、いや……」
両手をズボンに伸ばしても、妙な熱にうかされている今は、それ以上抗うことは困難であった。すっかりズボンを脱がされたあとに、両手で股ぐらを隠すようにして身を縮こまらせるのがやっとであった。
しかしそれだけで終わらなかった。巫女はさらに靴下を脱がしたあと、千加子の右脚を両手に抱えるように持って頬擦りをしたのだ。
「きれいな脚だわ。ちゃんと手入れも行き届いているし」
実際巫女の言う通り、千加子の脚線は見事というべきであった。テレビに出演していた時に見せた上品な歩き方に見合った、細く引き締まったふくらはぎと太もも。だが太ももは、見た目の割にはむっちりと柔らかい。巫女も白い頬でそれを感じ取るやすっかり気に入ったらしく、内股のあたりに顔をうずめて、閉じた唇ですっと線を引くようにくすぐる。
「あぁ……やめて……くださいぃ」
うわついたかすれ声で訴える千加子であったが、
「そんな声で言われても説得力がないわ。気分が楽になるばかりか、むしろ気持ちよくなってるんでしょ?」
「ち、……ちがいま……す……っ」
すっかり巫女に弄ばれるがままであった。頬擦りをやめたかと思うと、巫女は自分の舌を千加子の足裏に伸ばして、ぺちゃぺちゃ音をたててくすぐるように舐め回し始めた。
「は、あ……うぁ……! やめて……くすぐっ……た」
足指の一本一本を口に入れてしゃぶり、指の間にまで舌先を入れてちろちろと舐める。柔らかい舌のくすぐったい感触が、執拗に責められるにつれて、身体の奥を痺れさせるような、快くもどこかもどかしい感覚に変わっていく。
「あ、ああ……んああっ……」
もどかしさがたまらない。千加子は両腕で顔を覆ってはけ口を求めるように喘ぎの息を漏らす。
足裏が巫女の唾液でべたべたになったところでようやく舌が離れる。だが、千加子は余韻をたどるかのように右足をもそもそと動かす。
「あらあら大変、すっかり顔が赤くなってるじゃない! どんどん脱がさないと」
今度は千加子の身体に覆い被さると、巫女はブラウスを脱がしにかかった。
「やめ、……あぁ、やめてください……!」
「駄目。脱がないと熱が下がらないわ」
背筋をくねくねとうねらせて抵抗する千加子であったが、巫女の手の力はそれ以上であった。たちまち丸みをおびた肩がはだけ、千加子はすっかり下着姿になってしまった。巫女は彼女の両胸を背中越しに鷲掴みにした。
「やっ! あ……」
「これが男性リスナーで噂になってる千加子さん御自慢のおっぱいね。なるほど、確かに先っちょがツンツンしてるわね」
ブラジャーの上からぐにぐにと乳房を揉みしだきながら、人さし指をその頂きに強くねじ込んでいく。その攻撃的な指の動きが、鈍い痛みと共にむずがゆい奇妙な感覚を千加子の乳肉の中に沸き起こらせる。
「うんっ、……うんっあ、あー、やぁあっ!」
「あら、なんだかどんどん先っちょが固くなってるわよ? 心配だわ、ちょっと見せてごらん?」
巫女はおもむろに左のブラジャーのカップをひん向いた。
「あぁっ、いやっ、いやぁーっ!」
千加子の乳房がぽろりとこぼれ、乳首は障害物をなくしたことで、硬くしこって前斜め上に勃った自分の存在を主張していた。
「……ここまでひどいとは思わなかったわ。千加子さんすっかり熱にうかされちゃってるじゃない」
言いつつ、巫女は出る杭を打たんばかりに人さし指の腹で千加子の左乳首を執拗に往復ビンタする。
「や、あ、あ、あ、あー、あーっ!」
悲鳴をあげる千加子の声には、たまらなさそうな響きがあった。
その隙を狙って、巫女はブラジャーのホックを外してしまった。
「あのおっぱいの形、ブラジャーで矯正してるのかと思ったらそういうわけでもなさそうね。なるほど、千加子さんったらテレビ出演してる時もピンピンに乳首を尖らせていたのね」
「ああっ! そんな……ちがう、ちがいますっ!」
すっかり勃起した千加子の両乳首は、左右互いに背いたように斜め上に向いていた。乳房はその乳首を軸にして挑発的な円錐型を形作っているように見える。
人さし指で乳首を乳肉の中に強く押し込み、巫女はブラジャー越しのときよりも激しく千加子の乳首を揉みしだく。硬くしこったことで敏感になった乳首を直に虐められる痛くくすぐったい感覚はもちろんの事だが、なにより乳房を荒々しく揉まれているさまが視覚的にたまらなかった。千加子は何度も目をそむけようと努力するが、乳首の責めがそれを妨げる。両手で払いのけようにも、これほどまで敏感な部分を執拗に責められては力が出ない。
「ふんぅ……ん……ぅう……あーっ……ぁあっ!」
弱々しくも必死に喘ぐものだから、千加子の息は絶え絶えになる。
「へぇ、そんなに胸が感じるんだ。性感帯っていうの? こんなんだったらブラジャー着けてるだけでも乳首ピンピンになっちゃうわよね」
「そんな、そんなことない……ない……、んうっ、うぅ」
首を横に振って肩をすくませ、腰をきゅっと引き気味にして、乱暴な巫女の色責めに耐えようとする千加子。唇を噛んで、自分のいやらしい喘ぎ声をかみ殺す。
巫女は一旦ぱっと手を離して揉みしだくのをやめた。
「っあ、んやっ」
ようやく色責めが終わったというのに、巫女の手が乳房から離れた途端、不満げな声を上げた。
再び巫女は、下からすくいあげるように千加子の両乳を両手のひらで優しく包み込むと、撫で回すように優しく揉む。そして口を彼女の耳もとにもっていってそっと囁いた。
「やめてほしくなかったの?」
途端に千加子の目が羞恥で大きく見開かれた。
図星だった。突然手を止められた時、千加子は身体に渦巻き始めた快楽の行きどころを失って一瞬途方に暮れたのだ。乳首を中心にじんじんと、もどかしい快楽に疼く自分の両乳を、自分の手で揉みしだいて慰めたい気持ちすら頭によぎっていたのだ。
何も言われなければ隠し通せたことだった。だが、不意に漏れた声で巫女に自分の気持ちがばれてしまった。
「ああ……ちが、違います……!」
「違わないわ。それが証拠に、今こうやっておっぱいなでなでしてると、千加子さんすごく気持ち良さそう」
巫女の右手が乳房から離れた。左手で片乳を揉みながら、巫女は千加子の身体の中心線を指でたどり、パンツのゴムに引っ掛かると思いきり引き下げ始めた。
「ひ、っいやっ! 何するんですか!」
反射的に千加子は両手でパンツを引っ張りあげようとする。だが、うまいこと力が入らない現状では、その行動も全く無駄であった。
かくして千加子の薄緑のパンツはちからづくで引き裂かれてしまう。
完全に千加子は、細く華奢な白い裸身をさらされてしまった。
「い、いやぁ……いやぁあ!」
パンツを引き裂いたあとも巫女は手を止めない。左手も胸から離すと、巫女は千加子の下半身側に回る。
千加子の両膝に手をかけると、おもむろに巫女が両脚を力で押し広げた。
「や、やああああああああああああ!」
縦割れの深い臍穴の下、なだらかな下腹部の集中点を目で負うと、黒いちぢれ毛の茂みに覆われた部分に行き着く。それが巫女に大股を開かれて、ぱっくりと鮮やかなサーモンピンクに染まった秘肉の割れ目をあらわにしてしまう。
熟れきった花びらのように開いた肉襞の奥、恥じらいにひくひくひきつる穴はじっとりと湿り気を帯びているようであった。濃厚な牝の香りと生暖かい子宮の息が、その穴から漏れてくる。
「あなた、ここがどこなのかわかってるの? こんな神聖なところでこんなにいやらしく――」
「――ひっ、あっん!」
千加子の背筋がびくんと跳ね上がる。唐突に入ってきた巫女の指の感触が、身体の奥へダイレクトに響く。
「――こんなにベトベトに濡らしちゃって!」
千加子の目の前で、巫女は人さし指と親指を引っ付けたり離したりして、彼女の体液がねっとり糸を引くのを見せつけた。
千加子の膣からとろとろと沸き出した愛液がねちゃねちゃ音を立てて糸を引くのを、本人にしっかりと見せつける。
「あ、あ……いや、いやぁあ……!」
首を横に振り続けてはいても、その声はすっかり力をなくしてしまっていた。自分の痴態をはっきり見せつけられて、千加子はすっかり混乱してしまっていた。
目に涙すら溜める千加子に、巫女は澄ました顔でこう言ってのけた。
「このまま帰すわけにはいかないわ。神様に許しを乞いなさい」
千加子に有無を言わせず、巫女は彼女の腕を抱えてひきずるように本殿に連れていく。
「さあ、ほら!」
巫女に引っ張られるまま、全く千加子は歩こうとしない。もともと身体に力が入らなかったし、それ以上に、もうショッキングなことをされたくなかった。だから、完全にぐったりと身体に力を抜いて動こうとしなかった。
しかしそれでも巫女は、ずりずりと全裸の千加子をひきずっていく。
「さっきのですっかり色ボケしちゃったのかしら? だったらなおさら神様の前でしっかり懺悔してもらわないとね」
そうこう言いながら、ようやく巫女は千加子を祭壇の前に連れてきた。
虚ろな目で千加子は祭壇を見やる――と、その中央にしっかり鎮座した物体を見て思わず脊髄に戦慄の電撃が駆け巡った。
おおよそ一メートルはあるだろうか? 下側にしめ縄が巻かれたそれは、千加子の腕の太さほどもあるだろう木製の偶像であった。
天井に向けて肉感のある切っ先を鈍く尖らせて屹立する、木製の男根。根元にはちゃんと大きな睾丸が二つ模してある。
両側に配した2本の蝋燭に照らされて、男根の偶像はまがまがしく輝いている。
「あ……あぁ……」
「これが石榴神社の御神体よ。万物を産む源に当たる、どんな神様よりも尊い存在。素敵でしょう?」
横になったまま、千加子は身体を丸くして、両手で股ぐらを隠す。その行動は本能的な自己防衛反応であった。
巫女は、祭壇に乗せてあったすり鉢を手に取ると、また千加子の下半身に回る。片脚を肩に担ぐようにして持つと、彼女はそのすり鉢の中からあるものを取り出した。
「や……ひっ、何、何?」
「これ? これはね、千加子さんの本性をすっかりあらわにしちゃうお薬よ」
「や、あぁっ、お願い、もう股はやめて!」
「今は嫌がっていても、後になればきっともっと塗りたくってってアソコピクピクしてせがむようになるわ」
千加子は愛液でしっとり濡れた秘裂の襞にねばっこい感触を覚えた。
愛液以上に粘り気をもったその物体は、細く尖らせるように削った山芋のかけらであった。
山芋の粘り気は、最初ひんやりした感触であるが、後からじわじわとかゆみをもたらす。そのかゆみも、指で撫でられただけでも身体を弾ませてしまうくらいに敏感で繊細な性器の粘膜ともなればすさまじい。
たちまち千加子は腰を悩ましくも激しくくなくなゆすって悲鳴をあげる。
「あ……かゆ……い、かゆい……いやぁ、かゆいぃ!」
「あらあら、千加子さんのアソコ、山芋以外のおつゆでどんどん濡れてきているわよ」
「ああぁぁはあぁ! もういやぁあ! 洗って! 山芋のヌルヌル、洗い流してっ!」
すると、巫女は千加子の言う通りに秘裂にまとわりついた山芋の粘り気を洗い流した。
すり鉢の中に入っていた大量のおろし山芋で。
「ひやぁあああっ!」
肉襞にからみつく、ひんやりとした冷たい感触。それはやがて耐え難いかゆみとなって、おんなのクレヴァスの奥へ奥へと進んでチリチリ犯していく。
「かゆいっ、かゆいぃぃ、ああ、もういやぁ!」
巫女が肩に担いでいた脚を離してやると、千加子は山芋でねばついたまたぐらに両手を持っていく。そのまま、うずくまった姿勢で秘襞にからまる山芋の粘り気をぬぐい取ろうとする。だが、媚肉の割れ目に指を深く入れてねちゃぺちゃ音を立ててまさぐるその様子は――。
「オナニーしてるの?」
そう巫女に言われて、千加子ははっと我に返る。
「ああ、そんな……ど、どうしたらいいの、どうしたら……」
股から手を離して、千加子は正座の状態で尻をもぞもぞくねらせながら巫女に救いを求める視線を向ける。
なす術なく、ただ膣の入り口まで入り込んできたかゆみに腰と背筋をうねうねとくねらせて途方に暮れる千加子に、巫女はさらに責め苦をくわえる。
慰めることもできずに所在をなくした彼女の両手を、肩ごしに後ろ手で縛り上げてしまったのだ。力が入らない両腕を、紅白の絹紐を結わえて作った縄で縛り上げるのは、赤子の手をひねるより簡単であった。
手や腕の自由を奪われたばかりでなく、腋の下をノーガードにされた千加子は、早速山芋の粘り気のついた手でくすぐられる。
「ひゃひっ、は、はひっ、あ、あはは、あ、ああぁー!」
だらしなく表情を弛緩させ、千加子はだらしなく口を開いて笑わされる。口角から涎が垂れて首筋を伝う。
「そぉら、だんだん千加子さんの本性が現れ始めたわ。色狂いの変態な本性が、ね」
「そ……あ、ひゃは、はははあぁ、ぁははははは!」
もう反論すらできないくらいに、徹底的にくすぐり倒される。笑い声がしゃっくりあげるような艶かしい喘ぎになり、すっかり乳首を尖らせた乳房が胸呼吸で迫ったり引っ込んだりのダイナミックな動きを見せる。
「じゃ、神様へのお祈りの仕方を教えてあげるわ。さあ、立ちなさい」
巫女は千加子を無理矢理立たせる。いまいち力の入らない脚と股間のもどかしいかゆみのせいでよろめく彼女をなんとか支えつつ、巫女は千加子の右膝を抱え上げて大きく股を開かせた。
物凄く恥ずかしい姿であった。立ったまま股間をひけらかすような格好を、しかも同性の人間に強制的にさせられているのだ。そんな自分の姿を受け入れることなど、千加子にはできない。
(ああいやぁ、もう許して……おねがいだからもう――)
「さあ、このいやらしいアソコの奥を神様に見てもらいなさい!」
その言葉と一緒に、巫女は抱えていた千加子の右脚をぱっと離す。バランスを崩してふらりと右側に倒れる先に、男根偶像の黒光りする先端が、山芋の粘り気と愛液でぬめり切った千加子のクレヴァスを覗き込んでいた。
そのまま、御神体は千加子の肉襞に顔を埋めた。
「あ、ぎ……いぁぁ、ぁ……」
とてもきつい。御神体の頭、カリの部分の二分の一で引っ掛かってしまった。地面に脚のつかない右足指をぴくぴく引きつらせて、千加子は苦しそうな表情を浮かべる。
「神様にすっかり身を任せないからよ。さあほら、もっと重心を右に――」
巫女がぽんと千加子の身体を右に押した時だった。
「っはぐぁぁあああああ!」
肉がちぎれたような鈍い音がしたかと思うと、千加子の肉裂はそのまま御神体のカリをすっかり飲み込んでしまった。つつーっと赤い血がこぼれ、内股を伝う。
「ああぁあ……いた……い……、ああぁ……」
あまりの痛さに顔をゆがめる千加子に対して、巫女は色めき立ったように目を大きく見開いた。
「うそぉ、千加子さんって処女だったんだぁ! でもそれはそれで本当によかったわね。ロストバージンのお相手は神様だものね」
何も容赦しなかった。巫女は千加子のウエストに抱きついてそのまま体重をかけていく。
「ああ……あがあああ……」
メリメリと陰唇が裂けてしまうのではないかと千加子は思った。だが、巫女に体重をかけられればかけられるほど、彼女の膣肉はゆっくりと、しかし貪欲にもさらに御神体を飲み込んでいく。
ほとんどつま先立ちだった足は床にぴったりつくようになり、千加子の目線がどんどん低くなっていく。今度はがに股になってしゃがみ込んでしまった。
ひどい痛みに耐えながらふと千加子が自分の股間に目をやったとき、彼女はとんでもない光景を見る。
「あ……うああ……」
(そんな……あんなに大きなものが――!)
太いものを飲み込んだことへの驚愕ではない。長いものをほぼ中間まで飲み込んだことに、千加子は驚いたのだ。
中間でさえ、そこまでの長さは五十センチに達する。どんな名器であっても普通に考えれば飲み込むことなどできやしない。だが信じられないことに、千加子の膣肉はその長さを深々と頬張っていたのだ。しかも腕ほどの太さのものを、である。
下腹部にぼっこりと、御神体の形が盛り上がっている。
(私の身体……壊れちゃったの?)
自分の身体の驚異的な光景を前に、千加子は痛みすら忘れてしまいそうになる。
だが、巫女はそうさせなかった。
「じっとしてないで、ちゃんと神様に御奉仕しなさい!」
自らもしゃがみこんで、両腕で千加子のウエストに抱きつくと、体重をかけつつ前後に揺さぶりをかけ始めた。
「ひぃ、ぃや、や――あ、あがあぁ……」
忘れかけていた破瓜の痛みと張り詰めた膣肉の悲鳴が千加子に甦る。しかしなす術なく、ただ苦悶の声をあげるだけの千加子。しかしその揺さぶりで、千加子の淫裂はさらに御神体を頬張っていく。
「うあぁ……あがああぁ……!」
(ああ、裂けちゃう……ダメになっちゃうぅ!)
張り詰めた痛みを少しでもやわらげようと、千加子は苦しげに大きく口を開く。涎がだらしなく垂れていくのすら気がつかないほどに、彼女の膣肉は張り詰めていた。
御神体は30センチほどを残してすっかり千加子の媚肉の中におさまってしまっていた。彼女自身も、相撲のそんきょに近い、カエル飛びのような姿をとっていた。
そんなになってさえ、巫女はさらに体重をかけて千加子の腰を前後左右、はては円を描くように揺さぶる。
と、千加子の中で御神体がおかしな動きをした。胴体をびくんびくんと脈打つようにひくつかせ、上に上に突き上げるような動きであった。
(何……この感触……)
はりつめるような膣肉の痛みが、その御神体の動きによってゆっくりと別のものになっていくのを、千加子はじわりじわりと感じていた。
(ああぁ、そんな、そんな――!)
そんなこと、信じられなかった。まるで偶像が勝手に動いて、子宮目掛けて突き回しているようではないか!
柔らかい膣壁をその太い胴体でえぐりながら、男を知らなかった千加子の小さな子宮を激しく揺さぶる。
(ああ、たまらない――!)
すっかり御神体のなすがままであった。子宮を、果ては身体も上下に揺さぶられながら、千加子は脳天を貫く快楽のスパークに身を許していく。オナニーですらまだ達したことのない絶頂の領域に繋がる階段に、彼女は一歩足を掛けたのだ。
そうなってしまえば、なにもかもが快楽に変わっていく。破瓜の痛みも、はりつめた膣肉の痛みも、神様への御奉仕の犠牲と思えば、マゾヒスティックに快楽として受け入れられた。これまでになく乳首を尖らせながら、御神体の揺さぶりにぷるんぷるんと弾む乳房さえ、とてもかわいらしく思えた。
「……すごく気持ちよさそうね」
(ああ、そうですぅ、私、すごくイイですぅぅ――!)
巫女の言葉も、今の千加子には祝福に聞こえた。
「ようやく自分を受け入れられたのね」
(そうです、私、神様の前でこれだけ快楽に正直になれました。あああっ! 巫女さんのおかげ、巫女さんのおかげですぅぅ!)
巫女はまだしっかりと千加子のウエストを抱きしめていた。それですら彼女は嬉しくてたまらなかった。――この人は神様とまぐわうこの私をいまわのときまで見届けてくれるんだ。見て! ずっと私を見ていて――!
だが。
巫女はぼそりと一言吐いた。
「……いやらしく自分から腰振っちゃって」
(――え?)
千加子はそこで初めて、自分みずから痴態を見せていたことに気付いたのだ。
御神体は結局偶像のままであった。千加子は自分から、がに股に開いた脚をビクンビクンはずませて、御神体で貫いた腰を激しく上下に揺さぶっていたのだ。
それまで抱いていた奇跡の幸福感はすっかり蒸散してしまった。そのあとに残ったのは、地獄のような狂おしい快楽だけであった。
腰は止まらなかった。止めることができなかった。千加子の痴態が明らかになってしまった今でさえ、彼女は快楽の階段をどんどん登っていたのだ。
「もう私の手助けはいらないようね」
巫女の腕が、千加子のウエストから離れていく。
(ああ、いや、一人にしないで!)
だがその寂しささえ、千加子の中ではマゾヒスティックな快楽に変わってしまう。
今や彼女は肉の悦楽を貪るだけの存在になり果ててしまった。行き着くところは一つ、まだ体験したことのない絶頂の世界のみ。
しかしそれは、あまりにみじめであった。だがもう身体の中で激しくうごめき続ける快楽の渦を止めることなど、出来なかった。
「ああっ、あああっ、ひっ」
「イクときはちゃんと『イク』っていうのよ、千加子さん」
「はひぃ、イキますぅ、イク、イク、あふ……」
自ら腰を揺さぶりながら、千加子はなまめかしい声をあげる。
「あっ、あっ、ああぁーっ!」
ずん、と最後の一突きで、千加子の意識はすっと薄らいだ。
淫唇に突き刺した御神体ごと、千加子は床に倒れてしまった。
アクメに達した千加子の姿を見届けると、巫女は懐からケータイを取り出すと、誰かに電話をかけた。
「あ、もしもし、どうも、私です……ええ、石榴神社の初詣の準備できましたよー……ええ、ええ、もう何年ぶりになるんですかねぇ。……はい、はい、みなさん呼んで来て下さいね。……ええと、磯崎千加子さんです。二十歳過ぎですね。……そうそう! あのテレビに出てた人です……」
そんなことをいろいろ話して、巫女は電話を切った。
そして千加子の耳もとで囁いた。
「うふふ、おめでとう。あなたは当石榴神社の特別な存在になったわ。御神体としっかり繋がったあなたの姿、みんなに見てもらえるのよ。手を合わしてね。いいわよね、自分の恥ずかしい姿を祝福してもらえるなんて」
ようやく戻り始めた意識の中で、千加子は想像する。大股を開いて、あの大きな御神体を飲み込んだ自分の淫裂を見て、沢山の老若男女が手を合わせ、いやらしい言葉とさい銭を投げる姿を。それは千加子にとって、最高の色責めになるだろう。
愛液でぬらめく御神体をくわえこんだまま、千加子は淫裂をぴくりとヒクつかせてみせた。