結城彩雨モノ第四弾もテキスト付きでしかも年賀状です! 有り難い事ですね(私は自分のミスでこんな嬉しい事にありついてもいいのでしょうか?)
「黒の年賀状」 〜森下慶子 後日談〜

 2002年1月16日。この日、日本でもっともタチの悪い医者の一人、
氷室は悩みに悩んで親友の偽医者・鬼頭に相談をしていた。
「…ああ…、見たいなァ。横沢老人の所有する名画“聖少女と馬”…」
「今更、言っても始まらんだろう。年始の挨拶の時期は終っているんだぞ」

 戦後日本における「闇の王」こと横沢老人。新年の挨拶で横沢邸を訪れた者だけに、老人は名画“聖少女と馬”を披露していたのだが、うかつにも氷室はその時期を逸してしまったのだ。

「なんとかならないかなぁ。……そうだッ。俺達の自慢の奴隷、慶子を土産に今からでも横沢邸を訪問しよう」
「……やめとけ。あのキチ○イジジイに実物を見せたら、その場で解剖されかねん」
 横沢老人には異常性癖があり、気に入った女性はことごとく生体解剖してしまう。老人の毒牙にかかり、未だに生存しているのは極上の牝奴隷、市村弘子だけである。彼女だけは特別に気に入られ、数年に渡って横沢研究所で生かされているが、弘子本人にとってはまた別の地獄であろう。

「慶子本人を連れて行くのはマズイか…」
「…っていうか、氷室。お前、横沢老人に年賀状すら出していないそうだな」
「だって、あのジジイと仲良くすると、慶子を取られそうだもん」
「……で、今更 名画は見たいってか? お前、死ね」
 いい大人の、悲しくなるような間抜けな会話は氷室の携帯の着メロで中断された。電話に出る氷室の耳に、陽気な黒人の声が響いた。
「ハーイ、どくたー氷室。俺ダヨ、ぼぶ様ダ。イツニナッタラ慶子ヲ抱カセテクレルンダイ?」

 横沢老人のお抱え黒人調教師ボブの声は、この時の氷室にとっては神の声。
「おお、ナイスタイミングだ、Mrボブ。今ちょうど、君に相談したいことで悩んでいたんだ。…実は……」
「……フムフム。ソウダナ、俺様ニイイ“あいであ”ガアル」

 ボブが氷室医師に提案したアイデアは以下だった。
…横沢老人の家に訪問するからには土産が必要だ。また、今からでも年賀状は出したほうがいい。よって、両方の条件を満たすべく、“年賀ビデオ”を届けてはいかがだろうか。…慶子を使って撮影した、極上のビデオを…。

「俺様モ、一肌ヌグゼ。仲間ヲ連レテ行クカラ、慶子ヲ用意シトキナ」
 …との、ボブの言葉に氷室が慶子を呼び出して、さらに待つこと3時間。
玄関のチャイムが鳴り、胸をときめかせて出迎えた氷室は扉を開けた瞬間、
腰を抜かしそうになった。
 玄関前には、ボブをはじめとして20人近い黒人がドヤドヤと並んでいたのである。白い歯を見せて、ボブが爽やかに笑っていった。
「愛シノ慶子医師ノタメダ。豪勢ニ、イコウジャナイカ」

 慶子のショー専用に増築した広いホールが、瞬く間に密集状態になる。怒張をたぎらせ、熱い息を吐く黒い獣達に囲まれ、慶子は絶叫した。
「いっやあぁぁああああああッ。…誰がッ、誰が黒人なんかとッ!」
「こんな人数で慶子を嬲る気ッ!? やっぱり黒人はケダモノだわッ」
「…さ、触らないでッ。こッ、この黒んぼッ……、嫌よ、イヤァアッ」

 ……恐怖で錯乱した慶子は、自分が思いっきり差別発言をしていることに気がつかない。ニコヤカだった黒人の多くが、みるみるうちに黒い顔を真っ赤にさせていく。
「……聞イタカヨ、コノ牝豚ノ言葉」
「オオ、モウ容赦シネェ。手加減ナシデ、教育シテヤロウジャネェカ」

 プロレスラーのような体躯の一人がつかつかと慶子に歩み寄る。
「………なッ、なによッ。私は、絶対にあなた達なんかと………ぐえッ!?」
 ドスッ、とくもぐった響きとともに慶子はみぞおちを抱えてうずくまっていた。容赦ない蹴りをくらって動けなくなる慶子を、引き起こし黒人達が服を剥ぎ取っていく。
「ッ……、女に暴力を振るうなんて…黒人は最低……ぐぎゃぁあッッ!?」
 いきなり黒人の一人が肛門に巨大なペニスをぶち込む。メリメリと音を立てて
突き刺ささり、進入する異物による激痛が慶子から言葉を奪う。

「……あ……あが……、あぐ……あごぉ……ぉおお……」
 “女を黙らせるには、これが一番だぜ”とばかりに腰をゆする黒人とは裏腹に慶子は、涎をダラダラと流して口をぱくぱくさせる。
「……おぶぅッ」
 開いた慶子の口に、顎もはずれよとばかりに一際大きな怒張がぶち込まれる。顎の激痛と窒息感で白眼をむく慶子を嘲笑うかのように、口に挿入された肉の凶器は、時には食道にまで深く刺さって挿入を繰り返す。
「ヘヘ、膣ヤ肛門トハ違ッタ締マリダゼ」

 早くも全身を汗だくにして苦しむ慶子の白い背中を、黒い棍棒が叩いた。
「ヘイ、慶子。肝心ノトコロガ、オ留守デ寂シイダロウ」
 目の前に出されたソレを見て、慶子は恐怖した。馬並なんてものではない。
30センチ近いものが、ペニスであることを認識するまで慶子は数秒を要した。まさか、それを。……入れるというのか……。
(……う、嘘ッ!? うそ うそ うそ うそッ。嘘ぉおおおッ)
 口をふさがれ、声にならない絶叫をあげる慶子に、軽くウィンクしてボブは秘奥にそれをあてがう。……………………メキッ……。

 全身を砕くような音を、確かに慶子は聞いた。それから後のことは覚えていない。ただ、発狂しそうな激痛を官能的な喜びに変えることで、肉体が必死で自分を守ってくれているのだけはわかった。
 …ほとんど、意識はないのに妙に周囲の声が頭に響く…

「オイオイ、コノ牝、自分カラ腰ヲ振リ出シタゼ」
「見ロヨ、コノ阿呆ヅラ。鼻水マデ垂ラシテ、悦ンデヤガル」

 ……慶子が意識を取り戻した時。彼女の目の前にはビデオカメラがあった。
自分の姿がレンズに移る。
 ポタポタと白濁した液を垂らして、髪からつま先まで全身を真っ白に染めて、必死に教えられた言葉を並べている自分の姿が。

「………年賀の…挨拶が……遅れ…へ……申ひ訳…ありま……せ……」
「……慶子…、…黒人ろ……皆様の…チンポ…好きぃ……」
「…変態な……慶子の…ビデオ……楽し……んれ……横沢さ…ま……」

 彼女はまだ知らなかった。名画と引き換えに、横沢に手渡される自分の運命を。そして、自分を迎える恐るべき実験の数々を。

 ……未来を知ることの出来ない幸せとともに、彼女はレンズの前で精一杯、
媚びた表情で笑っていた……。