一緒に一話も送って来てくれているところが嬉しいですね……動きのあるイラストが素敵です |
「狂虐の研究所 第1話」 薄寒い照明が、かろうじてその部屋を“暗闇”ではなく“暗がり”に していた。目をこらせば、部屋が異質な場所であることにすぐに気づくだろう。 床と壁は剥き出しのコンクリート。 窓は無く、頑丈そうな扉に鉄格子が一つあるだけ。 天井と壁に打ちつけられ、下がっている数条の鎖と鉄輪。 …牢獄と呼ぶすら、はばかりたくなるその部屋の名は。 「横沢研究所 地下3階R16号 実験体高村夏子飼育室」 凄惨な輪姦が繰り広げられていた。数人の屈強な男達が一人の女性を囲み、欲望を叩きつけていた。一昼夜以上にわたっての陵辱。女は何度も失神を繰り返したが、そのたびに無理やり起こされては、続きを強いられる。 「…ア… ……あア… …うァ…」 もはや、あえぎ声とも呻き声ともつかぬか細い反応が、ますます男達の嗜虐心をあおり、行為の激しさをエスカレートさせていく。 ヌラヌラと汗にまみれ、闇の中で妖しく踊る白い肢体を満足そうに扉の外から鉄格子ごしに眺めて、老人は笑った。 「クククク…、良い買い物をしたワイ…。高村夏子、29歳…。この程度の責めなど序の口じゃ。…これから、どんな実験をしてやろうか…?」 老人の傍らに立つ秘書の沼田は眉をひそめた。 「…御前、お言葉ですが。買ったのではなく、借りているのですよ。あまり 過激なことをされて傷物にしては、戸塚様にどう答えるのです?」 老人はまったく意にかいさず、平然と嘘ぶいた。 「フン、儂のトコロにいる間は儂のモノじゃい。…仮に傷物に…、いや、殺してしまったところで一介の庶民が何をもって儂に抗議できるというのか」 秘書・沼田は半分は首肯せざるをえない。そう、この老人・横沢は圧倒的な権力と暴力をもって君臨する王なのだ。 都内に広大な敷地を構える横沢生体研究所。戦後の医療分野・生物学に多大な貢献をし、それに見合う絶大な影響力と財力を誇る白亜の城。…闇に葬られた数々の人体実験のよる犠牲と引き換えに…。 その所長・横沢老人には異常性癖があった。女性に対する極限のサディズム“実験・解剖欲”である。お抱えのヤクザ組織に命じて拉致させ、散らしてきた女性の数はこれまでに検討もつかない。 もっとも、近年は警察組織も強化され、それも難しくなってきていた。そこで、秘書・沼田が苦肉の策として考案したのが“レンタル奴隷”であるが、思いのほかの成果をあげていた。 …“レンタル奴隷”…。 新しく女性を誘拐・調教するのは危険と手間を伴う。 …しかし既に奴隷となっている女性を借りるのなら? 危険や手間は少なく、多彩で質の高い奴隷を味わうことができる。 「全国に散らばる牝奴隷所有者、諸君。相互で奴隷を交換して喜びを分かち合おうではないか」 …その呼びかけに多くの賛同者がつのり、現在では完璧に定着している。 権力と財力、時には暴力にモノをいわせて、横沢がかき集めた奴隷の一環。 それが高村夏子・直美の母娘奴隷であった。 高村夏子…、短いショートカットがよく似合う明るく芯の強さを感じさせる美しい人妻は、すでに見るかげもなくなっていた。 時々 呻き声をあげるだけの、汗と精液にまみれの無惨なドロ人形。二十人近くの男達が交替で、三十時間にわたり一睡もさせずに責めた結果だった。 「…チッ、数分前から何の反応もねぇ」 「しょうがねぇ、そろそろ医師でも呼ぶか」 男達が勝手な事を言いながら、夏子から陰茎を抜いたその時、荒々しく扉を開いて横沢と沼田が入ってきた。開口一番、沼田が叱責する。 「この馬鹿共が! 加減ってものを知らないのかッ!」 夏子の身を案じての言葉ではない。ただ、提案・責任者としてレンタル奴隷制度の信用問題にかかわる事態は極力避けたいのだ。 続いて横沢老人も怒鳴る。 「まったくじゃ! この程度でやめてしまうなど、未熟者の至りッ!」 …はい? 思わず沼田はそんな表情で横沢の方を向いたが、男達を押しのけ、ツカツカと横たわる夏子に歩み寄った老人の横顔を見たとき、諦めてしまった。…やべぇ、このジジイ まぁーたイッちまってるわ… 《続く》 |