──小島有希(12)──      作:SYARA



「さぁ、もう休憩は終わりだよ」

 有希が気絶してから数分もしないうちに、僕は有希を抱き上げた。
 そのまま彼女の身体を背中から抱き締め、彼女を揺り起こす。
「起きて、有希」 
「…………っ!!」
 目を覚ました途端、有希は身を捻って僕の抱擁から逃れ出ようとする。
 だが、度重なる絶頂に弛緩しきった身体は、言う事を聞いてくれないようだ。
「放して……っ!!」
 自由の利かない身体で、こちらを睨みつける有希。
 その視線に、だが、かつての火を噴くような力は無い。
 涙を湛え、あらゆる物を奪われた怒りと恨みと、悲哀を帯びた視線を向けてくる。

 目の前の少女は、それが愚かな行為である事に気付いていないのだろう。

 かつての気力に満ちた彼女ならば、決して心の内の悲しみや喪失感を表に出すことは無かっただろう。
 僕にされたことの全て、傷ついたことも含めて、彼女は否定し、絶対に知られまい、様子を見せまいと思ったはずだ。
 自分の悲しみを、悲惨さを、目の前に立つ陵辱者に分かってほしいと思う事…。

 それは、「媚び」だ。

 相手に心の裡を隠そうとせずに、訴える…それは即ち、僕の全てを拒絶することを捨て、哀願する事で僕に翻意を願う事、その現れだ。

 有希は、自分でも気付かぬうちに、主人に媚びるという事を覚え始めている。
 やがてはその怒りの炎は勢いを失い、被虐的な悦びがその影に見え隠れするようになる。
 ――無論、その事を彼女に知らせてやる気は無いが。

(さて、そろそろ見せてやるか……)
「有希、これを見るんだ」
 言いながらリモコンのスイッチを入れ、テレビの映像を切り替える。
 見知らぬ少女が画面に映し出された。



「……?」
 何も無い、白い壁の部屋の中央に、手を後ろ手に縛られた状態でパイプ椅子に座っている。
 不安げな様子の彼女に、複数の男が近づき、取り囲む。
「……」
 嫌な予感が有希の脳裏に沸き起こる。
 怯えた様子で周囲の男を見上げる少女の顔に、男の拳がめり込んだ。
「なっ…」
 殴られる。蹴られる。椅子ごと引き倒され、踏まれ、蹴られ、踏み躙られた。
「――――っ!!」
 有希の貌から、ざあっと血の気が引いていく。
 とめどなく、身体全体がガタガタと震え始める。
 これは……単なるポルノ映像なんかじゃない。
 これは……。

 獣のような少女の悲鳴が、地下室に響き渡る。
 服がビリビリに引き裂かれ、その穴と言う穴が犯され、
 そして画面は真っ赤に染まっていく。

 指の、腕の、脚の骨が、
 歯が、爪が、髪の毛が、
 血が、
 内臓が、眼球が、
 血、が、

 もはや言葉など成さない、屠られる獣そのものの、断末魔の叫びが。
 あるときスイッチを切ったように、ぷつりと途絶えた。

「ひ、ぃ……」
 目を離すことが出来ない。
 恐怖に、ぼろぼろと涙がこぼれているのに。

 もう画面には、赤、しかない。
「ひ、ぃ、ぃ……」
 放置された無残な死体を遠目に映し、そして映像は途切れた。

 それは、ただ苦痛を与えるための、
 極限の暴力と痛みを与え、その様子を、愉しむための。
 恐怖を、絶望を、苦痛を、
 いのちの、終焉を。
「やだ……やだ、やだ、やだぁぁぁっ!!」
 有希は子供のように泣きじゃくり、背後の男にすがりついた。
 背中を暖めている男の体温だけが、今や有希の拠り所だった。

 監禁され、弄ばれ、犯され、自分が世界一不幸だと思っていた。
 馬鹿みたいだ。

 余りの屈辱に、死んだほうがマシだとさえ、思った。
 本当に、馬鹿みたいだ。

 地獄は、存在するのだ。

 これだけの出来事が、本当にこの世で起こっている。
 それだけで、有希は足元が崩れ去るような恐怖に襲われていた。

 死にたくない。

 死にたくない。


「――大丈夫だよ、僕に全てを委ねていれば、絶対に奴等に有希を渡しはしないから」
「あ……!!」
 本当に、身も凍るかと思えてしまうほどの恐怖の中、
 背中から掛けられたその台詞に、有希は限りない安堵を覚えてしまう。
「うぅ……っ!!!」
 甘えるように男にしがみつき、胸に顔を埋め、泣きじゃくる。
 暖かくて、逞しい、男の身体。
 耳から伝わる鼓動が、有希の心をあやす様に、ほぐしていく。

「でも僕も、警察などに捕まる訳にはいかない。どうしても有希が僕の物にならないならば、奴等に渡してしまうしかないんだ」
 びく、と有希の身体が震えた。
(いや……)
 見捨てられたくない――。
 有希は、ぎゅっと男の襟を握り締めていた。
「もちろん僕だってそんな事はしたくない。だからお願いだ、有希。僕の物になってくれ……」

 それは真摯な口調とは裏腹の、身勝手で卑怯な言葉だ。 
 捕まったばかりのころの有希なら、無論一蹴して終わっただろう。

 だが今の彼女にはもう、その言葉が、自分を護る心強い決意のように聞こえてしまう。

 そう、それは、まるで恋人の声であるかのように。
 だから有希は、思わず聞き返してしまったのだ。

「……ほんとう?」

 と。

 男の唇が、有希の見えない処で、にやりと釣り上がった。



「本当だよ、有希……だから僕に、全て委ねるんだ」
 言いながら、僕は優しく、有希を抱き締める。
「……」
 かすかに、ほんのかすかにだが、有希は、頷いた。

 先刻の話は全くの嘘だ。本当はこのビデオもインターネットからダウンロードしただけの物だ。
 こんな危ない連中と付き合う訳が無いし、元より有希を汚い他の男共の手に触れさせるつもりも無かった。

「ごめんね、怖かっただろう、こんなに震えて……暖めてあげるよ」
 有希を仰向けに寝かせ、抱きしめていた両腕を彼女の両脇に伸ばす。
 今まで開発し、築き上げた性感の全てを試すように、
 脇腹から脇の下、首筋、耳朶をなぞり、時折舌先や唇を織り交ぜつつ、少しずつ少女の快楽を煽っていく。
「あ……、や……」
 有希はその度に、ぴく、ぴくん、と可愛く震える。だが、抵抗は全く無い。
 再び脇腹を辿り、最近とみに弾力を増してきた乳房を軽く揉み、きゅっと桜色の乳首を摘んだ。
「ひゃんっ!!」
 有希の身体が、軽く跳ねる。
(本当に、敏感になったな…)
 そのまま、やわやわと持ち上げるように乳房を揉み続け、屈んで乳首に吸い付いた。
「あ……っ!!」
 ぎくん、と有希の身体が竦む。
 唇で挟み、舌先で転がし、つつく。
「ふぁぁぁ……っ!!」
 ぞくぞくぞく、と慄(おのの)く震えが伝わってきた。

 今や、手に取るように有希の性感が分かる。
 数え切れないほどの絶頂の果てに、僕は彼女の隅々までを知り尽くしていた。

 だから、
「うぁ……っ!!」
 ぬるりとした愛液をこぼし始めた秘処に、不意打ちのように指先を滑り込ませた時にも、
「ひぃっ、んっ……」
 既にそこが、ドロドロに熱く潤っている事を疑いもしなかった。

「うぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ……」
 ずぶり、ずぶり、と指を根元まで彼女の膣に埋め、親指でクリトリスを乱暴に弄り始める。
 わなわなと震え始める少女の躯。もう、絶頂が近い。
「だめ、もう……だめぇ…………」
 有希は弱々しく首を振る。もう意識が立ち直り始めているのか──まあそれはそれで、変わった楽しみ方が出来るというものだ。
 僕は少しずつ、指の動きをエスカレートさせていく。ほぐすように、くすぐるように。
「あぁ……っ、あぁ、う……くぅ……」 
 僅かに開いた目蓋からは、彼女の瞳が見えた。
 憂いに伏せられてはいても、そこには秘められた陶酔と、悦楽が垣間見える。
 陰唇からは、とく、とく、と愛液が零れはじめ、背筋は無意識のうちにぴんと張り詰めていた。
 表情も段々と、恍惚としたものへと変わっていく。
(まるで……咲いていく花みたいだな……)
「ああ、あう、うぅ……く、くぅ……あ、あああぅ………」
 ほんのりと桜色に、肌が染まっていく。細い指がきゅっとシーツを握り締め、わなわなと震え始めた。
「気持ち良いだろ、有希……可愛い声だよ」
 くち、くち、くち、くち……
 指先の攻めを、膣からクリトリスへと移していく。
「ほらほら……遠慮しないでイッちゃっていいんだよ?」
「あはぁ、あ……あああ、ああああ!!」
 くりくりと、小さく勃起し始めた芽を、摘むように、転がすように。
 敏感なそこを、半ばすり潰すように弄られているのに、有希の反応は驚くほど激しかった。
「うあっ、あああっ、──あああああああっ!!!」 
 もう片方の指先で、膣内を激しく攻め始める。
 ──すると、

「くぁっ……だっ、めぇっ、や…………はぁぁぁあああああああぁぁあああああっ!!!!」

 Gスポットを的確に攻め、同時に親指でクリトリスを押し潰し、震わせていくうちに、有希はあっけなく絶頂を迎えてしまった。
 膣口からは溢れた愛液がこぽ、こぽ、と溢れ出し、彼女の花園を荒らし続ける指を濡らしていった。

「は――はぁっ、はぁっ、はぁっ、は……」
「はは……イっちゃったんだね、嬉しいよ、有希……」
 絶頂にふるふると震える、そのか細い少女の躯を、僕はそっと抱き上げ、抱き締める。
 あやすように、寝かしつけるように、有希の髪を撫で、そっと背中を叩いた。
 彼女が僕に体重を預け、寄りかかる確かな手ごたえがあった。



「ホントに、僕の指だけでこんなに感じちゃうなんて……有希は、エッチな娘だね。そんなに気持ち良いかい?」
 問いと共に指を軽く動かしてやると、有希は恥ずかしそうに、かすかに頷いた。
 何度も絶頂を迎えているというのに、まだこの娘は快感が欲しいのか。 
 どんどん貪欲になっていく少女──僕だけの性奴が、至高の芸術品が、完成しつつある。
「こらこら、言葉で言わないと分からないよ。ちゃんと言うんだ、『気持ち良いです』ってね」
「う……!!」
 すると有希は泣きそうに顔を歪め、ふるふると首を振った。流石に言葉に出すのは恥ずかしいという事か。
 だが、その羞恥心さえ屈服させてしまえば、有希は僕の言うままになるのだ。
「言えないのかい? じゃあ二度とイカせてあげないよ――ほぉら、ほら……また、欲しくなって来ただろう?」
「ふぁぁぁっ、ああああ!!!!」
 いきなり指の動きを再開し、有希の身体を再び追い詰めていく。
 もう幾度と無く果ててしまっている身体は、あっけなく頂点への階段を登り詰めてしまった。だが──
 ピタ。
「あ……!!!」
 絶頂の直前、指の動きを止めると、有希は涙を溜めて哀願の視線を送ってきた。だが、僕は指を動かさない。
「どうだい? 有希が気持ち良いと言うまでイカせてあげないからね。何度でも繰り返すよ」
「あぁ……っ!!」
 有希は絶望と諦めの入り混じった顔で泣き出してしまった。だが、僕はそれも無視して再び指を動かし始める。
 くっ、くっ、くっ……
「ああ、ああああ、ああああああああああ!!!! もう、もうダメ、ダメぇぇぇっ!!!!」
 身体が絶頂を欲しているのだろう。有希は簡単に絶頂の震えを起こし始めた。だがそこで、僕は再び指を止める。
 有希は身をもじらせて、恨めしげな視線を向けた。
「ほら。素直に言わないからこういう事になるんだよ」
「うぅぅ……」
 有希は必死に歯を食い縛って疼きに耐える。だが、その我慢も長くは続かなかった。
 今度はわざとゆっくり、ゆっくりと指を動かし始めると、有希はそのもどかしさに無茶苦茶に暴れ始める。
「うぁぁ、あああっ、もう、もう……っ、だめぇぇ……っ……」
「……さあ、言うんだ。どうしてほしい?」
「いやぁ……っ」
 幼児がいやいやをするように、有希はふるふると首を振る。
 そんな必死な様子を楽しみながら、僕はまた指の動きを絶頂の寸前でぴたりと止めた。
「ああぁ……っ!!」
 もう、苦悶の声を抑えることも出来ないのか、有希は全身を妖しく蠢かせて喚き散らす。
 両脚がせわしなく動いて、少しでも刺激を得ようと動いていた。
「ほら……ハッキリ言ってごらん? そうすればこんな思いはしなくて済むんだよ?」
「いやぁぁぁ……」
 もう一息か。ならば、後は恐怖で後押ししてやろう。

「……素直に言ったほうが、良いと思うけどね……?」
「!!!」
 突然変わった僕の声色に、有希はびくんと身を竦ませる。
 弛緩し始めていた躯が、一気に固まった。
「あ……嫌、嫌です…………お願い、ころさないで……」
 ここで萎ませてしまっては意味が無いので、指先の愛撫は再開する。
 だが、耳元での囁きは努めて声を低くした。
「なら……どうするべきか、分かるよね?」
 一瞬、有希の貌に深い逡巡が走る。
 だが、一瞬だけだ。目を上げた時には、恐怖と哀願をたたえた瞳で僕を見つめる。
「うぅ、ううぅ……き、気持ち……いい、で……す……」
「イカせて欲しいのかい?」
「……、は、い……イカせて、ください……」
 恐怖と屈辱にまみれた表情で──それでも、そのどこかに服従する事への悦びを潜ませながら、有希は、屈した。

「ふふ。そうかそうか。やっと有希も素直になれたんだね。じゃあもう一回、しっかりと聞こえるように言うんだ。気持ちいい、ってね」
「……きもち、いいぃぃ…………っ!!」
 言った瞬間に、クリトリスをきゅっとしごく。
 びんっとその身体が跳ね、言葉は途中から甘やかな悲鳴に変わった。
「ほら、ちゃんと言わなきゃ。もう一回だよ」
「き、きもち、い…………いっっっ!!!」
 きゅっきゅっ。
 再び、有希の言葉は悲鳴に変わる。
「駄目駄目、そんなんじゃ。もう一度」
「きもち、ぃ………………ぃいいいっ!!!」
 くりくりくり。
 クリトリスを軽く転がしながら、膣内の指先でGスポットをまさぐる。
「だめだめ、もう一度だね……」

 ――何度も何度も、気持ちいいと言わせた瞬間に、快感を与える。
 こうして繰り返して行く内に、女はどうしても、自分が快楽に反応して言っているかのような錯覚に陥っていくのだ。
 恥ずかしい言葉を自ら放った羞恥も与えられるし、自己催眠的に劣情を開放できる。卑猥な言葉への抵抗も薄れていく。

「あああああっ、きも、ち、い、い……っ!!!」
 瞬間、クリトリスと、Gスポットをぐりぐりと強く弄る。
 かく、かく、かく、と、腰を前後に揺らしながら、有希はその表情を苦悶から恍惚へと変えていった。
「なかなかちゃんと言えないねえ。しょうがない、まずは約束通りイカせてあげるか──思いっきり、ね」
「うぁ、あ、あああああっ!!!!」
 再び活発に動き始めた指先に、たちまち、有希は先刻までの興奮を取り戻す。
「ほら、休まないで頑張るんだ。言ってごらん、ほら、『きもちいい』って」
「うあああ……あぁ…………きもち、いい、よぉ……っ!!!」
 がくんがくん、と、腰から全身をうねらせて、有希は悶え狂う。
 僕は同じタイミングで、止めとばかりに思いっきりクリトリスを抓(つね)り、Gスポットを抉(えぐ)り、
 おまけに不意打ちで、有希の耳の穴に舌先をザラリと差し込んだ。

「ああああっ!! ああああああっ!!! きっ、きもちいい…………っ、ああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

 美しい少女の貌を、ごちゃ混ぜの苦悶と喜悦で染めて、有希はまた、果てる。
 びくんっ、びくん、びく、びく……ん……
 弓のように反った背筋、より快感を味わおうとするかのように、妖しく揺れ続ける腰。
 ぷしゃぁぁっ、と、秘唇からは潮が噴き出していた。
「は……あ、はぁ、はぁ、はぁ……あぁぁ………きもち、いいぃ…………」
 むせ返るような熱気の中、有希は間違えようもない、淫蕩な、愉悦の笑みを浮かべていた。



 天国を彷徨い続ける有希を抱き上げ、再び背中から抱きしめる。
「はぁ……、はぁ、はぁ、は…ぁ、はぁ……」
 絶頂の余韻に浸って、ぐったりと全身を背中の僕に預ける有希。
 その重さと柔らかさ、熱さに、たまらないほどの愛しさが募ってくる。
「最後にちゃんと言えたね、偉いよ、有希」
「は……い……」
(そろそろ、こっちも我慢の限界だな……)
「……さあ、では、愛し合おうか、有希」
「……」
 そっと仰向けに寝かせ、両脚の間に入って膝を持ち上げる。
 有希は先刻から完全に身体の力を抜いており、全く抵抗しない。
 正上位の姿勢で僕は、滾る肉棒を膣口に当て、少女の顔を見た。
 ――視線が、合う。
「……では、有希、いくよ」
「……っ」
「返事は?」
「はっ、は……ぃ……」
 有希は視線を逸らしながらも、しっかりと頷いた。
(よし……)
 先端を、膣口にあてがう。
 ちく……
 それだけで、蕩けるような暖かさが、いや──熱さが、僕の脳裏を焦がす。
 もう我慢できない──。
「いくよっ、有希!!」
「あ!! あ、あぁぁ……」
 僕は、半ば無意識のうちに腰を深く進めていた。
 ずぷ、ずぷずぷずぷ……
 たちまち溶鉱炉のような熱とぬめりが、僕を包み込む。
 ゴム鞠のような柔らかさと、握られるかのような締め付けが同居した、素晴らしい膣圧。
 目の前が、快感でクラクラした。
「……ほら、有希の中に、入っていくよ……」
「うああ、あぁ、あああぁぁ……」
 挿入しながら、僕は有希の顔を真正面から見つめた。
 僕を中心に映したその瞳が、再び破瓜の傷跡を抉られて大きく見開かれている。
 抗生物質や鎮静剤を使っていたとは言え、やはりまだ2日では傷を癒すには早かったか。
「あ……い、痛いぃぃぃ……」
 弱々しく首を振りながら、有希は大きな瞳に涙をたたえて訴えた。
「痛いか……大丈夫?」
「……少し……きつい……」
 苦痛、戸惑い、哀願、悲哀──そして、押し殺した心の奥底に仄見える、期待。
 息が掛かるほどの距離で、めまぐるしく変わる彼女の表情を眺めるのは、また格別な心地良さだった。
 この少女を征服しているのだという事を、陵辱しているのだという事を──改めて実感させてくれる。
「……そう。気をつけて動くから、耐え切れないようなら言ってね」
「……う、うん……」
 白々しい僕の台詞に、有希はかすかに嬉しそうに頷いた。
 心の中で嘲笑う。まるで恋人同士のような茶番劇だ。

 ずぷ、ずぷ、ずぷ、ずぷ……

 肉と肉の擦れる音が、地下室の空気を淫靡に染めていく。
 物凄い締め付けと、信じられないほどのその熱さが、僕の理性をあっさりと焼き払っていた。
「あぁ、ああぁ、痛い、痛いよぉぉ……」
 弱々しい訴えを繰り返す彼女の意思をよそに、その女性器は僕をどんどん受け入れてしまう。
 最初の時は入りきらなかった内奥まで、僕は有希の聖域を犯して行った。
 ──、着いた。
「……最後まで入ったよ、有希……また、僕と一つになれたんだね……」
「あああああ……いたい、痛いの……」
 僕の言葉に改めて事実を突きつけられたのか、有希は激しく首を振った。とめどなく流れる涙がきらきらと辺りに飛び散っていく。
「いいよ、有希……とっても熱いし、すごく締め付けられる……」
「おねがい……っ、う、動かないで……っ!!」
「……分かったよ。しばらく、このままでいよう」
 彼女を貫くのも二度目で、前回よりはだいぶ精神的に余裕がある。
 僕は有希の願いに応えて動きを止め、じっくりと彼女の膣圧を楽しむ事にした。
 ただ、子宮の入り口を押し続ける事は忘れない。
 ここも立派な性感帯の一つだ。じっくりと刺激し続ければ、Gスポットにも勝る快楽を与えられる。
「あたって、る……」
 有希もそれを察したか、ぼんやりとした口調で告げた。
「うん。有希の中、すごく気持ちいいよ……」
「……」
 有希は恥ずかしそうに顔を背ける。
 でも、その中にほのかに嬉しそうな色があるのを僕は見逃さなかった。
(愛、しい──!!)
 突然、世界中を焦す様な渇望と独占欲が湧き上がり、僕の精神を、魂をも揺さぶり始めた。
(──この少女の、身も心も、完全に僕の物にしてみせる──絶対に、手に入れてやる!!!)
 だから、この言葉は極自然に、僕の口から放たれていた。

「有希……キミを、愛しているよ……」

「────っ!!」
 突然の僕の言葉にびっくりして、その後、有希は耐えられない様子で激しく首を振った。
「愛してる……」
「や、だ……やめてぇ……」
 構わず僕は、有希の耳元に囁き続けた。
 腰は動かさず、手の愛撫だけを再開していく。
「愛してる、愛してる、愛してる……」
「やだ、やだ、やだぁぁぁ……」
 痛みに引き攣っていた有希の身体が、再び快楽を思い出すのにそう時間はかからなかった。
 丁寧に、執拗に、有希の性感帯をなぞり、くすぐる。
「愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる……」
 言いながら、無防備だったクリトリスをきゅっきゅっと摘んだ、瞬間。
 
「いやぁ……あぁ…………あああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」

「ぐ……うっ!」
 あっさりと訪れた、絶頂。
 握り潰されるかと思うような急激な痙攣と収縮。
 流石に耐え切れず、僕は有希の内奥に精を放ってしまった。
 びゅるっ、びゅくっ、びゅく……
「あぁ、あぁああああああぁ、ああぁ、ああぁ、ああ……」
 彼女を抱き、内奥に精を注ぎながら言っていると、本当に愛し合うセックスの最中に居るような錯覚を覚える。
「愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる……」
「ふああ……ああぁ……」
 絶頂の海をたゆたう有希に、僕はずっと、愛を囁き続けた。

 ──彼女の精神が、折れるまで。



「愛してる、愛してるよ、有希……」
「あぁ……あぁぁ……」
 耳元の囁きが、悦楽に慄く有希の心に染み込んでいく。
 理性のタガを外し、完全に無防備になってしまった有希の精神は、なす術もなく彼の声を受け入れてしまっていた。
 まるで催眠術のように、あるいは仔鳥の刷り込みのように、男の言葉は有希の精神の奥底に、くさびのように穿たれていく。
「僕だけは、君を決して裏切らない。永遠に愛し続けることを、ここに誓うよ……君は、僕のものだから」
「裏……切…………ら……」

「そう。僕は有希の家族みたいに、攫われても助けに来ない、なんて事は絶対にしない。ずっとずっと、有希と一緒にいるからね」
「いっ……しょ、に……」
 有希の瞳から、光が失われていく。

「そうだよ。だから僕のモノになるって誓うんだ。そうすれば、ずっと一緒にいてあげる……やつらに君を渡したりも、絶対に、しない」
「……」
 一瞬、有希の瞳が揺れた。
「一人は……嫌……」
「……そうだね。一人は、嫌だね」
「死ぬの、怖いの……嫌……なの……」
「うん」
 優しく有希の頭を撫でながら、男は囁くように彼女の言葉に同意する。
「いい……なる……」
「え?」
 こてん、と、有希の頭が男にもたれ掛かる。
「あなたの、ものに、なる……」
「……本当かい?」
 与えられ続ける快楽に屈した肉体と、既にズタズタに引き裂かれたプライド。
 いつまで経っても助けに来てくれない、警察や家族への絶望。
 そして、先刻の映像への恐怖。

「……うん」

 仕方ない、と、自分に言い訳するように、有希の精神は崩折れていく。

「──分かった。では、今から有希は僕の物だ。その心も、身体も、全部僕の物になるんだ。いいね? 有希」
「……うん……」

 有希の頤が、つい、と男の指に持ち上げられる。
 欲望と征服欲に満ちた瞳と、欲情と依存心に溢れた瞳が、絡まり合う。


 二人の唇は、自然に、重なり合った。



  続きます、多分(苦笑)