1.地獄への道往き
午前零時を知らせる時計の鐘が鳴った。
福永美穂はビクッと身体を固くした。
(け、けだものがやってくるわ……ああ、いよいよ)
美穂はわあっと泣きだしたくなるのを、懸命にこらえた。
自分が犠牲にならなけば、親友の杉村耀子と篠崎由希が外国へ売り飛ばされるし、他にも征治のグループにさらわれたと疑われる3人の同僚レースクイーンの消息もわからなくなってしまう。
自分が今夜の責めを耐えさえすれば……福永美穂はそう自分に言いきかせるしかなかった。
「フフフ、福永美穂、輪姦パーティにご招待だぜ」
「ああ、征治さん……」
振りかえると、いつの間に入ってきたのか、学生服姿の征治がニヤニヤ笑って立っていた。
「よしよし、ちゃんとめかしこんでるな。たいした美人レースクイーンぶりだ。みんな喜ぶぜ」
征治は眼を光らせると、抜群のスタイルに白と緑があざやかなRQコスチュームを身にまとっている福永美穂を上から下まで舐めるように見まわす。
まばゆいばかりの美しさに自然と征治の眼が細くなる。
「へへへ、サーキットで女王のように崇められているトップレースクイーンのコスチュームそのままだな…。さすがにキマッてるぜ。もっとも輪姦パーティじや素っ裸に剥かれちまうがな」
征治は持ってきた大型犬の首輪を福永美穂の首に取りつけると、その革の手綱をつかんだ。
「それじや行こうか、美穂。美人レースクイーンの福永美穂を輪姦できるってんで、みんな首を長くして待ってるからな」
美穂はもう何も言わなかった。
観念している風情で、顔をうなだれさせて歩きはじめる。
その身体が小さく震えていた。
コスチュームとおそろいのハイヒールをはかされ、外へ連れだされた。
惨めな格好で歩かされながらも征治が無遠慮な手を下着を着けることを許されていない身体に這わせてくる。
美穂の乳首や媚肉や肛門を征治の淫らな指で抉るように愛撫するたび「あぁっ」っとあがらいとも悦虐ともわからない短い声が美穂の可憐な口からこぼれる。
そうして歩かされるうち、征治のマンションではなく、高校のの空手道場へ連れていかれるのを、美穂は知った。
福永美穂が初めて征治に襲われた場所だ。
壁の崩れたところから森へ入る。
「ここで美穂を強姦した時のことを思いだすぜ。ふふふ、行方不明になった妹の有紀を探してこんな所へ舞い込んだんだったな。あの頃はちょっと尻の穴に触っただけで、大変な騒ぎようだったな。それが今じやケツの穴にぶち込まれてひいひい悦びやがる。たいした成長だぜ、美穂」
「い、言わないで……ああ……」
福永美穂は弱々しく頭を振った。
「おお、来たぞ」
征治と福永美穂に気づいた見張り役の矢沢が声をあげると、克也に元木、山西がバラバラと迎えに出た。
「オッス、番長、待ってましたぜ」
「オッス、ビデオ撮影の準備のほうもすっかりできてます」
「オッス、番長、みんなもそろってますぜ」
威勢のいいあいさつが飛ぶと、征治はニンマリと笑ってうなずいた。
克也に元木、山西は福永美穂を取り囲むようにして、ニヤニヤと淫らな視線を這わせてきた。
美穂は征治に首輪をひかれ、フラフラと空手道場のなかへ入ろうとしたが………
「あっ……そ、そんなっ……」
にわかにおびえて身体をこわばらせた。必死に平簡をよそおっていた顔が、スーツと血の気を失って蒼白になる。
道場のなかには三十人近い高校生たちがいたのである。
みんな学生服を着て、ひと目で不良学生とわかる男たちが車座になって酒を飲み交わしていた。
地域の不良たちが集まっているようだ。
そのなかで功二が、一人十万円の会費を集めていた。
「十万も取るのかよ。高けえぜ」
「ヘヘヘ、福永美穂の輪姦パーティなんだ。十万くらい安いもんだぜ。ほれ、出せよ」
「クソ、ぼりやがって。めちゃくちゃ犯りまくってモトをとってやるぜ」
そんなやりとりが聞こえてきた。
ここへ連れてこられるまで、征治や矢沢たちだけだと思っていた美穂である。
それが金を取って三十人近い不良学生たちに輪姦されるとなれば話は別だ。
「かんにんして……あんな大勢なんて、ひどいわ。ああ、征治さんたちだけにして、お願い」
美穂は泣き声をあげ、本能的に逃げようとした。
だが、美穂の首輪の手綱は、しっかりと征治に握られている。
「いや、いやです…………ああ、大勢の見世物にされるのは、いやっ」
「俺たちだけも三十人も、輪姦されることには変わりがねえんだ。ここまで来て、手こずんらせるんじやねえ!」
手綱を引き絞って、征治はバシツと鋭い平手打ちを福永美穂の頬に浴びせ、とどめを刺すようにスマートなコスチュームの上から細くくびれた美穂の腹部にドスッと正拳を叩き込む。
「グェッ!…」
「へへへ、電話一本でまだまだ二百人でも三百人でも呼べるんだぜ。なにせ人気レースクイーン福永美穂の輪姦パーティなんだからな」
「この人数で勘弁して欲しかったら、二度と逃げようとするんじゃねえぞ」
脅され力が抜ける福永美穂の首輪を引きずり、征治は道場へ連れ込んだ。
(つづく)