蓬莱学園の淫日!




 其の1

 それこそピッカピカの新入生である百合河理香(ユリガワ・リカ)は当然のごとく正月を東京の実家で過ごした。
そして簡単な入学手続きも自分で済ませ今日にはここ蓬莱学園にやって来ていた。
「さ〜すが南国、あったかいね〜」
 今頃みんなはまだ冬休み、冬休みが終れば三学期、なのに自分は一足先に高校生。
 自分で決めた事ではあるがこの展開の早さに理香は戸惑いを憶えていた。
 いや戸惑っているというのは嘘かもしれない。他に理香のような生徒を快く受け入れてくれる学校がなかったからここを選んだ、願書も自分で捜して来た。
 だから今ここに居てこうして居る事を十分理解出来ている、つまり戸惑っているのは彼女が自分に嘘を付きたがっているという事のポーズでしか無い。
「確かにこんな非常識のとこなら、趣味にはとやかく言われないよな…」
 島についてかまだ半時もたっていないだのに理香は確信していた。
「入学式はまだだしどっか見てまわろう」
 ここはきっと楽しい!、それは魂の訴えに近いと理香は歩きだした。
 ブロウにいつも時間をかけている事が自慢の栗色の髪を1月にしては暖か過ぎる風になびかせてながら…




其の2

  性と愛の科学研究会というクラブがある。読んで字の如く立派な理科系クラブに属するこのクラブは当然のように理科棟クラブ会館にその部室を有する。
 そしておそらくは今日もその部室には数人の生徒が集まって部活動という名の淫猥な行為にふけっている事だろう。
 個に性愛研と呼ばれるクラブが大手である事が高校生にとって性、取り分けSEXという物に対する興味の深さを物語っていた。
 そしていつしか部員達は臆病な幽霊部員となるか、行き過ぎてお店に出る(当然性愛研経営)かの二通りの道を歩む。興味はあっても勇気の持てない生徒の数がいかに多いかは幽霊部員の多さで他のどの大手団体よりも首ひとつ抜けている事からも理解できる。
 そして陽本圓(ヒノモト・マドカ)はそのどちらにも属していない珍しいタイプであった。彼女は人肌の温もりが好きだった、しかし性欲に翻弄される事を嫌悪する、だから自然とこの1年間部室へは足が遠のく事になったのだが……久し振りに彼女は部活に顔を出す為に理科棟に入った。
 そして部室のドアをくぐって浴びせられた第一声が……
「あら、めずらしい さだまさしに御執心ではなかったのかしら」
 であった。
 そしてその声の主たる先輩は圓の身体に大きく張り出した胸から擦り寄ってくる。
「先輩、困りますよ」
「そんな事、言われちゃうともっといじめたくなるだろ…圓」
 ウェーブのかかった金色の髪の毛が揺れ圓の首筋を嬲るように刺激して行く
「くふぅん」

 いつの間にか押し倒されて、会議用テーブルの上に背中をつけていた。
「他の部活が忙しい? それとも私が    キ・ラ・イ ?」
 耳に息を吹きかけながらつぶやく先輩は自分の金色の髪がどのように圓の肌を刺激していくかわかっているようだった。
「あくぅ」
 ザワッ
 鳥肌が立つ…
 嫌悪感が大群でもって肌の上を通り抜けていく。
 しかしすでに…
  ブレザーを脱がされ、
   ブラウスは左右に広がり
    タイトスカートは腰で輪になった
 胸元からブラジャーが抜き取られた時には、鳥肌を浮き立たせたままの豊かな膨らみは、ほんのり桜色に染まり圓は恥ずかしげにつぶやく。
「んん… 嫌ですっ」
 そう、その一言が耳に入った瞬間先輩は得も言われぬ表情でピッチを上げて行く。
「かわいいわよ〜圓ちゃん! いつも済ましてないでそんな顔してれば良いのに〜」
 ホックをはずしてタイトスカートを抜き取ると…
 ニタリ
「こいつは脱がしてあげないよ」
 汗とは違う液体で中央部に染みを造っているストッキングに
「だから…」
 つんっ
「ひっ」
 と爪を立て一気に引き裂いていく。
 ビィィィィィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッ!!
「きいぃぃぃぃぃゃあぁぁぁぁぁ!」
「なかなかいい声で鳴くわねえ〜〜」
 くちゅ! 
 ストッキングの下でいまだ最後の砦よろしく股間に張り付く最後の布切れの奥へするりと指を忍び込ませると淫水が別れを惜しむように最後の一瞬まで小さな布きれに糸を引く。
「こんなになってる…」
 にちゃ!!
 広げるようにしながら前後左右指で嬲る。
「んあっ」
 嬲る。
「んあっ」
 嬲る。
「んあっ!」
 止どめとばかりに今まで焦らして触れずにいたクリトリスを一気に攻める
「んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 柔らかなその感触を楽しんだ後、圓の唇に己が唇を重ねあわせ
 ちゅる!
「んん」
 ちゅるる!
 濃厚な愛撫を続ける。
 たっぷりと時間をかけ舌が口内を這い回る、まるでそこの性感帯があるかのように…
 そして…
 ちゅるちゅる
 唾液を吸う、吸い尽くす。
 ぷはっ
「怒った…」
 やっと先輩のキス攻撃から開放された圓はそう言い
 一転、先輩の身体に指を這わせはじめる。
 ビクン
「!!!!!!!!!!!!!!」
 跳ねた。
 先輩の身体が踊り、金色の髪の毛が中空を跳ね上がっていた。
「まだ許してあげませんよ…先輩」
 風に舞う羽毛のごとき手捌きで圓は先輩を翻弄していく。
「あひゃぁぁぁ!!」
 一回…
「くふぅぅぅぅうん!!」
 二回…
「もうだめえええぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 三回…ビクンビクンと全身を痙攣させて跳ね上がり、体中から汗だかよだれだかそれとももっと他の何かを空気中に撒散らして、ついには気絶してしまった。
「また…やっちゃったか…」
「ひは、さすが黄金の指だわ…」
 わざわざ起き上がって付け加えてから先輩は再び気を失った。
『初めからこうさせたくて挑発されたのかしら?』
 安らかな寝顔の先輩に少し嫉妬したように圓は部室を後にした。
「こんな指見つかったのがそもそもの間違いよね」
 黄金の指を持つと先輩に褒めはやされても余りうれしくは無かった。




其の3


 茂内あられ(モナイ・ーーー)にとっての今日がどういう日であるのか、などとゆう事にわざわざ考えを及ぼすほど、あられは暇ではなかった。
 嫌、暇ではあったのだが他にもっと身近の考えるべき事があったのだ。
 それは…… 巡回班の勧誘などという物には興味がなかったので、とりあえず他の部活の勧誘でもしてこの新入学のシーズンを載り切ろうかなとかいう類の事であった訳だが。
「うちが何したって同じやしなぁ」
 結論から言ってしまえば何も考えずにバックレ決め込みたいのが本音だろう。
 路面電車に人は少なく、あられの他にはほんの二三人しか乗っていなかった。
「寝てまおかな」
 あそこの部の勧誘で、人前で脱ぐのは良いが巡回班の仲間に取っ捕まる可能性があるのは困ったもんだ、とか考えながらウトウトとしていた。
「あれ……」
 他に乗っている客が何かしているのが視界の隅に映った。
「しとるんか、こないな所で……」
 ボーと霞む視野の中で、上半身を裸にした一人の女生徒と組み合う二人の男子生徒が見えた。
「…いやぁ…」
 かすれがちに聞こえて来る女生徒の声のおかげで、それが強姦であろう事も分かってきた。


 なのに……
「あかん、身体が動きよらん、どないしたんやろ……」
 男子生徒のうち体の大きい方が近寄って来るのが見えた。
「効いてるなあ〜」
『ぱしぱし』
 とあられの頬を叩いた後、おもむろに彼女を担ぎあげてもといた方向に男子生徒は戻って行く。
「いたあらへんなぁ〜 夢なんかしらん」
 そして何の躊躇もなくあられの身体を女生徒の隣に放り出した。
「ひっ」
 女生徒の顔が驚きと恐怖で引きつり。
「巡回班だぜ、大当りだ、ケヒャハハ」
 大柄な男子生徒はまるで馬鹿のように笑う。
「そして巡回班士を捕まえちまったからには逃がす訳にも行かなくなった」
 女生徒の胸の間で熱い欲望を爆発させると涙に歪んだ顔を上げさせ
「可哀想におまえもだ」
 ニヤリッ
 男子生徒の音がしそうな表情を眺めながらあられは全くのんきな事を考えていた。
『なんや こない眠いんは罠にはまったからやったんか… よかったで』
 見ず知らずの女生徒が全裸にされて泣き叫んでいるのを、どこか遠い世界の出来事であるかのように感じながら。
 あられは眠りに落ちた…。
 路面電車はその後どこの停留所にも止まらずに鈴奈の森の方角へと消えて行った。




其の4


 藤堂 光(トウドウ・ヒカル)は途方に暮れていた。
「どうしよう…」
 光は寮の自室で、壁に掛かった晴れ着を見上げながら、先程からこの言葉を連発していた。
「この染みは取れないよなぁ〜買取か…いくら掛かるんだろう」
 正月のパーティーで晴れ着を着たまでは良かったのだが、お目当ての相手は現れず、はては水を掛けられてぶち切れてしまい、気が付いた時には後の祭り…晴れ着の胸元には大きな染みができてしまっていた。
 かくして
「どうしよう……」
 に、なる訳である。
「おう、光 ちょっくら仕事に行って来るから誰か来たら宜しく言っといてくんなあ」
 隣人が壁越しに大声で声をかけて来る。
 ここ恵比寿寮と呼ばれる男子寮ではよくある光景である。
「おお、誰かくんのかあ?」
「うんにゃ! 断わってから来る奴なんているわきゃねえての」
「そっか」
 ぽんと一つ手を打つと
「バイトでもするしかないな…」
 元気に立ち上がると光は部屋から駆け出 して行った。
「土木研で使ってもらうかな」
 あくまで自分の部で働く気のない光であった。
 ちなみに彼女は女である、恵比寿(男子)寮に住んではいるが…




其の5


 ヘレン・ウッドワード(ーーー・ーーー)は寒気がして飛び起きた。
 へクシュッ
「は〜汗かいたまま眠っちゃったからな〜」
 後輩からむしり取ったストッキングがそのまま床に投げ出されているのを見ながら再び先ほどの光景を想像するヘレンだった。
「素足にタイトスカート、そんな沃るかっこで外に出て行ったのかしら?」
 もっといじめたい衝動に駆られて、
「ちょっと宜しいかしら」
 入り口に余り嬉しくない制服を着た女生徒が立っていた。
「公安の方が今度は何の濡衣を着せに来のかしら?」
 ヘレンは、好き嫌いがいつもはっきりしている。特に権力を笠に着て相手を押え付けるような族は嫌いだった。
「あなたのように不道徳な生徒にはいろいろ教えてあげる事が多くて困るわ」
 方や公安委員も負けてはいないようだ。
 ちなみに、このような公安委員を自分の腕の中で泣かすのはヘレンの趣味にかなりマッチする事だけ付け加えておく。
「で、用は……」
 冷たく言い放つと。
「無いんだったら帰ってくれない。私もこれで忙しいの」
「あなたたちが絡んでいる事は分かっているのよ」
『?』
「人手が足りないとはいえ、やって良い事と悪い事の区別も付かないなんて不道徳にも程があるわね!」
「!」
 何かしら気が付いたヘレンはしたり顔でこう言った。
「捜査に行き詰まったわね、あなた」
「うっ」
「それで目星どころか思い込みだけでここへ来た。気の弱い生徒なら公安の制服着てるの見ただけで喋ると思ったんでしょう?」
「違う……」
 公安委員の顔が言葉を裏切っていた。
「何があったの…… 怒らないから言って御覧なさい?」
 妖艶!
 そう表現するのがぴったり来る表情で見据えられ、それこそ『蛇ににらまれた蛙』
状態の公安委員は
「覚えてなさい〜〜〜〜」
 と負け犬の遠吠えを残して逃げ出して行った。
 ぽつん……
 と一人の越されたヘレンがいつになく真面目な顔を作っていた。
「強制売春か、新手の性病でも広まってるのか…… でもそんな話は聞かないしね、何が起こっているんだろ、気に入らないな……」
『へくしゅっ!』
 くしゃみを一つするといまだに裸であった事を思い出して制服に袖を通すヘレンであった。
「まっ 何とかなるかな……」
 気持ちに整理を付けるとヘレンは部室を後にしていた。




其の6


 大きな開放的な窓が壁一面に広がり遠くに海を覗かせている。
 弁天寮の五九階といえば全校生徒の憧れの的とも言うべきスイートである、この階と更に上の六〇階を使う事が許されているのは学園に対しよほどの発言力がある女生徒か役員、更にもう一声するならばお金持ちの女生徒のみである。
 そうその限られた特権を持つ者だけがこの雄大な景色を我が物とすることができたそしてこの部屋の住人である玉川珠美(タマカワ・タマミ)はお金持ちに類する女生徒で、ついでにつけ加えるならば今彼女は外の景色など気にしていない状況にあった……
 なぜなら
「うっくん」
 ベッドの上で……
「あぁぁぁん」
 両手を薄い下着の中へ……
「くぅぅぅ」
 後ろから前から……
「あっ あっ!」
 摩るように……
「ひっくぅ」
 抜き差しして……
「あっくぅぅん」
 あまつさえ器具まで使い出して……
「あ〜! あ〜!」
 そしてついに……
「やめた!」
 そうやめた、っておい!
 彼女はつまらなそうに立ち上がるとシャワーを浴びる為にベッドから立ち上がった。
 玉川珠美は体が火照って仕方がなかった訳でもただの淫乱でも無かった、要するに暇だったのだ。
 シャワーを使いながらも浴室の大きな窓は総てを見下ろさせるように開放的に作られいやが上にも彼女の意識を学園へと向かわせる。
「見下ろされる事がみんな好きなのかしら」
 ごちゃごちゃとうごめくような悪徳大路眺めて珠美は思う。
 ここまで高い建築物をわざわざ作っておいて更にその足下を這い回る様に悪徳大路のような物を作る神経がよく解らなかった。
 それが一人の意志によって造り出されて今この島を形作っている訳ではもちろんない、が……しかしそれは彼女が知る所でも考えるべき事とも違うのだから彼女の今の思考について責める事は出来ない。
「さて部活に行こうかしら、それとも……」
 ここに来たばかりの珠美は既にいくつかのクラブに勧誘され、気の赴くままに入部を済ましている。
 珠美の実家はかなりの資産家で、なぜお金があるのか、どうやってそのお金を手に入れているのか彼女自身は興味すら無い。
 それでも、お金があって今まで困った事も無いのだから、貧富の差がどうのとか言ううるさい事に耳を貸す気は毛頭なかった。
「お金が欲しければ稼げばいいのだし、私は単に運がよかっただけだもの」
 という事になる訳である。
「じゃあ、行こうかな」
 ゆっくりとシャワーを浴びてゆっくりと珈琲をすすりゆっくりと着替える。
 この一連の動きをそれこそゆっくりとやり終えると彼女は外出の準備をした、彼女はやる気が欲しかっただけなのだこれ迄自分に生きているという実感が無かった生かされているだけのようで嫌だったのだだから生きる証しやる気を与えてくれそうなこの学園に微かに期待していた。
「何がしたいのかな」
 珠美は他の生徒たちに気付かれない用に弁天寮を後にした。そして今は無き生活指導委員会の活動拠点の一つに歩きだした。






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