蓬莱学園の淫日!




其の1


 面白い出来事とは突発的に起こる物なのであろうといつも思っていた。
 彼女、百合河理香の場合、正にその通りであったのだ。
 目の前を疾走して行く路面電車は、理香がこの島についてから見てきた他の車両と明らかに異なっていた。
 車内が霞の掛かったような状態で、うすぼんやりと見えるその車内に二人の女生徒が裸にされているのが目撃出来たのだ。
「とんでも無いところだなぁ」
 理香は楽しそうにそう呟くと路面電車の消えた森の中へと追跡を開始した。
 この時点で理香はまだこの学園の恐ろしさをま〜〜〜〜〜ったく理解していない。
 
 森の中はひっそりと静まり返り今し方ここを怪しげな路面電車(?)が通り過ぎて行ったなどとは想像しにくい。
「見失わないようにしなくちゃね……」
 ガサッ
 と不意に手にモデルガンを持った男達数名が理香を取り囲んでいた。
「あっ ごめんなさい、サバイバルゲームの途中ですね、さっさと退散しますんで路面電車どこ行ったかしりません?」
「…………」
「あのぉ〜 知らないんだったらいいです どうもごめんなさい」
 無言の男達に危うい物を感じた理香は逃げ出そうとした、が…
 ガチャ
 男が一人行く手をふさいでいた。
「見られたからには返す訳には行かないな」
 低い声で脅しつけられたくらいでは、理香が怯んだりはしない、それどころかかえっていきり立った。
「モデルガン持ってカッコ付けたってね〜」
 ボスッ
「こうはなりたくなかろ」
 理香の足下で通り過ぎようとしていたトカゲのような生き物が頭を吹き飛ばされて痙攣している。
「本物……」
「来い」
 正直に言って理香はビビッタ、いや突然本物の拳銃で威嚇されてびびら無かったらキットその子は高校生として何処かおかしい、だが理香はびびりながらもこう考えていた『何か特別な事が起こり始めた……』彼女はけっこう筋金入りな娘だった。
「優しくして下さい言う事を聞きます」
 彼女はほとんど自分から望んで男達について行った、男達にそれと気づかれることなく




其の2


 陽本圓は弁天寮へと急いでいた。
 正確に言うとパンストとショーツを先輩に取られてしまった為に他の部活に顔を出す前に着替えようと急いでいるので弁天寮行きの路面電車に乗っていた。
 しかしそれが間違いだった、弁天寮行きの路面電車には時折このような車両が通るいわゆる『痴漢電車』という奴だ、朝のラッシュ時など女生徒で溢れかえる時間には出た事が無いがこのように部活に向かう生徒や部活に参加せずに一足先に女生徒が帰る時などに男子生徒を鮨詰めにした車両がやって来るのである。
 そして運悪く圓は下着を付けていない状態でその車両に乗る事になってしまったのだ。
 路面電車が動き出した瞬間いっせいに前後左右あらゆる角度から男子生徒の手が彼女を触ってきた、始めは臆病にそして次第に大胆に……
「いやっ」
 圓の口から漏れた微かなその声が回りの男子生徒を更に元気にしたようで一層激しくスカートの上から撫で回し胸のボタンを外しにかかる。
 そして遂に正面から伸びる手がタイトスカートをたくし上げ、その内側に侵入する事に成功した、つまり直に彼女の草むらをその手に感じる事になったその手は一瞬動きが止まり、その手の所有者の驚きを圓に教えた。
『うそ〜死んじゃいたい、私がいつもこんな事するような女だと思われたわよきっと〜』
 気が付くと腰でスカートは丸くなり鮨詰めで無ければその下半身をいっせいに披露しているかのような格好になっている。
「もう、ヘレン先輩のせいなんだから」
 心で先輩に恨み言を言っても詮無い事で広く開かれた胸元はついさっき先輩にしてもらったようにはだけられ四本の腕か入れ替わり立ち替わり揉んだり抓ったり引っ張ったりをくり返し一時として綺麗な彼女の胸本来の形ではいられない。
「あぁん」
 圓自信この異常な状態に官能を揺すられ始めていた。
『まただ……いやだこんなのは……』
 彼女は再び自らの意識を手放す事に脅えながら身体の反応と戦い始めた、その時
 ピピッ
 胸ポケットの中で今にも落ちそうな携帯電話がなった。
 さっと回りに纏わり付いていた手が離れる中途半端な官能をそのままに彼女は戦いから解放された。
呼び出し音の後いまだにバイブレーションを続けている携帯を圓は受けると耳元まで持って行く、ちなみにこの携帯電話は公安委員会非常連絡局の呼集用に与えられた物であった。
「陽本です」
 圓には隠された二つの顔がある。一つは性愛研に入っている事、そしてもう一つの顔、こちらの方が重大でGESTACOの局員である事実だ。この事はクラブの親しい者にも秘密になっていて、いざ事にあたる時だけ圓は冷静なGESUTACO局員へと変わる。
『私だ……』
 受話器の向うで副局長の声が聞こえる。
「はい、 はい、では公安の…… うん…… て、手伝いをすればはぁいいのですね」
 圓が話し始めると同時に彼女に再び男子生徒の手が纏わり付き収まりかかった官能の火はより一層激しく燃え上がる。
『ああ、SS残党が絡んでいるらしいとの話も聞く、よろしくたのむ』
 電話の向こう側にもあからさまに伝わっていそうなのに副局長は気に留めた様子も無く只々事務的に会話を続ける。
「は、はい、分かり んん……ました」
 内股が必要以上にぬるぬるとしているのがわかった、わかる事で自分の意識を手放さずに済んでいる状態であった。
『資料は君の私室の方へファックスで送っておく、では』
 プツン……
「ひあぁっ!」
 通話を終わった瞬間圓は盛大に絶頂を迎えた。
「はあはあ」
 周りにいる男子生徒に全体重を預けるように彼女は脱力していた、そして回りの男子生徒は……
「新たな痴漢ヒロインの誕生だぁ!」
 と歓声が上げそのまま第二ラウンドに突入すべく位置を変えながら手を伸ばして行く。
「もういい加減にして〜」
 圓が切れた……
 
 路面電車が一台弁天寮前で止まった、その中から何事も無かったかのように陽本圓が降りて来る。
「フウ、まったくもう」
 そう言って右手を軽く振って彼女は弁天寮へ入っていった。
 あの鮨詰めの男子生徒はどうしたのであろうか、それとも目的地に着いたら何事も無かったように女生徒を降ろすのが『痴漢電車』のマナーなのか?
 いやいや彼らはこの時既に圓の黄金の指先によって総ての男子が逆に足腰立たなくなるまで搾り取られてしまっていた。
 だからその車両にはちょっと近寄ると物凄い匂いがしている。
「俺たちの新たな痴漢ヒロインだぁ〜』




其の3


 その空間には化学薬品の匂の他に男と女のみだらな匂が充満していた。
「あんたら邪やろ」
 鈴奈の森の奥に作られた空洞の中を連れ回されている割りに、どこかあられは冷静でいられた。
「あんだけ見ててまだ分んなかったのか! 巡回班も馬鹿野郎ばかりか…」
 あられを路面電車の中から連れ出した男たちはさもうれしそうにそう語ってくれる。
「うちはアホやけどね、あの子どしたん? 宏枝ちゃん言うたっけ」
 とりあえず車内で陵辱されていた女生徒の事は気になった。
「あれはお前と違って並だからな、今頃はもう先の続きを始めてるさ」
『いやぁ〜〜 助けてぇ〜〜』
 あられの脳裏に一瞬先程の宏枝の姿が思い出された。
「泣いとるんやろなぁ」
 ただぐるぐると洞窟の中を連れ回されて行く。
「一体どこ行く気なんや」
 擦れ違う男達の仲間の視線が妙に絡み付いて来る。
「ここだ……」
 そこだけ豪華な扉がつけられていた。
「偉いさんでも居るんかいな。」
「生け贄つれて参りました」
 重そうな扉が音も無く開き内側の明るさに目が眩む。
「よく捕まえた、ここへ」
 馴れ始めた視界にとび込んできたのは十人ほどの男たちが円卓に座っている姿だった。
 そして異様なのは十人が十人とも獣の面を被っている事であった。
「かわいらしいじゃないか…」
 狼の面が喋った。
「儀式までに体をすっかり綺麗にしておかなければいけないね」
 獅子の面の男が言う
「嫌、それはオークションの場で儀式の一環としてやろうじゃ無いか。どうだい」
「それが良い、楽しい見せ物じゃないか」
 虎の言葉を受けて猿がはしゃいで見せる。この異様な光景にあられは初めて立っていられないほどの恐怖を感じていた。
「なんや、これ」
 獣たちの前には一台ずつパソコンのモニターのようなものが設置され中央には八方向を向いた大型のモニターがしつらえてあったそしてそのモニターは総て同じ映像を映している。
 モニターの中で宏枝が陵辱されていた。
 二人の男に一度に肉棒をねじ込まれて息も出来ない様子が音声無しでひたすらくり返されている、その画面の右上に『小田宏枝2年乙酉組94-100685 \1,250,000』と表示されていてあられにもそれが何を意味するのかすぐに理解出来た。
「人身売買やん…」
 あられはその場で崩れて落ちた。
 獣たちが笑っていた…





其の4


 広場の張紙は結構目立っていて光はそれを食い入る用に覗き込んでいた。
『お料理の得意なあなた、いますぐその力を活かして見ませんか?』
 の書き出しで始まる張紙は拘束時間の割りに破格なバイト料が提示してあった。
「まるで俺のために用意してくれたみたいな仕事だ」
 ぺりっとその張紙をはがすと
「まっ 行ってみようそれできつそうな仕事ならもっとお金を要求すればいいさ」
 そこに書かれた教室へと光はすぐさま移動し始めた。この学園に来て一年光は学園内の地理に今一つ詳しくなかった。
「ふ〜ん、鈴奈の森の中なのか」


 集まっている生徒たちはほとんど新入生たちで光の他数名しか2年生が居ない、ましてや3年などかけらも見えなかった。
「いやあ〜 よくお集まり下さいました。ここにある材料を使った料理を作って頂きたいのですがこれはあるパーティーのための秘密料理でしていくつかのパートに別れて作って頂きます」
 一番最後にこの教室に入ってきたエプロン姿の男はこのようにして話を切り出した。
「夕方までに終るかな」
 どこからか掛かった声に男は表情を崩し切った顔でそちらを向き…
「ええもちろん料理は鮮度が一番ですからね終ったパートから引上げてもらって結構ですよ」
「よ〜しガンバロウ〜」
 あちこちで歓声があがり光もまたグループ分けされた紙の通りにいくつかある小教室の一つへと移って行った。




其の5


 悪徳大路の中にある性愛研の店は何時でも混んでいてヘレンなどはここへ来るのが億劫でたまらない。
「お久し振り〜」
 ヘレンと同期の女の子がかなり挑発的な格好でよって来る。
「襲って頂戴って言わんばかりの格好ね『ぷー』」
「好きなくせに」
『ぷー』と呼ばれた女の子はヘレンの脇まで来ると太腿を擦り寄らせて来る。
「嫌いじゃないけど、今はだめね」
「ぷー つれないわね。全く、どうせ光に御執心なんでしょ」
「その通り」
「もう、この世界に引き込んだのはあなたなんですからね、責任とってもらっちゃうからねぇ」
 くすくす、忍び笑いというには露骨な笑い方のヘレンは『ぷー』を抱き寄せると耳元に行きを吹き掛けながら
「染まりきって物足りないから店で働きたいって言ったのは『ぷー』だったわよね〜」
「あんっ もっと……」
 ヘレンの手の中で身悶えする『ぷー』。
「聞きたい事があるんだけど教えてくんないかな〜」
「何でも話すわ〜ヘレン〜」
『ぷー』はもう息も絶え絶えで荒い息を店じゅうに見せびらかしているにもかかわらず気にしている様子はない。
「この辺かぎ回ってた公安の娘の事なんだけど」
 手を離すヘレンを『ぷー』は追い縋りながら。
「喋ってから」
 ちょっとだけきつい顔をして見せる。
「うん、知ってるよその娘。名は『斉条若菜』2年戊申組で公安じゃ落ちこぼれよ」
 置いてけぼりを食らった子犬のような瞳で『ぷー』は話し始める。
「ん で」
「だからぁ〜 あの娘が人さらいがどうのって言って来たってここじゃあぁ〜さあ 誰もまともに取り合わない訳よ。どうせいい加減なネタで動かされてるの見えてるもん」
「ん、ありがと『ぷー』よく分かったわ」
 ヘレンは立ち上がると即座に店の外へ出ようとしている。
「あん 続き〜」
「客にしてもらいなさい、お金ももらえるから」
 閉まる扉の向こうでヘレンの軽やかな声が聞こえた。
「ぷー」

 悪徳大路の喧騒ですらヘレンの恐ろしさを知って彼女の回りには近付いてこない。
「こんなところに一人で来れるタイプじゃなかったわよね」
 クスリ……
「面白い事になってきたわ。先ず手始めに若菜の写真を手に入れなければ。  それも、とびっきりの奴をね……」
 そんな物を手に入れる事だってここ悪徳大路ならば容易い事だとヘレンならずとも分かっている事だった。




其の6


 珠美はちょっと失望していた。この拠点は今日で2回目だが前来た時よりも物が減っている。
「どうゆう事なわけですか先輩」
 じろりとにらまれた先で留守番の生徒が縮み上がる。
「いや、その、金がなくて」
「お金は前回置いて行きませんでしたか?」
「うっ」
 珠美は完全にその場を支配していた。
 いや勧誘されてここに来た瞬間からこのアジトの女王様になっていた。
 なにせいくつかあるテリトリーの中でもここは活動資金も底を突きこれと行った手柄もなく他から見捨てられていたのだから 。
「他の先輩方は何処へ行ったんですか」
「あっ見回りに」
「また森の散歩ですか」
 グサッと留守番の胸に刺さる。
「嫌その、でもね… 最近この森のそばで怪しい奴等が行動してるしそれを確かめに」
「でも手出しできるような武器だってないじゃない」
 まるでその言葉を待っていたかの用に留守番は胸を反らす。
「ふふふ…… 実は有るのさ〜 トカレフがついに入ったんだよ〜」
 勝ち誇った表情も長くは続かなかった。
「私がお金を置いてったからでしょ」
「はい、その通りです」
 こんなもんである。
 とそこへいきなり誰かがどやどやと帰ってきた。
「おう、捕虜がいるぞ! 尋問だ」
 しかし意気の上がる先輩たちの歓喜が前から段々としぼんで行く。
 珠美を見たからである。
「いらしたんすか……」
 いきなり敬語である。
「捕虜ってどこ?」
 珠美も冷たいのである。
「あっ こいつっす」
 でもそう言われた方はけっこう褒められたのかと勘違いしている様子で、見捨てられる訳である。
「ほらこっち来いやぁ」
 ここぞとばかりに威勢よく(褒められて浮かれたのか)先輩たちが捕虜を前へと差し出して来る。
 しかし捕虜というには悠々と前に出てきた少女と珠美の目があった。
「「 あ ぁ ! 」」





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