第三話「鋼糸」
「厄介な相手に目を付けられちゃったわね……」
焚き火を囲みながらフローライトはアイシャに説明していた
「何故……私のなのかな?」
アイシャは今だに相手の顔を知らない、にもかかわらず凌辱は骨身に沁みていた。
「隣の国で王位の変動があったろ……まあ、あんたみたいな冒険者家業だと気にならない事の方が多いかもしれないけどね」
冒険者の国内通過を認めない国は今の所存在しない、国内の警備の者だけでは交通の安全を確保しきれないのが現場であるからだ、盗賊や野盗の類なら規制も出来るがモンスターはそうはいかないから、商隊の護衛には冒険者を護衛に雇うのがもっとも安価で安全なのだ。
「誰なの?……」
結果として今回の仕事を断る事が出来なくなり、不安ではあったがフィルを置いて今は旅の途中である。
「おそらくは傀儡師でしょうね……」
傀儡師というものの存在はアイシャも聞いた事があった……
「なんで……そんなやつが」
「この国に逃げて来たのでしょうね」
そして隣の国の王位継承問題に話が繋がるらしい事がアイシャにもわかった。
「まあ、だから今回は私が付いて来てあげたんじゃ無いの! 大船に乗った気でいなさいって……」
フローライトは国内でも5本の指に入る魔導師で冒険者としてはアイシャの大先輩にあたる。
初めての冒険を経験したのもフローライトのいるパーティだった、そしてその頃から彼女の外見はまるで変わっていない、彼女だけが時間から置いて行かれているようなアイシャはそんな不思議な感覚を憶える。
「ありがとう……ございます……」
「そんな事言いっこ無しよ、私も久しぶりの外だし羽を伸ばすわ」
そんな会話の最中にバスの方から依頼主の商人がアイシャを呼ぶ声が聞こえて来た。
「行ってらっしゃいよ、あなたが気にいられてるのでしょう?もっとあいそ良くしておいても損は無いと思うけど?」
「でも……男なんて私は興味無いですから……」
馬車の方へ駆けていくアイシャを見送りながらフローライトは思うのだ。
『まったく、お堅い娘だよねぇ……潔癖なのもいいけどさ』
そして、見回りをしようと重戦士に声をかけてフローライトは森に入った。
「どうも、今回はゴタゴタしちゃって……」
一台の馬車は依頼人用の寝台が設えてある高価なもので冒険者達が野営している時、商人はここで睡眠をとる事が多い、それでも余裕のある商隊だけで普通は一台でも多くの馬車に荷を積んでいくものなのだが
「いいや、こちらとしても良いものを見して貰ったしだいで、喜びこそすれ文句を言う事など……」
酒場の前でお漏らしした時は、この商人と打ち合わせをする予定だった、つまりあの酒場の中から見られたくも無いあの痴態を目撃されたようものだ……
「すいません……お見苦しいものを……」
嫌らしい視線いうものに敏感になっているらしく、商人の視線が妙に身体に纏わり付いている気がしてならないアイシャだった。
「いやいや、コレクションも増えたと言うものですよ、はじめからそういう趣味だといって下されば……私だってもっと別のアプローチをしたのに……」
商人は意味のわからない事を言い出した、そして何やらマジックアイテムにかけるようなコマンドワードを唱えると
「ほらご覧なさい……」
商人のベットの脇で照明代りをしていた水晶球が突然空間に映像を写し出しはじめる
「ビデオクリスタル?」
高価な代物だ、一般市民は愚か魔導師でも滅多に持っているものがいないという代物だ、そしてその映像が街中で堪えられずに漏らしているアイシャを写し出す。
「な! 何てものを!」
慌てるアイシャに
「まあまあ、これだけではないのですよ……ご覧なさい」
そうすると写し出される彼女の姿が、森の中でしゃがみおしっこをしているものに変わった。
「これ……」
「そう、前回の旅の折りにあなたが森の中でしたものですよ、このあとぶっというんちも排泄しますよねぇ」
たしかに冒険中はトイレなどと言っていられないから離れた所で一人で済ましてしまうようにしていた。
「まだまだありますぞ、私はねあなたのそういう姿が嬉しくてね、しかもあなたも見られるのが趣味だったとか?」
茫然となっていたアイシャは必死で否定した
「違います! 私そんなことを趣味になんかしてません! これだって傀儡師という輩に罠にはめられて!」
しかし傀儡師の言葉に彼は動じる事の無く
『気が付いたのか?……あの魔導師に聞いたんだな、良かろう傀儡師の力をみしてやろうじゃ無いか』
商人の喋る声がいつの間にかあの男の声になり馬車の入口が突然開くとそこにはトロルがバリバリと仲間の屍を食らっていた。
「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「さあ宴の始まりだ……」
食欲を満たしたトロル達は一斉にアイシャに向けて性欲に彩られた視線を向けた……
夜の森は命に満ちている、だから実の所警戒はしやすい……熟達の冒険者ならばである……
「何も無しか? 何やら嫌な匂いがしない?」
重戦士に話しかけてみる。彼はこの前のアイシャを無理矢理凌辱してしまってから無口になっていた。
「まったく、若いね君も……お姉さんに話して見なさい……相談に乗るよ?」
フローライトは彼の初陣にも付き合った憶えがある。
「俺……責任取りたいと思ってよ……でもどうしたらいいのかわかんないんだ、結婚っていってもよ……アイシャのやつきっと嫌がるぜ、でも……あんな事しちまって、ましてや俺達がアイシャに惚れてるなんてあいつ思ってなかったんじゃ無いのかな?」
まったく体格ばかり大きくて
「元気だしなって、今早急に事を運んだっていい事無いよ、彼女男ってものに怯えちゃってるからさ……」
肩をがっくりと落として
「だろうな、そう思うぜ……しかしよ俺は不器用だから、どうしたらいいのか」
フローライトには可愛くてい仕方が無い
「時間が解決する事もあるってことよ、一緒に冒険には来たろ? 大丈夫今回の冒険が終る頃には元のアイシャに戻ってるって……」
「そうだよな! そう思うよな!」
彼はフローライトの両手を掴むと嬉しそうに何度も何度も頷きながらブンブンと上下に振り回した
「こら! 痛いよ……放しな………………」
その変化は突如として起こった、彼女の口からの言葉が途中で途切れた。
いやあたりを包む空間ごと一切の音を発しなくなっている、そして目の前の重戦士の身体は弾けるように空を飛び大木の根元まで行くそしてフローライトの身体に幾筋もの傷が浮かび上がって血をにじませた
『真言魔術師を封じる手だては在るんですよ……』
フローライトの頭に直接話しかける声があった、そう傀儡師の声だった。
『この前はいい所で邪魔をしてくれましたね、これはほんの報復ですよ……』
フローライトを取り囲むように張り巡らされていた細い細い糸が彼女の衣服を裂き飛ばしていく。
『私も魔術を使いますが真言魔術じゃ無いのでね……このサイレンスの中でも使えるのですよ、そして運良くあのバカな男があなたがアイテムを使う隙を無くしてくれたのですから……ありがたいですね』
そうなのだ、真言魔術は音を発する事が出来なかったら術をかける事が出来ない、だからそれを予防する為にいくつかのアイテムを隠し持ち対抗するべきなのだが、両手が塞がれていてはそれも出来なかったのだ。
『さてフローライト……あなたは魔導のために何を犠牲にしているのでしょう?』
一方的にいたぶる気になっている傀儡師に抵抗出来ないのが悔しかった
『まあ、その状態ではお話しは出来ませんね……申し訳ない……あはははは……』
普通に魔導で勝負になれば傀儡師にフローライトと戦って勝てる見込みは無い、が条件さえそれえばそうではないという事だった。
『外見を見ればだいたいの察しは付きますよ、処女性か? 老いる事を止たか?……まあどちらかと言う事でしょうね……』
魔導の契約にはたえず犠牲を伴い、それは永遠に視力を失ったり立てなくなったりと人それぞれが契約によって何かを犠牲にして手に入れるのが魔導というものだった……
『じゃあ私は結果を知りたいから……溜めさせてもらうとしようかな?』
フローライトの身体は糸に吊られるように空中に持ち上げられて
『さあて……このあたりには媚香が漂っていてね……次に来るモンスターは何かな?処女を奪われるか? それとも年齢を食うやつが来るかもしれないからね……』
笑い声が心の中に響き渡って来る。
次の瞬間、糸を伝うようにスライム状の生き物が下って来た……
『自分から尻の方を向けて尻の穴ででも迎え入れるんだね、そうすれば処女を失わないかもしれない……』
笑い声が遠ざかり、無音の中でフローライトは必死に身体をもがいて動かしていた……
身体を弄ぶのは何時も死闘を繰り広げた結果として勝利を納める事の出来るほどの存在だった
「いやぁああああああああああああああああああああああああああ」
トロルは肉体頑健にして強固
「あ……壊れる……壊れちゃう……やめてぇ」
仲間達の貪り食われた死体の中で肉体を翻弄され、一方的に悦楽のはけ口にされ続けることは痛みをともない、そして快楽には変わる事の無い地獄だった
『気持ちがいいかい?』
そして男は帰って来た……
「いやぁあああああああああああああああああああああああああああ」
ここに弟がいないだけがアイシャにとっての救いだったのか……
『あの町のなかで私に嗜虐されていた方が幸せだと思える状況をくれてやろう……』
その声を境にトロルは活動を活発にし狭いアイシャの肉壁を肉の凶器は摩擦で擦り切れそうなほどに激しく交尾活動を行なう。
『さあ……楽しんでくれたまえ、トロルは本来他の牝と番って種族を増やす生き物だ……子を宿す事になれば、さぞ楽しい事になるだろうね……』
傀儡師の声はさも楽しそうに語られる
「ひぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
そしてトロル達は交代でアイシャの中に欲望の子種を植え付けていった……
「がふ……」
スライムはフローライトの直腸の中で排泄欲求を高めながら蠢いていた……
『油断したとはいえ……こんな事になるとはね……』
排泄欲は思考を鈍らせて彼女を苦しめる、なにより今は声を出せない状況なので魔術に頼れない……
『あの男がああ言った以上両方のモンスターが用意されているのでしょうね……』
魔導師として色々な修羅場をくぐったフローライトは思考が鈍っていても考える事をやめない、いややめれなかった
『はっ……オーク……』
目の前に一体の豚の顔を持ちずんぐりした体格の生物が現れた
『まずは……私の処女がほしいのね……来なさいよ』
その巨大な逸物はどう考えてもフローライトの身体に収まるとは思えないサイズであった……
『ただのオークではないがな……特と味わうがいい……』
『あうっ……』
そしてフローライトは血を流す……それが処女血であるのかオークの大きすぎる逸物ゆえに裂けた結果なのかはわからないが……
「なにか声がしますね……」
騎士の一人に声をかけたのは見目麗しい姫君だった
「商隊がモンスターにでも襲われているのではないかと考えますが……」
騎士の答えに姫は青くなる
「助けなければいけません」
騎士は本来の目的である姫の護衛を離れられないと言い
「でも今は助けを呼ぶものがいるのです、いいえ行きなさい!」
今は王妹として隣国へ挨拶の旅路の途中であるから、危険は避けなければいけないのだが、王同様言い出したら聞かないのがこの姫である
「よし!」
そして……この遭遇こそが傀儡師の待っていたものでもあったのだった……
つづく