第1章「侵食姦」
闇の住人がこの世界に姿を表すようになっていったいどれほどの時間がたっているか正確に言い表す事の出来る人は少ない。
なぜなら、それはある日突然我らの前に居て、その事を知った多くの人にとってそれは口外無用の事象になる、あるものは飼い馴らされ、あるものは精神を食らわれ、あるものは彼等を増やす為の苗床となる。
だれもその事を口にしないから、それらはいつの間にか禁忌となる過去において妖怪と呼ばれ現代においては都市伝説へと変わっていく、それらは根も葉もあって語られ、そして恐怖の対象として存在しつづける。
そう、彼等のとって私達人類の多くは無力なる存在でしかない、今はである……事象が集積し特異点を洗い出し、一つづつ日の光を当てていく、そういう活動がようやくはじまった……
これから語られるレポートはその事象の一つを紹介したものだ、白日にこの事象を曝す事によって不要の恐怖を取り除きたいと私は考えている……
満員電車に身体を押し込んで片道30分の通学
「ん?」
彼女はいつもならあと10分早い電車に乗っている、今の学校に通いはじめてすぐに痴漢が連続した為混んでいる時間を外さなければいけなくなったからだ。
『まただよ……もうイヤになるなぁ』
ほんの少しの朝寝坊に朝からブルーになる、が彼女もそのままおとなしい娘では無かった。
『とッ捕まえてやる』
程よく締まった肉体には瞬発力の高い筋肉が詰め込まれている。
部活でレギュラーを定番にしてくれる自慢の肉体だった、男性達はそれとは違った目で彼女を見るのだが彼女はその事の意味を深く考えもしない。
「この人痴漢です!」
自分の尻をさわっていた手を掴むと勢いよく頭上にまで上げた。
「きゃぁ」
ドヨドヨ
車内は一瞬にして静かになり視線が集まる、大半の男性陣の目には捕まった奴への憐憫があるようにも見えた。
「え?」
手を掴まれていたのはOL風の若い女性だった。
「私?」
「ご、ごめんなさい!」
そして、車内はもうその事に興味を無くしたようにそれぞれの日常に戻っていく
「お嬢ちゃん可愛いけど、さすがに痴漢は無いんじゃないかなぁ」
少しどけている女性の顔には怒っているような様子は無い。
「ホントに何と言っていいか、おっかしいなぁ私のお尻さわってた奴の手を握ったと思ってたのに、逃げられるなんて」
彼女の悔しそうな顔にその女性もさらに笑顔を作って
「女性として魅力的だって事よ、自身もっていいと思うわ、ね」
大人のゆとりと言うものだろうと思う、が納得はしたく無かった
「でも無料でさわられるのはちょっとムカッと来ますね」
と、言うことで無理に押し込めることにした。
「きゃぁ!」
その時に電車がカーブでブレーキをきかせた、そのくらいで転ぶような運動神経はしていないがバランスを取って動かした足が何か踏んだらしく滑ってしまったのだ。
「大丈夫?」
OLの女性につかまって安定を取ってしまっていた。
「何度もすいません、ホントにもう私ったら」
振り向いて足元を見る、ないやら粘着質の液体で濡れていた、視線を上げた時自分のスカートのお尻の部分を中心に同じ白濁した液体で汚れている事実が彼女を絶望させた。
「クリーニングしないとダメみたいね」
動けなくなっていた彼女を駅に下ろし、トイレまで連れていって水洗いを試してまでくれた女性は残念そうにそういうとジャージに着替え終わった彼女に紙袋に入れた制服を渡した。
「何から何まで……ご迷惑を……」
彼女の落込みようはひどいものだったが何はともあれ学校に行くというので二人は分かれた、彼女は女性の股下から滴るあの液体に気が付かなかった。
朝からのダークな気分は学校に着いてからも続いていた。
「まったく……いやになるわよね、普通電車の中でするかなぁ?」
ジャージで登校した以上友達にも隠せないので、愚痴に付き合わせる。
「あはは、でも気がつかなったんじゃ仕方ないじゃんか」
軽く言ってくれると思う
「それで先生に呼び出されて隙があるからだって説教くらってごらんよ、たまんないよ」
女子校として男女交際には五月蝿いのだが、まあやってる連中はやっていたりするからホントに電車でそう言う目にあったのかどうか疑ってるのかもしれない。
「まああんたは目立つからね、顔は十人並みだと思うんだけどねぇ」
その通りだ、鼻の高さがもう少しあればとか、カップがもう一つ上ならとか普通に悩んでいるのに、妙に痴漢にあうのは健康そうな肢体の所為だろう。
「嬉しくない、私を助けてくれたお姉さんの方がよっぽど美人だったのに」
「じゃあ相手はロリコンだったんだよ、うんそうに違いない」
気軽にいってくれる
「もう!」
「走っておいでよ、部活サボる気は無いんでしょ?」
それはその通りだった、レギュラー取りは熾烈、一日だってサボる気は無かった。
「うん……行って来るよ じゃあまた明日ね」
友人達はこうやって解放されて、それぞれいつもの放課後に紛れていく
「やっぱり調子出ない……」
部活のあともう誰も残っていない部室で一人今日の出来に落ち込んでいた
「まあこう言う日もあるかな? 切換えないとね」
ガタン
そう言って帰ろうとした時にその世界が異様である事に気が付いたのだ。
「なに?この匂い……」
それは朝に嗅いだ匂いだった。
「気持ち悪い……」
そして部室の窓を開けようと窓枠に手をそえるとそこが濡れていた、あの粘液質の液体で
「きゃぁ!」
不安が増大した
「これって男の人のあれじゃ無いの? 何でこんなとこに付いてるの?」
疑問を口に出して状況を整理しようと試みる、が理解を越えた事象には答えは帰って来ない
「きゃぁああああああああ」
何かがお尻に触れた、そして振り向いた時に
「え?」
粘り付く何本もの触手が屹立していた。
「ひっ」
そしてそれは一斉に襲いかかって来たのだ。
「あぐ……」
身体中に巻き付いて来るそれは彼女の理解を越えていた、抵抗らしい抵抗をする暇も無く縛り上げられて行く。
何本かは胸の上下に巻き付いてちょっとコンプレックスのある胸を剥き上げていく、何本かは口に入り怪しい液体を喉の奥に流し込んでいく。
手足を拘束するものは鍛えられた筋肉の動きを確かめるように動かしては拘束し拘束しては引っ張る……
そして、ついにブルマを取り除いた時
「いやぁあああああああああああ……やめてぇなんなのよあんたは」
彼女は最後の力を振り絞った結果だろうか触手の集まっている一ヶ所を蹴り飛ばしていた。
「逃げなきゃ……」
蠢く触手の一群は人目を嫌うようにテーブルの下へと逃げる。
「逃げなきゃ……逃げなきゃ……」
いちはやく触手との距離を測ると窓から飛び出した。
「逃げなきゃ……逃げなきゃ……逃げなきゃ……」
外はもうすっかり暗くなっていて、彼女が濡れたTシャツだけの姿で走っていても見ているものはいなさそうだった。
学校の校庭を横切り時折後ろを振り向きながら、一目散に走る、こんな時運動タイムを計ったらきっと凄い事になっているとはこの時には考えてもいられない。
「外だ……やっと」
校門までやって来ると少しだけ落ち着いて来た門柱に手をかけて後ろを確認する。
「大丈夫……追って来てない、へんなうねうねしてるのは早かったけど……机の下に潜り込むスピードとかは遅かった、追い付けないはず……」
そこまで自分で口にだしてようやく安心したのか、自分のかっこうが気になった。
「このまま電車には乗れないなぁ……」
Tシャツ一枚に下はノーパン……痴漢にあうだけじゃ済まなそうだと思えた時
「今帰りなの?」
「お姉さん……」
朝のOL風の女性が立っていた
「またひどいかっこうをしてるわね」
「実は……」
このさい他に助けの手も無い事から、この女性にまた縋る事に彼女は決めた、がそれを言い出すよりもはやく
「事情は分かってるけどね、逃げちゃダメじゃ無い」
女性の腕が彼女の肩をしっかりと掴む
「え?……なに?」
また混乱がやって来た
「彼が来たでしょ? 私がマーキングしたんだもの」
そして背後で気配が大きくなった、今度は振り向かなかった、振り向いても事態は変わらない事が分かっていたから
「嘘……」
女性の手から触手へとまるで受け渡されるように彼女の所有者が変わる、地面を引きずるように校舎へとまた連れ戻されていく。
「いやぁあああ……なんで……どうして私なのぉ……いやぁああああ」
叫ぶ声も途中で触手に遮られるた……
一際太い触手が今度こそ彼女の最奥へと侵入するまでに時間はかからなかった。
「ひぃ……」
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
「あああ……」
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
「やめてぇ……」
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ
ポコリッ……
そして卵を植え付け続けた。
解放された時もう彼女は精も根もつき果てていた。
つづく……