舞うが如く優美なモモコの動きが、突然激しく躍動する。
 と、裂帛の気合いで鋭く積み重ねた煉瓦を一撃で打ち砕く。
「はっ!」
 呼吸を整えると、振り向き様に十段のブロックを右の踵落としで破壊。
 さらに十段の煉瓦を右肘打ちで粉砕する。
「すげぇっ!」
 モモコの舞いを見ていた子供たちは驚愕と感嘆の叫びをあげ、一斉に立ち上がる。
 周囲の愛弟子たちから尊敬と羨望の眼差しがモモコに注がれていた。
「人間に不可能はないわ……。努力すれば誰でもできるのよ」
 モモコが微笑みを讃えたまま、愛弟子たちを迎えた。
「本当に、努力すればできるの?」
 子供たちは目を輝かせてモモコに詰め寄る。
「己を信じ、決してへこたれず、最後までやり抜けば、ね」
 モモコは一人ひとりの顔を眺めていった。
「できるかな、みんな?」
 優しい教師の教えに、子供たちは頷き返す。
「じゃぁ、約束しましょう。モモコ先生との約束」
 モモコは両手を合わせて印を組む。オーラパワーを引き出す時に使う手印だ。
 子供たちも笑い合って従う。
 稽古の終了として、三十秒間の瞑想をするのはモモコ先生の決めたルールである。
 モモコは長い睫毛を震わせて瞼を閉じた。