「でも……怪物がいないってことは、モモコ先生が勝ったんだよね?」
「そ、それは……」
 モモコは返答に困った。
 野球帽の少年は悪戯好きな困った性格をしているものの、モモコのことを尊敬していることは確かだ。
 真実をありのままに話すわけにはいかないが、虚偽の発言で子供を騙すような真似をするほどモモコの性格は歪んでいない。
 それに地帝獣イグアドグラーと地帝獣カビラドグラーもどこかに潜んでいるかもしれないのだ。
 早く、子供たちを避難させなければならない。
 モモコがどう説明しようか迷っていると――。
「うっへ〜。なんだよ、この汚い染みは? ぐしょ濡れじゃないか!」
 面白そうに口元を歪めたスポーツカットの少年は、芝生に転がっていた太極拳胴衣のズボンを拾い上げていた。
「あっ……それは……」
 モモコの整った美貌が耳まで赤く染まる。
 それは地帝獣イグアドグラーの卵を産み落とす際に、たっぷりと快楽の証を垂れ流してしまった証拠に他ならない。
「う〜ん。いい匂いじゃない。すぴすぴすぴ」