ビュウオオオオオ!
 獣の鳴き声を思わせる音とともに、凄まじい寒気の風が吹き荒れた。
 同時に、白く怖い氷雪が舞い踊る。
 まだ初夏にも関わらず、緑が覆い茂った公園の風景が一変していた。
 サーベルドグラーが立ち去った方向は、辺り一面の銀世界と化している。逃げ遅れた人々が氷の棺に閉ざされたオブジェと化していた。

「くっ! 早く、止めないと大変なことになるわっ!」
 モモコの表情は、まだ快楽の余韻が色濃く残っている。大地を踏み締めて立っている太腿は疲労でガクガクと震え、その内股は淫らな液体でぬめぬめと潤んでいた。
 それでも戦隊ヒロインとして戦えなくなったわけではない。
 左手首に装着してある変身道具――マスキングブレスが心の支えだ。
「この災厄は、あたしが阻止してみせるんだからっ!」
 踵を返して走り出すモモコの言葉には、確固たる意志が感じられた。
「おいおい、あの女は戦うつもりだぜ? 地球のことわざである、飛んで火にいる夏の虫って、まさにことじゃないのか? アッハハハハ!」
 インダベーから嘲笑の声がモモコの背中に浴びせられる。
「いや、そのまま逃げる気じゃないのか?」
「俺が捕まえてゆく」
 三匹のうち一匹だけのインダベーがモモコの後を追いかけてゆく。