自分で牝奴隷だと認めてしまったことで、掌に汗が滲む。
「あの……これをお願いするわ」
 モモコは気持ちを誤魔化すようにメモを手渡す。
「代金は振り込まれてるから、少し待ってな」
 中年の店主はニヤニヤと嫌な表情を浮かべ、モモコを全身を舐めるように眺め回しながら、ガサゴソと商品を選んでいた。
「あれ? モモコ先生じゃん。何してんの?」
 いきなり聞き覚えのある声が後ろから響いてきて、モモコは腰を抜かしそうに驚いて悲鳴を上げそうになった。
「……え?」
 振り返るとそこには、十代前半の少年が瞳を輝かせていた。野球帽を後ろ向きに被った小学生――モモコの太極拳の愛弟子である。
「あなたは……どうしてこんなところにいるのよ」
 小学生に似つかわしくない大人の店にいることにモモコは戸惑う。
「え〜、質問してるのはこっちなんだけどな〜」
 野球帽の少年は屈託のない笑顔で見上げてくる。
 その隣には、スポーツカットの少年も見覚えがあった。
「この間、みんなの前で全裸でおしっこを漏らしたマゾ女じゃん」
「そ〜だよ〜。モモコ先生はねぇ……衆人環視でエッチなことをしちゃう、ド変態だもん」
 少年たちの裏表のない言葉が、モモコの胸を締めつける。
 ドキドキ……
 変態やマゾと罵られ、不思議と気持ちが昂るのが抑えきれない。
 自分はこのまま慰安婦奴隷であるべきではないだろうか――。

「ほら、霞先生も挨拶しなよ」
「あぅっ!」
 スポーツカットの少年が手にしているリードを引くと、ポニーテールの成人女性がふらふらと歩いてきた。
「霞ちゃん……?」
 手裏剣戦隊ニンニンジャーのモモニンジャーこと百地霞は、両手を腰の後ろで縛られているせいで抗うこともできず、よろよろとおぼつかない足取りで立っていた。
「……こ、こんにちわ」
 霞は頬を真っ赤に染めて、ぜぇぜぇと荒い息を吐いている。
 街角であるにも関わらず、衣服は一切身に着けておらず、首元に嵌められた革製の首輪がスポーツカットの少年の手に繋がっている。
 ポタポタ、ポタタ……。
 店の床に滴り落ちる水音。
 それは霞の股間から絶えず漏れる淫靡な音色。
「実はですねぇ、霞先生って……性欲亢進症を発症させたんですよ」
 スポーツカットの少年がニヤニヤと言う。
 性欲亢進症――宇宙帝国ザンギャックの慰安婦奴隷から解放された女性の中に、その症状が確認されている。
「明日は霞先生って、愛しの彼氏さんとデートらしくってね。今日中に100回イカせようってことになったんだよ」
「なんとか僕たちで99回まではイカせれたんだけど……それでも、霞先生が物足りないってだだを捏ねるから、デートが終わるまで絶えずバイブでも挿入れておこうって話になったんだ〜」
 スポーツカットの少年と野球帽の少年は平気な顔をして卑猥な話をする。
「ねぇ、霞先生?」
「は、はい! 私が頼みました」
 当の霞は全力で首をガクガクと震わせて頷く。
「この子たちに性欲を発散して欲しくって、わ、私、こんなに熱くなってて……すごくエッチな自分を八雲君に知られたくない……ああっ! 早く、イカせてぇ……」
 以前の百地霞はもっと貞淑な女性だったはず。
「霞ちゃん……」
 モモコは子供たちの言いなりになっている霞を呆然と見遣る。
 ザンギャックの慰安婦奴隷だった霞も相当な地獄を経験している。思いを寄せる男性がいるにもかかわらず、異形の牡どもに身体を嬲られたばかりか、大学生活も売春紛いを強要されていたと聞く。
 今はその身分も解放されたはずだが――。