「グルオオオッ!」
ガマロドグラーの肩の開口部から、何かがもぞもぞと這い出してくる。ガマロドグラーは体内に掌くらいの大きさの紫色の寄生蟲を飼っていたのだ。
ブブブンッ! ブブブブ……。
平たい球状の寄生虫は、薄桃色の翅を広げて浮遊する。
数は五匹。
「……こ、これは……まさかっ!?」
その寄生蟲には見覚えがあった。
だが、酸素の足らない頭では思考がままならない。
ピンクマスクはいまだにガクガクと震える脚に力を入れる。
絶対に触れさせてはならない――。
だが気付いた頃には、すでに手遅れだった。
ペタリ……。
一匹の寄生蟲がピンクマスクの胸の中央にある『5』のマークに貼りついた。
「そ、そこは……っ!」
オーラパワー変換装置――装着者が引き出したオーラパワーをエネルギーに変えて、マスキースーツの全身に行き渡らせる制御装置。
その途端、背筋が凍るほどの悪寒が身体を駆け抜けた。この寄生蟲は明らかに自分に害を成す物だと本能的に感じる。
他の寄生蟲は様子を伺うように宙を漂っている。
「――っ!」
嫌な予感がゾクゾクと駆け上がる。
「こんなもの!」
急いで剥がそうとするが、寄生蟲は瞬間接着剤で貼り付けたようにマスキースーツと一体化していた。まるでマスキースーツを貫き、モモコの柔肌に直接張り付いているような感覚さえある。
(離れないんなら、握り潰せばいいわ!)
力を込めて再度、寄生蟲に触れる。
プイイィィィィ!
ピンクマスクの思考を読み取ったように、寄生蟲は突然に羽を振動させる。羽音は次第に回数を増やし、胸を中心にピンクマスクの全身に衝撃波が駆け抜ける。その衝撃波はピンクマスクの動きを緩慢にさせた。
「あああぁぁっ!」
ピンクマスクは脳を揺さぶられて意識が朦朧する。
リンリンリン……。
乳首とクリトリスに装着された三点ピアスが衝撃波に反応し、鈴が鳴るようにブルブルと共鳴振動を引き起こす。
それはピンクマスクを戦隊ヒロインから牝奴隷に陥れる戒めの鎖。
「あああんっ❤」
途端に、フルフェイスマスクの中で熱い吐息を漏らすモモコ。
寄生蟲はピンクマスクの身体を隷属させてゆく。
「くぅっ……」
首を絞められたままのピンクマスクはガマロドグラーに縋りついた。無理矢理にでも身体を支えていないと、倒れてしまいそうな息苦しさ。
むにゅんっ……。
ピンクマスクの手が偶然にもガマロドグラーのペニスを触ってしまう。白いグローブの指先に伝わる固く熱い感触。
「あっ……」
手放すことが躊躇われ、そのまま握り込んでしまうピンクマスク。先走りの汁がグローブに浸透してくる。
ヒィィィィィン……。
寄生蟲はピンクマスクが宿主にご奉仕すると錯覚したのか、羽を休めた。
(あ、あたし……手コキしてる……?)
幸か不幸か、手に握ったペニスをごしごしと上下に扱く形となり、モモコは性的倒錯した思いに駆られる。
「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……」
今度は寄生蟲が光を放ち始めた。
「ううう……」
ピンクマスクの視界が真っ白に染まるほどの激痛が襲いかかった。意識が呆気なく暗闇に飲まれそうになる。
「あぐっ!」
寄生蟲の張り付いた胸部に激痛が走り抜けた。
ビリビリビリリッ!
寄生蟲の光は電流となり、胸部を中心に絶え間ない刺激が貫く。真冬に金属のノブに触れた時、指先を刺す静電気に似ている。
ただし、その何千倍も強力で全身を畳針で突き刺すようだ。
「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ!」
胸部から全身へと電流は広がり、そのたびに身体が上下に揺さぶられて拷問じみた苦痛が脳をシェイクする。
電流拷問によって身体は麻痺して動けないが、本人の意志に反してペニスを握った手だけは夢中で扱きまくる。
ぶくぶくぶくぅっ……。
白いグローブ越しの肉棒が膨れ上がるのを実感した。
「うああああああっ!」
何も考えることができない。
親指が完全勃起した亀頭の割れ目を抑え込んでいた。山間のダムが決壊する寸前かのように指でグリグリと栓をしてやった。
「グルオオオッ!」
ガマロドグラーは猛々しい咆哮をあげ、腰を突き出す。
ドピュルッ! ドバドバァァッ!
「いやぁぁぁっ!」
ピンク色の光沢感が麗しいフルフェイスマスクに顔射されてしまう。楕円形型の額に精液をぶかっけられ、花のモチーフを彩った可憐なデザインを汚される。黒いバイザーの視界もザーメンをかけられ、滑らかな曲線を描いたマスクを伝って、胸や肩にべとべとの粘液がこぼれ落ちてゆく。
「く、臭いぃぃんっ!」
呼吸器官のために完全には遮断できない精臭が、フルフェイスマスクの中に漂う。鼻から脳へと突き抜けた牡臭さに加えて、電流拷問に身悶えるモモコ。
その時、異変が起きつつあった。
ピンクマスクの額にある楕円形――装着者のオーラパワーの数値を示すインジケーターが急速に、その数値を減らしつつあった。
456――398――256――。
数値の減少は、ピンクマスクの戦闘力の低下と比例する。
ピィィィィイイインッ!
再び寄生蟲が光を放つ。
先程より強烈で黄金色をしていた。黄金色の光はピンクマスクの全身に広がり、それに応じて電流は止む。
やがて全身は黄金色に染まる。
激痛は治まったが、別の衝撃がピンクマスクを襲った。
「……ぁああああああああ――」
この光は自分から大切な物を奪い去る。
孤独感からピンクマスクは絶え間ない悲鳴をあげた。
次の瞬間!
「――ぁぁぁあああぁっ――」
黄金色の光に輝くモモコが現れる。
強制的に変身解除されていたのだ。
自らの身体を抱きしめ、悲鳴を続ける。
全身が燃えるように暑く、すべての毛穴から汗が吹き出る。
「――ぁぁっ……ぁ……ぅ……っ……」
悲鳴が小さく切れ切れの声になり、黄金色の光も胸部に収束していく。熱量もそれに応じて胸部に終結する。おっぱいはそれこそ火串を押し付けられたように熱いが、そこ以外はもうほとんど感覚がない。
少しずつ自分の身体が冷たくなって精気が抜けていく感覚。
「……ぅ、……ぃゃっ……ゃだっ……ああんっ❤」
悲鳴が枯れた喘ぎ声に変わり、呼吸する感覚すらない。
ポンッ。
シャンパンの栓が抜けるような音がして、身体から寄生蟲が離れた。
「え……?」
急に眩暈を覚える。
全身から力が失われ手足がだるくなる。
体重が何倍にも重くなったような気がした。ガマロドグラーの下半身に持たれかかり、ビニール人形から空気が抜けるように、へなへなと尻餅をつく。
「あうっ……」
身体中の筋肉が弛緩する。
支える力すらもなくずるりと崩れ落ちる。
「な、なによ……これは……?」
まるで何千メートルも走ったように全身の筋肉が疲弊していた。
立ち上がるどころか、腕を突っ張って身体を支えるだけで精一杯だ。
「……ち……っ……からが……まった……く、入ら……ない……わ……」
ただ喋るだけでかなりの体力を必要とする。鉛でも飲み込んだように身体が重い。少しでも気を抜けば突っ伏して動けなくなるだろう。 |