驚いたモモコの両腕が跳ね上がった途端、寄生武器がモモコの両手に絡みつきながら伸縮し、太い木の枝を通ると、勝手にスルスルと長さを調整してゆく。
「く……あうっ……痛!」
 モモコが困惑する中、両腕は頭上高くまで引っ張り上げられ、両肩に走る鈍痛に呻き声を上げた。足は力なく投げ出され、靴底は地面にギリギリに届かない。
 モモコと同居生活を送っているせいか、寄生武器がモモコを嬲るための主導権を持っていた。すでにアングラー兵の本体よりも知恵が上回っているかもしれない。
 高手縛りに吊るされたモモコに対し、アングラー兵が生きている武器を鞭状態へと変化されており、モモコに嫌な視線を向けていた。
「……鞭で打とう……って、言うの……?」
 時代劇テレビで目にする、罪人に鞭を打って拷問する行為と類似していた。アングラー兵たちからすれば、憎き敵であるマスクマンの女戦士を、思う存分に痛めつけることができる。貪欲な欲情の視線に晒されたモモコは、心に恐怖を抱いてしまう。
「くっ! やってみなさいよ!」
 モモコは言葉が通じないと思いつつも、文句を言う。
 その途端――ビュンッ!
 風切り音を立てて鞭がモモコの背中に叩き付けられた。
「あぁぁぁっ!」
 たまらず苦鳴を漏らしてしまうモモコの身体を複数の鞭が唸りをあげて打つ。
 バシィ! バシィ! ビシィ!
「うぐっ……ああっ!」
 鞭に打たれるたびに、モモコの唇からは悲痛な呻きが漏れた。
 皮製のレザージャケットが鞭を歓迎するかのように、激突音を鳴り響かせる。純白のブラウスが黒い染みを残す。プリーツスカートが引き裂かれてスリットを作りだした。剥き出しの足元にはクッキリとした鞭跡を付く。短いヒールの靴はすでに脱げ落ちている。
 バシィ! バシィ! ビシィ! バシッ! バシッ!
 身動きも取れぬモモコの肢体を、アングラー兵たちの握った鞭が打ち据える音が辺りにに響いた。
「きゃあっ! あああっ! あぐぅっ! うあああっ!」
 たまらずに目を閉じたモモコは悲鳴を上げた。
 すると鞭打ちは突然中止された。
「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ……え?」
 突然の休憩にモモコは目を開けてみると、アングラー兵たちがモモコの顔を覗き込むように、近付いていた。
「あたしが……悲鳴をあげて……満足なの……?」
 思いついた考えをぶつけてみた。
 アングラー兵たちは、嬉しそうに笑い合う。どうやら当たりだったようだ。モモコの反応を伺うように拍手までしている。
「……ま……まけない……わ」
 モモコも小さな声でそれだけ言うのがやっとだった。抵抗の証として悲鳴を上げることだけはこらえようと思う。
 桜色の唇を噛み締めて、闘志の炎を消さない。
 アングラー兵たちも次第に興奮のボルテージが上昇してきたのか、威力を落とし、手数を数倍に跳ね上げた。
(な、なんとかしなきゃ!)
 モモコはアングラー兵たちに辱められた格好のまま焦燥にかられていた。しかし、どんなに力を込めてもその束縛から逃れることができない。
「んんんっ!」
 少しずつでも手首に巻きついた手枷に緩みを作らせようともがくのだが、お尻の奥に繋がった寄生武器が腸内を責めたててくるのだ。