「はるちゃん先生〜っ!」
 その声を聞いて、教育実習生である森川はるなは、笑顔で振り向いた。
 切れ長で思慮の深そうな瞳、美しく通った高めの鼻梁、可憐な朱唇。黒色のロングヘアーを流した大人びた印象の持ち主だった。
「もう……森川先生でしょ」
 紺色のレディーススーツを身に包んだはるなは武蔵野学園高校を卒業した後、有名私立大学に進学した。そして教師になる夢を叶えるため、教育実習生としてこの高校で赴任し、実習の真っ最中のことだった。
 それが三日目となると、明るく朗らかな先生は、生徒から『はるちゃん先生』と呼ばれ親しまれていた。