すると、反射的に「きゅうひゃくろく―」と答えを口にしようと数美を制しながらゴーミンが言った。
「解くのはおまえではない。おまえは教師だろ。解くのは生徒たちだ。」
「一、二年生には無理ね。本当なら三年生ならできるはずだけど、今の子たちはまともに授業できていないから、一部の子を除いてとても無理だわ!」と数美は頭の中でつぶやいた。
「生徒たちに一問ずつその数式を解かせ、制限時間内に50人が正解したらOKだ。」
「せ、制限時間は?」
「2時間だ。約2分半ごとに1人正解者が出ればクリアできる。難しくはないだろう?」
「……」
 とはいえ、ザンギャックのすることだ、何か企みが仕掛けられていると思った方がいいだろう。数美は無言のままゴーミンを見つめ返す。
「但し一人の解答する回数は一回だけ。間違ったらもう答えることはできない。それに当然暗算でなく筆算で解いてもらってOKだが、スマホの計算機能や電卓などの使用は認めない。貴様が授業の時のように子供たちに計算のやり方を教えるのは構わないが、答えそのものを教えるのは無論禁止だし、お前以外の第三者が答えを伝えるのもNGだ。それから、問題である数式は、黒板や紙などに書き写したりしてはならん。解答者には下着に浮かび上がっている数式を直接見せるんだ。口頭で問題を伝えるのもダメだ。ま、とにかくまっとうな方法で50人が120分以内に正解すればいいだけの話だ。」
「も、もし時間内に達成できなければ?」
「簡単なことだ。別の問題で0人の状態からやり直ししてもらう。失敗しても誰か人質の命が失われる訳でもなければ、どこかで爆弾が爆発する訳でもない。成功するまで単に何度でも繰り返しやるだけのことだ。」
「繰り返し……」
「ま、人間には体力の限界があるので永遠には無理かもしれないが、成功しなければ貴様が困ることになる。」
「な、なんなの!?」
「貴様が穿いている下着は、成功するまで脱げない仕組みになっている。つまりずっと失敗したり途中であきらめたりすれば、貴様は下着を新しいものとは穿き替えられん。」
「な、なんですって!」
数美は愕然とした。
「ついさっき迄、全裸でいさせたくせに……今度は脱げないって言うわけ?」