「何杯だって飲めそうだぜ」
「おう、これはこんな田舎の街に名産が出来た瞬間に立ち会っちゃったなぁ!」
 笑い声が店内に溢れていた。
「おう、もうお替りお願いしちゃおうかな」
 皆ハイになっている、詩織だけが疲れた顔をしながらも、ジョッキに注ぎ続けていた。
「はい、ただいま参ります……」
 脇に立ちジョッキにチョロチョロと注ぎ始めるものの、直に出なくなってしまう。
「半分で一杯分料金取るつもりなの詩織ちゃん! 早く入れておいでよ」
「すいません、ビールがもう品切れで、最後の半分はサービスで」
 お店に用意されていた全てのビールが無くなってしまったのだ。
「美人ビールもっと仕入れておいてよ!」
「御贔屓に!」
 全員が顔見知りみたいな小さな共同体なのに……何かに浮かれている、詩織の肉体に浮かれているのだ。
「じゃあ、最後のかんぱーーい!」
「「かんぱーーーい!!!」」
 詩織をくたくたにさせてなお、お客は盛り上がっていた。