「帰るわ……」
 下宿生に与えられた衣服を纏って、詩織は畜舎から家にへ向けて歩き出す。
「詩織ちゃん、そのままでいいの?」
 冷やかすように尻尾をもう一度指差してくる。
「負けない……私は負けない……草太朗さんには……ぜったい」
 もう詩織の視界に草太朗しか無くなっている様子だった。
「ちぇっ 社長が羨ましいぜ」
「本当か、どっちがいいんだよ? 俺たちは果実をもいでるんだぜ……」
「ああ」
 下宿生達は作業に戻りながら、詩織の後姿を見送っていた。