「社長との寝室で裸になってから来てくださいね」
 そう、彼は最後に詩織に言い付けたのだ。
「こんなの無理だわ……」
 ゆっくりと玄関に向かい、そしてドアを開ける。大地が広がり冷たい風が吹き抜けていた。
「どうするの? どうしたらいいの?」
 牧場の周りには他の家はないとはいえ、裸で家を出るなど考えられない。
「ああ……」
 長い逡巡、そして一歩をようやく踏み出した、それこそ玄関で裸でいる所に何かの拍子で目を覚ました草太朗さんに見られることの方が怖いと気が付いたから……