ピチョン……
 最後の一滴まで夫婦で愛用している洗面器に収められていた、いや激しく噴出している時の飛沫は草太朗さんに降りかかってしまっているはずだった。
「詩織ちゃん最高!」
 悲哀に暮れる詩織を取り囲みながら、ゲラゲラと下宿生達は笑い声をあげていた。
「ああ……赦して……もう許して」
 笑い声も、詩織の慟哭も草太朗さんに聞こえるかもという不安感は何時の間にかなくなっていた。