映研の展示場の中へ入った途端、詩織の側に一人の男性が近寄って来た。
「よく、来てくださいましたね、奥さん、あの日の夜の事は我々としても忘れられない思い出ですよ」
あの場にいた一人、部長だと名乗るこの男を詩織は覚えていなかった。
「ほら、こちらへどうぞ」
映研上映会の最前列に詩織の席が用意されていた。