「お母さん……私もうダメ……限界……」
「ま、茉子……」
 茉子の口から出た涙と弱音は母:響子を不安にさせてしまった。
 何度も何度もザンギャックによって繰り返される凌辱と出産の数々、国により人畜として登録され搾乳とチーズ生産を繰り返す毎日、そして園児達の卒園式での出来事が引き金となり茉子の心は折れかけていた。
「茉子、あなたの夢はなんだったかしら」
「え……?」
 自分の夢……幼い頃、侍として普通の生活が許されずに両親ともすれ違ってきた反動から、「普通のお嫁さん」「普通のお母さん」になることを夢見ていた。
「私は小さかった頃のあなたに寂しい思いをさせちゃった、あなたと離れ離れでシンケンピンクとして戦っていたあの日々ですら娘の事を考えなかった日は無かったわ……母親として夢を叶えた茉子を見届けるまで絶対に死なないって……」
「お母さん……」
 大粒の涙が茉子の頬を伝う、母も同じく辛い状況下にも関わらず優しい表情で茉子を慰めた。
 こんな場所でへこんでばかりではいられない、きっといつか来るであろう現状打開のチャンスがくるまで必死に生きる決意を固めた。