「さぁ〜続いての商品は「牝」です♪」 　司会のアナウンスに続き、奴隷商人にリード線を引っ張られるルカ。 「ちゃんと、媚びて高く買われるんだぞ？」 　奴隷商人の宣告に…… 「……くっ！最低ね」 　商品価値がなければ処分されてしまう……生きるためにもルカは買われないといけない。 　　　　◇　　◇　　◇ 「今日は掘り出し物がありますかね？」 「そうでなくては困る。わざわざ辺境惑星に出向いた意味がない」 　旗艦ギガントホースから地球のとある区域に降り立ったのは、宇宙帝国ザンギャックの司令官ワルズ・ギル殿下と参謀長ダマラスが、奴隷市にやってきていた。 「最初の方は我々の求める商品ではないでしょうから、ゆっくりと見物しましょう」 「ま、それもそうか」 　ワルズ・ギルはすぐに機嫌を直して、壇上に視線を戻した。 　奴隷市場の競りは、質の良い物は後回しにされるはず。ワルズ・ギルとダマラスに用があるのは、目玉商品だけだった。 　宇宙帝国ザンギャックの地球侵略の際、34のスーパー戦隊が一致団結して歯向かってきた。互いに戦力を大きく減らす激闘を経て、ザンギャックも撤退を余儀なくされてしまった。それは『レジェンド大戦』と呼ばれる。 　だがスーパー戦隊の方も多大な犠牲を払っていた。 　すべての戦士が変身する力を失ってしまったのだ。 「お前もいい女が欲しいんだろ？」 「いえ、私は強そうな奴がいればそれでいいです」 　女を抱くことにしか興味のないワルズ・ギルに対し、己の強さを高めるための相手が欲しいダマラスだ。 　壇上には全裸の奴隷女が次々に現れては、群がる男たちが競り落としていく様子を、ワルズ・ギルとダマラスは眺めていた。 「なかなかイイ女が出てこんな……おっ！」 　ワルズ・ギルの声色が変わった。 　その理由は、ダマラスもすぐに分かった。 　主君に小さな驚きをもたらしたのは、壇上に現れた女奴隷だった。 　ダマラスが欲しいのは強者となる相手なので、慰安婦奴隷にはまったく興味なかったが、それでもその女には目を引かれた。 　歳の頃は十代後半ぐらいだろうか。 　不健康そうな、斜に構えた体をしている。目鼻立ちがくっきりとした顔立ちで、なかなか気が強そうだ。 　柔らかそうな茶色の髪は、ミディアムショートに切り揃えられている。 「おい！ 盗人を連れてくるとはなにごとだ！」 　客の中から野次が飛んだ。 　ダマラスにはその女に見覚えがあった。 「確か、ザンギャックの武器倉庫で盗難行為を続けていた女――ルカ・ミルフィと言いましたでしょうか」 「ほぉ……興味深いな」 　ワルズ・ギルはニヤニヤと笑って壇上の女を見下ろした。 「……」 　ルカは奥歯を噛み締め、忌々しげに顔をあげている。猫のような鋭い眼差しは怒りで燃え上がり、ザンギャックの者どもを睨みつけていた。 　とてもこれから慰安婦奴隷として売られる悲運の女には見えなかった。 　ゴーミンたちが地球から拉致してきたほとんどの若い娘は、牝奴隷になると知って絶望してしまう。うなだれ、すっかり怯え、そうでなければ少しでもいい条件で売れるようにと必死で媚を売る。 　しかし、この盗賊女は臆することなく客たちを睨みつけている。 「こら、少しは笑わんか。そんな仏頂面では買い手がつかんぞ」 　奴隷商人がたしなめても、ルカは唇を固く閉ざしたままだ。 　ルカは全身から、激しい怒りを発散させていた。 　まさにザンギャックに反逆する女盗賊の如く、自分を値踏みし、買おうとする客たちを敵対する意志を露わにする。