「美月ちゃん、目線をコッチに。」
 カメラマンに言われるがまま、カメラを見つめる。
 その瞳には涙が溜まっているが、その場にいる者達は気にしない。
「次はポーズをお願いします。」
 カメラに向かって胸を強調するように腰に手を当てる。
「良いねー。」
 フラッシュが焚かれ、美月の裸体が次々と記録されていく。
 フラッシュで照らし出される美月の表情は暗いが、写真の中の美月は楽しそうに笑っていた。
 楽屋で渡された“偽りの喜怒哀楽”と呼ばれる透明な面をつけてからの美月は、本人の意思とは関係なく楽しそうな表情をしているように見えてしまう。
 それは真実を写し取るはずの写真にさえ影響を及ぼしていた。
「本当、楽しそうだねー。良いねー。」
 カメラマンはシャッターを切りながら美月を褒めていく。
「ありがとう、ございます……」
 美月は泣き出しそうになるのを堪えて、撮影を続けていく。