「めんどくさいゴー」
 さらに四方八方から伸びた手が紫とアイボリーの研究着を引き千切る。弥生のために祖父がデザインした衣服は瞬時に布片へと変わる。
 少女の素肌が衆目に晒された。片思いはしても彼氏もいない弥生にとって人生初のショックだ。
 無駄とは知りつつ身体を縮める。しかし無数とも思われる銀色の手はペットの品定めをするように宙に浮いた身体を揉み込み、そのフォルムを確かめる。
 叫びたい感情を抑えながら気丈にゴーミンを睨みつける弥生。
「こんな事で獣電戦隊は負けないんだから!」
「あ〜出たゴー」
 やれやれといったジェスチャーでおどける。
「聞き飽きたミン、戦隊のメス共はみんな同じ事言うミンな」
 差し上げていた弥生の両手を離すゴーミン。
「みんなって……?」
 放り出された弥生は青ざめる。
「あ〜ザンギャックに敵対した地球のスーパー戦隊に関係するメス共には慰安婦として従事してもらってるゴー」
「もう何十人の女性にご協力いただいているミン」
「当然協力するゴー?」
「そんな、バカなこと……」
 当然の口調で拒否する。命に代えてもと心によぎった。
「ちなみに断れば戦艦の主砲で地球人を大量虐殺だミン」
「断るゴー?」
 満面の笑顔で問う。

 弥生に迷いはなかった。その胸には祖父から受け継いだ獣電戦隊の誇りとダイゴの笑顔があった。
「……なります。」
「ん〜? 聞こえないミンよ」

「ザ……ザンギャックの……い、い、慰安婦に……なりますっ!」
 弥生の声はむしろ悲鳴にも似ていた。