「これ、よろしく」
「あ……あの……」
 重低音での振動が身体の芯に響いていて、まともに顔も上げられない。
「ちょっと」
 寸胴に向かって、炊き出しの豚汁を掬うことも出来ない。
「これだよ」
「え?」
 炊き出しに並んでいた男性が右手から差し出していたのは、見慣れた整理券だった。
「分かってるんだろ?」
 こんな時に、何を言ってるのか……命がけで正義の戦いが、終わったばかりなのに……