「これですよね」
 必死によそった豚汁は
「違うよ」
 二番目に並んでいた人の手に渡った。
「白を切るなら……」
「行って来なよ、福井さん」
 声がかかったのは隣の寸胴で炊き出しに来ていた、ご近所さんだった。
「何してるか、みんな知ってるんだから」
 冷めた目で、優子を見下していた。
「知らないのは、人の良いお兄さんだけでしょ」
 数年に渡って自宅を使われていた結果だった。
「は、はい……」
 今更、キョウリュウシアンに選ばれたと言う事実もザンギャックの先見の明を証明することでしかなかった。